武器選びは心の目で
やはり、冒険者の装備といえば代表格は剣、であろうか?
しかし、赤斧のアクスさんは斧だし、いや?待てよ、アクスさんって名前からして斧の申し子みたいなもんだし、目つきも悪いし…。
第一に斧持ったヒーローなんて……ちょっと様にならないような気がする。
例えばヒロイン確定の様な王女様が、お約束の手薄な護衛を連れて、港町から王都に帰る途中で、盗賊団に襲われる‼︎ なーんて事は無茶苦茶よくあるじゃない。
アブナーイ、護衛がヤラレチャッター‼︎って時に、幼なじみでメイドのフィーナが、王女様を庇いながら二人で盗賊から逃げますよね。
ここで当然の如くヒーローがあらわれて、
「盗賊は私が倒します、二人は安全な場所に避難して‼︎」
って言いますよ、その時です、さぁヒーローが持っている武器で正解は??
斧を持ったヒーローが、力任せに盗賊の頭をカチ割っていく??そしたら王女様が
「ありがとうございます、キャー素敵な方〜」
って、血塗られた斧を片手に持ったヒーローに抱きつきますか?って話ですよ。
「やっぱ剣でしょう‼︎」
セインは武器屋のオヤジに言い放つ。
「何がやっぱ、なのか分からないが剣にするんだな?」
武器屋のオヤジは、不審者を見る目でセインを見ながら、それでも何本か剣を見繕ってくれた。
セインの見た目から、両手剣より、片手剣が良かろうとオヤジは判断し選んできたようだ。
セインは素人だ、剣の良し悪しなど分からない、だが、オヤジになめられるとカモにされボッタクられる可能性がある。
一番軽そうな剣を掴み
「延‼︎」
と遅延魔法を発動、剣で野球やゴルフのスイングをして
「普‼︎」
と言って魔法を解除した。
「ヘェ〜、凄い剣舞だね、初めて見る振り方だ、しかも無茶苦茶速い」
当然である、オヤジは遅延魔法にかかっていた為、セインのとんでもないスピードのジャックナイフ打法を見た事になる。
「これを貰います、いくらですか?」
セインはその剣を買う事にする。
12万コインだそうだ、今朝ガイルからマウンテンワニの代金、150万コイン貰ってたから、安いな、っと思い代金を払う。
「良い買い物が出来ました」
と嬉しそうに剣を、腰に差して立ち去るセインを見ながら
「あの剣、練習用だから重いし、刃も潰してるから切れねーんだけどな、何に使うんだろう?あの細腕で、あんな重い剣振り回すんだから、両手剣勧めた方が良かったかな?」
と、独り言を言う武器屋のハゲオヤジ。
どうやら、セインは気付いていないが、転生後、身体能力がとんでもなく上がっているようだ。
練習用の剣でも、十分強いのかもしれない…。
何より初めて、自分の剣を手に入れて上機嫌な、寝間着のセインであった………。