燃え尽きて
キャプテンゴブリンの率いる群れを追い払い、緑魔力結晶の音が止んだのは朝方であった。
少しだけ仮眠を取り、ゴブリン達の痕跡を追うことにする。
時間が経過するほど痕跡が薄くなる、ゴブリン達の拠点を見つける為には、疲れた体に鞭打つ必要があるだろう。
マギーニャは魔法で枯れ木に着火し、昨日の残りのウサギの肉を焼いて朝食を作っている。
ラルラが大剣クレイモアの手入れをしていたので、セインも剣の手入れの仕方を教わる。
練習用の刃を潰してある剣に、手入れの必要があるのか甚だ疑問ではあるが……。
「ラルラさんって強いよね、戦い方も何処と無く優雅だったし、見惚れてたよ」
セインは研ぐ意味のない剣の刃を研ぎながらラルラを賞賛した。
「見惚れるだなんて〜、セインさんの方が私より速いし、魔法も凄いじゃないですかぁ〜」
ラルラが顔を真っ赤にしながらデレる、肉を焼きながら睨むマギーニャ。
「クレイジーベアは剣士では相性が悪すぎるからしょうが無かったけど……それだけ強ければパーティーメンバーにって、他の冒険者もほっとかないでしょ、美人だし」
と疑問を口にするセイン。
ラルラはソロの剣士だった、凄腕の剣士はパーティーの生存率を引き上げる、引く手数多のはずなのだ。
「美人だなんて〜」
更にデレるラルラ、更に睨むマギーニャ。
ラルラの話では2年前、16歳で冒険者デビュー、持ち前の身体能力、独自の理論と様々な剣技の研究で編み出した剣舞で、たちまち名前を上げる。
様々なパーティーから勧誘され、何度かパーティー登録したが、その都度ラルラ以外のメンバーは全滅したそうだ。
「現れるはずない場所でドラゴンに遭遇したり、急に吊り橋が落ちたり、隕石が落ちてきたり、崖が崩れたり、私が入ると、必ずパーティー全滅するんです……」
ラルラは今までの悲惨な経緯を話す。
「あ〜‼︎ 思い出した‼︎ ラルラって、あの幸滅のラルラよね」
なんだその二つ名は⁉︎不吉な印象しか湧かない。
パーティーを組めば必ず全滅、その事から付けられた二つ名である、因みに幸滅はコウメツと読むそうだ。
「そうなの…、だから私とは誰もパーティーを組んでくれないわ……、セインさんとだって、臨時とはいえパーティーに入れて貰っちゃダメって……早く言わなきゃ言わなきゃって、でも勇気が無くて……、ゴメンなさい……今まで黙ってて…」
言ってしまった、もうお別れだ…と思い、泣き崩れるラルラ。
セインは優しくラルラの肩に手を置く
「他の人がパーティーに入れてくれないんだったらそれでいいじゃない、ずっと私とパーティーを組もう、全滅?望むところだよ、本当に不幸なんだったら、それも含めて歓迎するよ、だってラルラさんはラルラさんだよ、少なくとも、私と出会った事は幸運だったって思わせてあげるよ、少し横柄だったかな?キャハ‼︎ 改めてよろしくお願いしますラルラさんっ」
セインは出来るだけおどけた感じでそう言った。
「ありがとう、一生ついて行きます、離れろって言われても、もう絶対離れません‼︎私の方が身の程知らずだと思いますが、セインは一生私が守ります‼︎」
ラルラは立ち上がると、セインの首に手を回し、力の限り抱きつく。
「うん、一緒に頑張ろうね」
セインは優しく抱き返し、ラルラが泣き止むのを、ずっと黙って待つのであった。
烈火の如く怒り狂うマギーニャ、朝食だったはずのウサギの肉は燃え尽きて、既に炭になっていた……。




