プロローグ(見なくていいです。)
飛ばして読んでいただいても支障はありません。
夏、それは俺の一番嫌いな季節。・・・理由は言うまでもなかろう。特に今日は最悪だった。従兄によって半ば強制的にカヌー体験に参加させられることになってしまったのだ。今年の夏休みは自宅から一歩も出ずに現実逃避する予定が台無しだ。しかもよりによって部活のない日曜日である。くそ、一日引きこもってダラダラ過ごせると思っていたのに。恨むぞ、従兄よ。
というわけで、現在俺は従兄の車の荷台にいる。この車、従兄曰く「機能性を重視した合理的で無駄のないデザイン」なのだそうだが、どう考えてもおかしいと思う。なぜならこの車、荷台がほとんどないのだ。従兄と俺の着替えだけでスペースの半分が埋め尽くされてしまっている。少なくとも、少し太り気味の俺が満足できるだけの空間はなかった。おかげで、着いたころには不自然な跡がそこかしこについていた。
主催者による簡単なカヌーについての説明が終わり、どこのグループに入るのか見てみると、
「はあ?<玄人限定:急流川下りコース>?」
「ん?やったことあるだろ、一回くらい。」
「いや、ねーよ。いつやるんだよ、」
「え、まあ、大丈夫だろ。言っとくけど、俺は助けんぞ?」
はは、マジかよ。逃げよ。
ガシッ
「さあ、行こうか。何のために連れてきたと思ってんの?」
そのまま俺は従兄とそこで知り合ったらしい愉快な仲間たちに連れられて川の上流へ行った。その川は、水しぶきを上げながらものすごいスピードで流れていた。
「はっひゃー、いい流れじゃねーか。」
どこの世紀末野郎だ、おまえは。そんなことを思いながら川を眺めてみると、上流から流れてきた流木が、岩に当たって砕けた。
「おかしいよね?これ川に落ちたら絶対死ぬよね?」
「落ちなければいい。」
「理不尽だあああ。」
「知らん。それに、運営側も死者を出すようなことはしないはずだ。」
まあ、それもそうなんだが、この流れだと信用できない。
「おい、さっさと行くぞ。」
「え、ちょ、まだ心の準備がっ」
「しらん!!」
そのまま強引にボートに突っ込まれた。
「っしゃーっみんな乗ったかー!んじゃレッツラゴン!!」
そんな声とともに、ボートは進みだした。
「ぉぉおおおお!!あ、やべっ」
引っかかった二本のオールはすでにへし折れ、はるか遠くへ流されていた。
「おいいい!なにやっとんじゃー」
ここで、俺は重大なことに気付いた。
「ねえ、俺だけ救命胴衣なくね?」
「・・・・わすれてた!」
「はあ?フザkゴフッ!?」
その瞬間、俺たちは宙に浮いていた。
「あっ、、」
目の前にはとがった岩が突き出ていた。
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