殺しは反則
時刻は昼前、ギルドの裏の訓練場に、100人を超える人集りが出来ている。
ギルドが誇る赤魔力結晶により強力な結界が発生し、人集りの中央に20メートル四方の空間が出来ている。
空間の中には、10メートル程の間隔を空けて2人の男が対峙していた。
片方の男はソルの町のギルド長、剣聖ゼクス、もう片方はセインだ。
「魔法も有りの真剣勝負、あと大地母神アースゥの神官5人に待機してもらってるから、怪我とかも気にしないでいいよ」
と剣聖はセインに言う。
「わかりました、胸を借りるつもりで全力でいきます」
セインはテヘペロヘビの鞘からサルの剣を抜き……そう答える。
剣聖は、片手剣スカイソードをだらりと右手でぶら下げて持ち
「いくよ」
と宣言するや、無造作にセインに向かって走り出す。
セインは先手必勝‼︎とばかりに上段に構え、剣聖めがけて渾身の力でサルの剣を振り下ろす。
剣聖は無造作に持たれたスカイソードを振り上げ、事も無げにサルの剣を受け止める。
「ふーん、凄い一撃だね、少しは楽しませてね」
と言うや、今度は剣聖がセインめがけてスカイソードを横薙ぎに振る。
ギリギリでサルの剣で受け止めたセインは、後ろに跳び、剣聖との距離を取ろうとする。
しかし剣聖はそれを赦さない、剣戟を打ち続け前に出る。
防戦一方のセイン、後退しながら紙一重でスカイソードをかわし続ける。
「もう少し楽しめると思ったんたけどな?」
剣聖は一旦攻撃をやめると、涼しい顔で言う。
セインは息が上がって、肩が大きく揺れている。
セインは、なんとかサルの剣を正眼に構え直すと
「延‼︎」
遅延魔法を使い、動きの遅くなった剣聖に襲いかかる。
しかし‼︎ 驚くべき事に、剣聖はゆっくりとなった動きでセインの猛攻を止め続ける。
驚異的な実力である‼︎
「普」
セインは残りの魔力を考慮し、遅延魔法を解除する。
「驚いたよ‼︎ 急に動きが早くなったよね?」
剣聖は珍しく動揺し、スカイソードを構えて、警戒するようにセインと距離を取る。
不味い…残りの魔力を考えて、そう長い間は遅延魔法を発動できない……。
発動のタイミングを考えないと……。
セインは冷や汗をかきながら必死に考える。
「あいつ、剣聖とまともにやりあえてるぜ‼︎」
「むしろ剣聖の方が押されてない?」
「剣聖より動き、はえーーよな‼︎」
人集りから様々な声が聞こえる。
マギーニャとラルラは言葉を発する事を忘れたかのように、セインだけを見つめている。
近くで見ていたウーケも、剣聖と互角以上のセインに驚愕していた。
剣聖がおもむろに、スカイソードを胸の前で横向きに構える。
来る‼︎
セインの本能が警告を鳴らす。
剣聖が走り出す‼︎
横向きに構えたスカイソードを体をひねり更に逆方向に振り被る。
セインの視界から一瞬、剣聖が消える。
しゃがんだ姿勢から斜め上に振り上げる形で、物凄い速さの剣撃を放つ剣聖‼︎
スカイソードの切っ先がセインの脇腹を捉えようとする刹那
「延‼︎」
遅延魔法を発動し間一髪、剣聖の斜め後方に避けることに成功するセイン。
剣聖の後ろ首に、ピタッとサルの剣の刃を当て
「普」
と遅延魔法を解除する。
「まいった……」
悔しそうに地面に手をつく剣聖…。
暫くの間、大勢の観客を沈黙が支配していた。
剣聖の最後の攻撃をかわしきれず、脇腹から少し血を流すセインは
「剣聖、最後のは絶対殺しに来てたよね…」
と、冷や汗をかくのであった……。




