帝国の影
「まぁいいわ…。護衛としては及第点ね」
マギーニャに言うダイア。
「じゃあ、セインと居ていいの?」
傷だらけのマギーニャが問う。
「私に火傷させたんだから…でも、勘違いしないで、私は貴方が嫌い…貴方だけじゃ無い、人族が嫌い、 何よりいい奴ぶった彼奴が大嫌いよ」
と言うや、セイン目掛けて矢を放つ‼︎
セインもいきなりの事に驚くが、後ろを振り返り、振り向きざまに
「ぬあぁあああ‼︎」
と叫び、右目からのビームで矢を撃ち落とす…。
目からビームを撃つセインにかなり引いたダイアだったが
「ふん……」
と、つまらなそうに言って去っていった。
どうやら、マギーニャの同行は認められたようだ。
安堵と疲れで、その場にへたれこむマギーニャであった。
「流石は弓神だせ、滅茶苦茶つえーな‼︎」
「でも、マギーニャも凄かったぜ」
「魔力が切れなかったら、分からなかったわよ」
「ああ、召喚魔法なんて初めて見たよ、カッケーな‼︎」
観客は、思い思いの感想を言い合っていた。
しかし、皆最後に言う事は同じであった。
「寝間着のセイン、目からビーム撃ってなかったか?」
「すまなかったな」
矢をセインに放ったダイアに変わって謝るバル。
「いえ、あの距離だから本気で当てに来たわけじゃ無いでしょうし…」
セインは、釈然としないながら答える。
「まあ、こんな事になったんだ、セイン達にはダイアの事、話しておこう」
「ダイアさんの人族嫌いの訳ですか?」
セインの知りたかった事だ。
「ああ…元々、ダイアは西ドルガ国の南のセルセンの森で産まれたんだ。森にはエルフとドワーフが住んでた。人族じゃなく妖精族の森として、ずっと自治区だったんだ。」
「えっ?セルセンの森ってメギド帝国領じゃなかったでしたか?」
ラルラがバルに聞く。
「20年前までは自治区だったんだ、だが領土拡大を狙うメギド帝国が襲って来やがった」
バルは腹立たし気に言う。
「それで俺たちは当然、戦った、圧倒的な戦力の前に次々と降伏するなか、俺やダイアの両親は最後まで抵抗した。しかし、ダイアはまだ7歳だったからよ…帝国の兵士に捕まってしまった。俺やダイアの両親、残っていた森の戦士はダイアの命と引き換えに降伏した。でもよ、リーダーだったダイアの両親は見せしめの意味で殺された…」
バルは心に大きな傷を負ったダイアの為に、セルセンの森を離れ、西ドルガの王都ジースーで冒険者をして生計を立てた。
ダイアは鍛錬し、弓神と呼ばれるまでになるが、その鍛錬はメギド帝国への復讐の為のものだった。
やがて、人族の国メギド帝国への復讐心が、人族全体を嫌うまでに成長した。
その心を少しでも癒してやりたいバルは、ダイアを連れて自然の多いソルの町に拠点を移し、現在に至るのである。
「大変でしたねバルさん」
セインはバルを労うように言った。
「い嫌、一番辛いのはダイアだからな」
セインの態度に戸惑う。
自分に矢を射られたのだ、怒っていて当然だとバルは思う。
「20年間もダイアさんの事を考えて、守って、育ててきたんでしょ、一人で全て背負い込んで…」
セインの言葉で、今までの20年間を思い出すバル。
ずっと、努力してきたがダイアを笑顔にしてあげる事は出来なかった。
しかし、ダイアをずっと見守り、我が子のように育てた誇りはある。
「ありがとう」
礼を言うバル。
誰にも話すことも、ましてや理解されることなどないと思っていた。
しかし、目の前のセインは理解し、労いの言葉までくれたのだ、バルは素直に嬉しかった。
「改めて、短い間ですがよろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いする」
セインとバルは、がっちり握手した。
2人の男に友情が芽生えた瞬間であった。




