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斧の申し子

「はじめましてガイルさん、私はセイン、田舎から出て来たばかりで…。」

セインは無い知恵をしぼり、しりすぼみで最後はお茶を濁す、ある意味不審者丸出しの自己紹介をした。

「そうなのか?ソルも大きな町じゃないが、あっちの森から出てきたところを見ると…、セインバートの里から来たのか?」

セインバートってなんだろう?里って言う位だから、集落かな?私の名前もセインだし、まっいっか

「ハイ、そこから来ました」

淀みなく答えるセイン。

「そうか、セインバートからなら3日ぐらい歩いたろう、大変だったな」

ガイルはセインが、この寝間着に巾着袋を持った、近所のコンビニにも行けないような服装で3日も旅して来たと思ってるのか?

「ハイ、大変でした、途中で盗賊に襲われて身ぐるみ剥がされて…なんとかここまで来ました。」

セインは嘘の上塗りで忙しそうだ。

「なんと‼︎セインはそんなに腕が立つのに…相手は何十人もいたのか?」

「腕が立つなんで嫌だなぁガイルさん、私なんか素人ですよ」

「謙遜するな、今にも喰われそうな私を助け、アッと言う間にあの硬いマウンテンワニを倒した君が素人なんて誰も信じないよ」

「マウンテンワニってそんなに強いんですか?」

セインは今更ながら怖くなって聞く。

「セインバートの里には生息してないんだっけか?ソルの近くでは間違いなく最強の魔物だ、動きが早く何より硬い、生命力も半端なくある、大抵の魔法も奴の鱗が弾いちまう。ベテラン冒険者でも、3人以下なら手を出すなとギルドが指定してる程だ」

うわぁーそんなにヤバい奴だったんだ、マウンテンワニ恐るべし…。

暗くなる前にソルの町に帰ろうと言うガイルに従い、二人は戦利品であるマウンテンワニの死体を担いで街道を歩く。

ソルの町は高い石壁に囲まれた安全な町らしい。

他の町からかなり離れている事と、ソルの森、リンガ山脈といった強力な魔物の生息地帯に囲まれている為、国には属しておらず、完璧な自治町である。

町長はワードナー、白髪の魔法使いで五百年前に5人の弟子達と共にこの町を作った。

そう、ワードナーは短命な人族では無く、ソル人族という非常に長寿な種族である。

この大陸の8割はセインやガイルと同じ人族だが、ごく少数、ソル属、セル属といった長寿の種族がいる。

これとは別に、エルフやドワーフ、ノーム、ホビットは妖精族として存在するし、北方の大陸には魔族だけの国もある。

町の入り口は北と南に2ヶ所あり、セイル達は今、南門の門番と話している。

「セインバートから歩いてきただと?その格好でか?」

門番のマールは訝しがる。

盗賊に襲われて身ぐるみ剥がされたとの主張は、百歩譲って納得できる。

だが、ガイルを襲っていたマウンテンワニに丸腰で立ち向かい、尚且つ倒したというのは信じられない。

全長1メートルとはいえマウンテンワニは、自衛団なら一個師団(5人)で討伐する魔物だ。

「だから、ここに証拠があるじゃないか」

ガイルが苛立った様にロングソードに串刺しにしたマウンテンワニを差し出す。

「村長を呼んでくるからまってくれ」

マールは部下に目配せをして村長を呼びに行かせた。

そこに、冒険者らしい4人組のパーティーが通りかかる。

「コラすげえや、ガイルさんマウンテンワニの死骸でも見つけたのかい」

4人組の先頭にいた赤髪の大男がガイルに聞く。

ガイルは悔しそうにセインを指差しながら

「違う、これはこのセインという若者が倒したマウンテンワニだ」

と答える。

すると赤髪の大男はセインを睨みつけながら、

「馬鹿な、こんな細腕のあんちゃんが、マウンテンワニに勝てるかよ、本当だと言い張るなら俺と勝負しな‼︎」

と、赤髪の武器である大斧をセインの前に突き出しながら挑発する。

不味い、非常に不味い、セインは身長170位、マールさんもガイルさんも同じ位だし、恐らくこの大陸では平均的な身長だろう。

筋肉も転生前よりは付いている様だし、何より若返っている身体は、ビックリするほどよく動く。

しかし相手が悪い、赤髪は身長2メートル、筋肉隆々、目つきが悪いときている。

絶対、勝てねーよ、いや、待てよ、私には遅延魔法があるじゃないか、なんとなく魔力もまだ残ってる気がするし、ここは勝っとく方が後々いいんじゃないか?

自問自答を繰り返し結論を出すセイン。

「いいでしょう、勝負しましょう」

「おい‼︎セインお前、奴が赤斧のアクスだって知ってて言ってんのか‼︎」

ガイルが大声で叫ぶ。

ナニィ〜、二つ名持ちだってぇ〜‼︎いやいやいや、登場早すぎでしょ、門の前で絡んでくるのって、やられ役の咬ませ犬的な奴って決まってるでしょ⁉︎

「こんな所で殺し合いは困る」

マールさんが止めに入る、マジ神です。

「勝負なら、これを使ってやれ」

と言って木刀を2本取り出すマールさん。

へっ?止めてくれるんじゃないの?てか、アクスさんは既に木刀素振りしてるし、赤斧のアクスだよね?斧使いだよね?名前もアクスだし斧の申し子じゃん、それが木刀って‼︎

「頑張れよセイン」

アレェ〜、ガイルさんに応援されてるし、しかもガイルさんから木刀手渡されたし…。

やるしかないか、最初からやる気だったし、でも、いきなり二つ名持ちは無いよ……。

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