山脈の主
マギーニャとダイアの決闘から一夜明けて、西ドルガ国領、キコラの街への出発の朝となった。
ウレルガナさんの商隊は、馬車が2台と従者が4人、それに護衛のセイン達5人を加えた10人編成だった。
朝早くの出発だった為、村長一家とウーケ、アクス、ガイルぐらいにしか挨拶出来なかったのが、少し心残りではあった。
ソルの町からキコラの街までは、町や村は一切無く、10日間テント生活になる。
いかにソルの町が辺境であるか、思い知らされたセインであった。
3日間は何もなく順調であった。
多少魔物にも遭遇したが、弓神のダイアとマギーニャが見つけ次第倒すので、前衛のセイン、ラルラ、バルには出番がなかった。
ウレルガナさんも、とても気の良い人で、食材などを分けてくれる為、快適な旅が続いていた。
「もう、リンガ山脈に入った、順調だな」
バルはセイン達に話しかける。
「そうですね、初めての長旅ですが快適です」
「セインと一緒に来れて良かった〜」
マギーニャは、セインの腕に組み付きながら嬉しそうだ。
ラルラはそれを見て、逆の腕に組み付く。
「マギーニャさんだけ、ズルいです」
睨み合うマギーニャとラルラ、いつもの光景が幸せに感じるセインだった。
ダイアは出発してから殆ど口を開かず、ずっとつまらなそうにバルの横を歩いていた。
「ダイアも、あそこに加わったらどうだ?」
バルはダイアに冗談を言う。
「馬鹿な‼︎ 仕事だぞ?報酬を貰う以上、私情を挟むべきではないわ」
ダイアの真面目な答えに、バルは苦笑するしかなかった。
「でも、リンガ山脈ってシューティングスターの住処なんですよね?」
幸滅のラルラが、いらないことを言う。
フラグである‼︎
一般的に10人位の商隊であれば、シューティングスターは襲って来ない。
しかし、幸滅のラルラが立てたフラグである、回収され無い訳がないのだ‼︎
「何あれ⁉︎もしかして……」
マギーニャが空を指差す。
指差す方向のかなり先に、空を飛ぶ青いドラゴンが見える、シューティングスターだ。
早くもフラグを回収しに来たのだ‼︎
「岩場に馬車を隠して‼︎ 私達も隠れて奴をやり過ごしましょう‼︎」
セインが指示を出す。
「ああ、そうだな急ごう」
バルも同意して馬車や従者に指示を出す。
マギーニャ、ラルラも馬車を守るようにシューティングスターを警戒しながら岩陰に急ぐ。
しかし‼︎
「シューティングスターなど、私が打ち落としてくれる」
と、ダイアがシューティングスター目掛けて弓に矢をつがえる。
「馬鹿な‼︎ ダイア‼︎ 手を出すな‼︎」
叫ぶバル‼︎
だが、ダイアは聞く耳を持たない、シューティングスターに矢を3本立て続けに放つ‼︎
3本ともシューティングスターを捉えるが、硬い鱗に阻まれ無傷だ。
怒ったシューティングスターは、ダイアを見据えて飛んで来る。
マギーニャはストーンパレットを連続で放ち、ダイアを守ろうとするがシューティングスターは意に返さない。
シューティングスターは、ダイアを右足の五本の爪で掴み地面に叩きつけ、そのまま地面にダイアを押し潰す。
地面に降り立ったドラゴンは、体長5メートルを超える巨体であった。
ギリギリとダイアを、地面に押し付けながらセイン達を睨む。
「延‼︎」
セインは遅延魔法を発動し、シューティングスターにサルの剣で斬りつける、何度も何度も斬りつけるが、鱗に阻まれて切れない。
魔力切れで遅延魔法が解除された途端に、シューティングスターの翼で弾き飛ばされ地面に打ちつけられる。
バルとラルラも襲いかかるが、シューティングスターはいとも簡単に左足で2人まとめて弾き飛ばす。
「地中に眠りし石の尖兵よ、神獣マギーニャの名の下に命ずる、地中より現れ出でてて敵を討て‼︎」
マギーニャの詠唱に応じて石の兵が地面より這い出る。
しかし、シューティングスターは口より氷の息を吐き、石の兵を凍らせてしまった。
圧倒的である‼︎
ダイアはシューティングスターに地面に押し付けられ、今にも身体が潰されそうになっている……。
セインはなんとか立ち上がり、ヨロヨロとシューティングスターの方に向かって歩く。
シューティングスターはセインを見据えて
「なぜ、俺に挑んだ?見逃してやったものを、身の程知らずが」
と話しかけてきたのであった……。




