自分勝手
セインは今、神獣の祠に向っていた。
ソルの町から片道、徒歩で半日はかかる道程で、魔物も多数出没する。
アクスとラルラが、魔物の露払いを買って出てくれた為、かなり時間を短縮できそうだ。
やはりこの二人は強い、グリーンスライム、ゴブリン、コボルト、ウォーウルフを全て一撃で倒す。
力技に頼るアクスは、神獣の祠に到着した途端、疲れて大の字に横になっていたが、ラルラは涼しい顔で立っていた。
「恐ろしい子……」
セインはつぶやく。
ここに来るまでに、晴天なのに雷が落ちたり、今まで事例のなかったウォーウルフに股がるゴブリンライダーに遭遇したのは、幸滅のラルラのせいで無いと信じたいが……。
祠はかなり小さな物だった。
雨ざらし状態で、神獣などと言うご大層なものが祀られているとは信じがたい。
しかし、突然その祠は激しく輝き出し、観音開きの扉が開くと、大きな黒ヒョウが飛び出してくる。
あまりのことに、セイン達は呆然と立ち尽くしている。
「これが、この祠に祀られた神獣ですか⁉︎」
ラルラはアクスに聞く。
「わからねぇ、ソルの町の誰も神獣は見た事ねえからな」
黒ヒョウは、ゆっくりとセインを品定めするかの様に見ると
「聖剣エクスカリバーを持ちし者よ、我に何か用か?」
と威厳のある声で問う。
「聖剣?」
「エクスカリバー?」
「認めません‼︎」
3人は疑いの目でサルの剣を見る。
ラルラに至っては拒否までしているが…。
「すまぬ、拙者は紛れもなく聖剣エクスカリバーでごさる」
何故か?謝るサルの剣…。
おかしいよね?だってそうじゃない、聖剣がサル?
聖剣って言ったらさー、ラストダンジョンの下から2番目の階の、ラスボスへの階段から一番遠い所の青の宝箱から出るって決まってるじゃない‼︎
最初の村の村長が持ってるって…おか、しいって‼︎
拙者がエクスカリバーでごさる?
この世に存在しちゃいけない文章でしょ‼︎
「力を貸して欲しい」
セインはなんとか冷静になり、黒ヒョウに願う。
「ほう、我に封印されよと…」
「はい、私には使命があります、その為にあなたの力が必要なのです」
「おおよそ、虚神にでも、たぶらかされたか?」
虚神?誰だそれ?
残念なセインは忘れているが、虚神とはセインを転生させた、筋肉質な神の事である。
「封印されてやっても良い、ただし、お前からも代償をもらわねばな」
黒ヒョウは言う。
「私に出来ることなら…」
「ならば、右目を捧げよ‼︎ 」
黒ヒョウの要求はセインの右目であった…。
あまりにも大きな代償である、かりにマギーニャの戦力は上がっても、セインは今までの様には戦えなくなるだろう。
「わかりました、差し上げます」
セインは躊躇なく答える。
「駄目‼︎ 絶対‼︎ そんなの駄目‼︎ 駄目です‼︎」
ラルラが叫ぶ‼︎
「よかろう…」
黒ヒョウはセインの右目に、自分の右目から光線を発射する。
覚悟を決めたセインは避けない…。
「ガッアァッ‼︎クッ‼︎」
セインは右目に光線を浴び、片膝をつき悲鳴をあげる…。
「セイン‼︎」
ラルラが駆け寄り、背中からセインの肩を抱く。
「何てことを…」
「大丈夫だよ…片目なくても…生きていける、私は…落ち込んでるマギーニャさんの力になりたい……」
セインは右目を抑えながら言う。
「マギーニャさん喜びませんよ、絶対怒りますよ‼︎」
「正直に言わなくて良いじゃない、私とラルラさんの秘密にしてよ」
セインはラルラに頼む。
「わかりました、その代わり私に右側を守らせてください!ずっとセインさんの右目の代わりをさせて下さい‼︎」
ラルラは言う。
「ありがとう、お願いします、ラルラさん」
セインがそう言うと、ラルラはセインに抱きつき
「あんまり、無茶しないで下さい」
と微笑みながら言う。
「はい、そうします」
素直に返事して、ラルラを抱き返すセインなのであった。
そこで、妙に違和感を覚える……。
あれ〜なんか変だなぁ〜
右目、見えるんですけど〜。




