表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/39

村民への道

ここはソルの町の南門、時刻は午後5時過ぎ、秋の夕暮れ時である。

「もう、ガイルさん先に帰っていいですよ」

セインは申し訳無さそうに、皮鎧男に声をかける。

「そうはいかないよ、セインは命の恩人だし…しかし村長遅いな、もう500歳だって言うし、おっ死んでるんじゃねぇの?」

あっ、それフラグだ、セインは思った。

「悪いがワシはまだ生きとるわい」

腰の曲がった、如何にも村長といった老人が町の中からでてくる。

両脇にフルプレートアーマーの兵士を連れているところを見ると、やはりこの老人がワードナー村長だろう、早くもフラグ回収である。

「ワードナー村長ですか?」

セインは問う

「いや、私は兵士のリチャードだよ、こちらのお方がワードナー村長だよ」

片方のフルプレートアーマーの兵士が答える。

やはり真ん中の老人がワードナー村長らしい。

「其方がマウンテンワニを倒したのか?聞くところ先刻、赤斧と勝負して勝ったらしいな。凄腕じゃのう、してマールよ、なにゆえセイン殿を此処で足止めしておる」

「セイン殿はギルドカードを持っておらず、怪しい格好をしております、私個人には町に入れて良いものか判断がつきませんでした」

モブキャラにしては珍しく長ゼリフを吐くマール。

「うむ、なるほどそうではあるな、しかし、ワシの目には、セイン殿が悪い奴には見えん中に入れてやるが良い、セイン殿、時間を取らせたな、お詫びに、ギルド長に連絡して直ぐにギルドカードを作ってやろう、ガイル、セイン殿をギルドに案内してやるが良い」

流石は長老、鶴の一声でセインは町の中に入れた。

気に入った、ワシの家で晩飯でも、という様な神展開は無かったが…。

ガイルの話では、ソルの町は西区と東区に分かれているらしい。

西区にはギルドを始め冒険者用の武器屋や、薬屋、宿屋などと、村長の家や自衛団の詰め所や、訓練所があるそうだ。

逆の東区には農場や民家がある、割合的には東区の方がかなり広いが、冒険者には滅多に用が無い場所らしい。

もう時刻は午後7時過ぎ、ギルドは24時間開いているが、昼間ほどの人は居ない。

広さはコンビニ4店舗分ぐらいしか無いが、ソルの町では一番大きな建物で、冒険者、商業、農業、工業、全てのギルドの窓口がある。

全町民は必ず、何れかのギルドに属する義務があり、自給分以外の売買や仕事の依頼は、ギルドに申請し、ギルドが発行する依頼書、売買証明書のもとに行う。

依頼書、売買証明書の発行費が町の収入であり、自衛団なとの、運用費に当てられている。

セインは当然、冒険者ギルドに所属し、依頼書の仕事をして初めて、一人前の町民と認められるのである。

ギルドの約半分の面積を占める冒険者ギルドの窓口には、日勤である200歳の看板娘、ソル族のウーケが残業している。

200歳とはいえ、ソル族は長命、見た目ハタチ、褐色の肌にナイスバデー、キツめな顔立ちの美人である。

「この時間にウーケさんに会えるとは、今日はラッキーだな」

ガイルがセインを伴いウーケに話しかける。

「村長のご指名なのよ、超大物新人がギルド登録に来るから必ず受付は私がしろって」

ウーケは迷惑そうにセインを見ながら言う。南門で村長と別れたはずなのに、ウーケには今朝から残業命令が出ていた、大物新人とはセインの事だが、そうすると村長は今朝からセインが今日、ソルの町に来ると知っていた事になる。

「貴方がセインね、村長から話は聞いてるわ、このカードに名前と種族、年齢を書いて…」

ウーケの指示通りセインはカードに記入し、ウーケにカードを渡す。

「あら、古代文字ね、どおりで村長が私を指名するはずだわ」

セインは転生後、言葉が話せる為、文字も書けるだろうと思ったが、どうやら珍しい文字を書いたらしい。

「古代文字は今は書ける人が少ないの、別名、言霊文字とも言われ、付与魔法にも使われる魔力が高い人しか書けない文字なの」

「????なにかよく分かりませんが、なんかスミマセン」

セインは日本人の固有技、とりあえずスミマセンを発動する。

付与魔法とは、鎧や剣に刻む事により様々な効果を発揮する貴重な魔法だとガイルから補足説明された。

「登録は完了よ、ギルドランクはサードから、村長の眼鏡に叶うぐらいだから、直ぐにセカンドまで上がれるわよ」

「????なにかよく分かりませんが、なんかスミマセン」

固有技、乱発である、ギルドランクはファースト、セカンド、サードとその下にデシというのがあり、難しい依頼をこなすとギルド長か、村長の判断でランクか上がる。

特例でセインはデシを飛ばしてサードからスタート、因みにガイルはまだデシである。

あの赤斧アクスですらまだセカンドだから、ファーストの実力は計り知れない。

「セイン、今日は村長が泊めてくれるそうよ、サードには滅多に無い事だけど、村長から指名依頼があるそうなの」

と言いながらウーケはセインにソルの町の地図を渡す。

村長宅は西区の中心部に位置し、かなり大きな建物だ。

ウーケはセインをかなり気に入ったらしく、アクスとの決闘やマウンテンワニを倒した話など、楽しそうに根掘り葉掘り聞かれ、セインが解放されたのは更に一時間後だった。

その間、ガイルはマウンテンワニの買い取りを商業ギルドに依頼していたが、かなり貴重な素材らしく大騒ぎになってしまい、売買証明書は明日の発行にされてしまった。

ガイルとは明日ギルドで待ち合わせて、マウンテンワニの代金をもらうことにし、セインは村長宅に向かう、

「紆余曲折あったが今度こそ神展開じゃないの、でも腹減ったな、もうご馳走じゃなくても食えりゃいいや」

すっかり夜中に成ってしまった町で、村長宅に急ぐセインであった。





この男はいつまで寝間着で丸腰のままなのだろうか……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ