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村長、来ず。

ここはソルの町の南門前、時刻は夕方の3時ぐらい、少し広場になっている門の前で二人の男が木刀を持って対峙している。


最初の観客は、片方の男アクスのパーティーメンバーで弓を持った20代の青年、名前はアーチ、この地方では平均的な170センチほどの身長で、中肉中背、貧相な顔立ちをしている。

次もアクスのパーティーメンバーで20代の女性、名前はマギーニャ、ローブを着て杖を持った、いかにも、といった魔法使いだ。

その次も、アクスパーティーメンバー、この地方で崇拝されている大地母神アースゥの神官服に身を包んだ、またまた20代の女性、名前はディアラ、どう見ても僧侶である。

お気づきだと思うが、アクスのパーティーは、せ、ゆ、ま、そ、バランスのいい基本に忠実なパーティーである。

「やっちまえアクス」

「そんな細腕の男アクスさんの敵ではありませんわ」

「早く片付けて帰るわよアクス」

三人三様にアクスに声を掛け、とりあえず応援している。

一方、細腕の男セインの応援しているのは皮鎧男、そう、ガイルである。

「頑張れよセインー‼︎」

無難な言葉でしか応援出来ない皮鎧男だが、セインは命の恩人、心だけはこもっている。

「ついてないぜ」

と言いつつ町の門番、モブキャラの異名を持つマールは、勝負開始の合図と審判の為、セインとアクスのあいだに立つ。

門の中からも大勢の野次馬が、二人の勝負を見ようと集まっている。

「ありゃ、赤斧のアクスだぜ、あんな細腕の男じゃ勝負にならねぇぜ」

「でも、あのお兄さん男前じゃない、私は細身のお兄さんを応援するわ」

「本当ねぇ、細身のお兄さんカッコいいわぁ、私も応援する〜」

好き勝手に騒ぐ野次馬達だが、女性陣の大半は、見掛け倒しの新参者セインを応援する様だ。

「殺すんじゃねぇぞアクス、まいった、と言ったら終わりだ」

何故かアクスが勝つと信じきっているマールはセインを無視して、アクスだけに注意する。

「始め‼︎」

マールの声に反応する二人、セインはアクスの方に詰め寄り、アクスは余裕からか木刀を正眼に構え動かない。

二人の距離が木刀の射程内に入る、アクスは徐に上段に振りかぶり、次の瞬間セインめがけて一気に木刀を振り下ろす。

紙一重で避けるセイン、尚且つその勢いのまま間合いを詰めアクスの脇腹に膝蹴りを入れて、再び木刀の間合いから離れ、木刀を構え直しアクスの方を向く。

時間遅延魔法、最強かも知んない、セインはつぶやく。

二人の力量は圧倒的にアクスのほうが上、セインなど転生前にケンカすらした事が無く、百戦錬磨の二つ名持ちと勝負など出来るはずがない。

しかし、実際はセインが優勢、アクスは唖然としている。

種明かしをすれば、そう、遅延魔法である。セインはアクスが上段に振りかぶった瞬間に延‼︎と叫び魔法を発動、アクスの動きが遅くなりゆっくりと木刀を振り下ろしてくるのを、不覚にもつられて自分もゆっくりと避けてしまいながら、ハッと我に返り、すれ違い様になんとか膝蹴りを入れて離脱し、普‼︎とつぶやき遅延魔法を解除したのである。

「全然、奴の動きが見えなかった…」

アクスは驚愕する、以前、剣聖の二つ名を持つ男と手合わせした時も、完膚なきまでに打ちのめされたが、剣筋が見えない程ではなかった…。

悔しいがセインと名乗る細腕の男は剣聖以上に速かった。

「俺の負けだ、すまなかったなセイン、お前ならマウンテンワニなど一撃だろう、俺の脇腹に微かに一撃入れたようだが、見事な手加減だな、今は痛みすら無い」

いやいやいや、脇腹に渾身の一撃、それも私にとって会心の一撃クラスの手応えの、もっと言うなら、アクスさんにとっては痛恨の一撃クラスの一撃を入れた筈だが……焦るセイン。

マウンテンワニだって何発もロングソードで斬りかかり、なんとか柔らかい口の中を刺して、足で蹴りまくって倒しただけだし、一撃でなんて倒せるわけ無いよ…。

冷や汗をかくセインだが、正直に言って、よーし、もう一回勝負だ‼︎ とか言われたくない。

「分かってくれたなら良いですよ」

セインは平然とアクスに答える。

「今度、詫び代わりに奢らせてくれ、改めて、俺は赤斧のアクス、困った事があったら何時でも力を貸すぜ」

とアクスは言い放つと颯爽と門の中の野次馬をかき分けて、町の中に入って行った。

「負けた癖に、颯爽とかえっていくんじゃねーよ」

「久しぶりにアクス負けるの見たぁ〜」

「セイン、またねぇ〜」

取り残されたアクスのパーティーメンバーの三人も町の中に去って行った。

野次馬達はあの赤斧が負けたと大騒ぎし、勝者のセインに、ひとしきり声を掛けていたが一時間後には皆、町の中に消えていった。

「さぁ、そろそろ私も町の中に入りましょうかね」

セインはシレーッと街に入ろうしたが

「村長が来るまで待て」

とマールに止められる、流石はモブキャラの異名を持つ男、あーあ、少しは空気読めよ。


てかっ、ワードナー村長遅すぎだよね、普通さっきの勝負の途中に来て

「奴は何者だ、なかなか腕が立つ、気に入った、わしの家で晩飯をご馳走しよう」

とかの展開じゃ無いの?

うーん、お腹がすいたなぁ〜。

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