前しか向かない
ソルの町のギルド長室で、ささやかな昼食会が開かれていた。
長机の上座にギルド長、左隣りにセイン、マギーニャ、右隣りにウーケ、ラルラが座っている。
マギーニャとラルラは何方が、セインの横に座るかで、マジ喧嘩したが……。
机の上には、宿屋の当然存在する食堂から出前した料理が並べられ、当たり前の如く宿屋の一人娘ミーナが給仕している……。
「いやぁあ、負けちゃうと思わなかったよ、適当に力量見て、剣弾き飛ばして終わりってつもりだったからさー、最後熱くなりすぎて本気で殺しに行っちゃったーゴメンねっ」
ギルド長は、炭酸の抜けたコーラ味の飲み物を飲みながら、恐ろしい事をサラッと言う。
「セインに怪我させたら、私がタダじゃ済ましません‼︎」
妙に生臭い焼き魚をホークで突き刺しながら、ラルラがギルド長を睨む。
「私だって‼︎」
マギーニャも負けじと、怪しげな色の豆のスープをすくいながら睨む。
「私だって‼︎」
何故か?便乗するウーケ。
「ウーケさんまで……勘弁してくださいよ、反省してるんたけどね」
本当に反省しているのか怪しいギルド長。
いやいやいやいや、私怪我してるし……セインは心の中でつぶやく。
「実力は十分だよ、ランクファーストにしてあげる。でもね、ソルの町って辺境じゃない、自治が認められてるとはいえギルドは国営だからね。大きい街で手続きがいるんだよ」
ギルド長の話では、地方ギルドが認定出来るのはランクセカンドまでで、ランクファーストは国が指定する都市でないと認定出来ないらしい。
混沌の地ザームーの西北端に位置するソルの町、一番近い指定都市はリンガ山脈を東向きに越えた、西ドルガ国のキコラの街だ。
ちなみにソルの町のギルドは、剣聖の名声のもとに認められた西ドルガ国の出張所ギルドである。
「キコラの街のギルド長に推薦状書くから、悪いけど認定してもらいに行ってね」
剣聖は簡単げに言うが、キコラの街までは馬車でも10日はかかる。
何より、ソルの森より数ランク上の魔物の生息地リンガ山脈を越えなければならない。
リンガ山脈には、シューティングスターというドラゴンの住処も存在する。
難所中の難所リンガ山脈がある為、西ドルガ国はソルの町を直轄しないのである。
それでもセインは行くと決める。
マギーニャさん、ラルラさんとの旅は楽しいだろうし、路銀もある。
何より、半ば忘れていたが筋肉質な神に託された使命もある。
ソルの町は居心地がいい、しかし、ここに居たのでは使命は全うできない。
前に進むのだ、立ち止まらずに……もう転生前とは違う、何時からか失っていた自分を取り戻したのだから‼︎
「拙者もお供いたす」
張り切るサルの剣だが、所詮セインの持ち物にすぎない……。




