女剣士ラルラ
「大丈夫‼︎セイン、セイン、セイン‼︎」
マギーニャがセインの両肩を揺さぶり、最後には上から覆いかぶさる様に強く抱きつく。
セインは激しく頭痛とめまいにおそわれながら、なんとか意識を取り戻した。
心配してくれたマギーニャをいたわるように片手で軽く抱き返し、もう片手の手を地面につき、マギーニャの体と共にゆっくり上半身を起こす。
「大丈夫だよ、ごめんね、私が死んだらマギーニャさん1人じゃ、ソルの町まで帰るの不安だよね」
優しくマギーニャに微笑みながら言うセイン
「バカ‼︎ 私はどうでもいいわよ‼︎ セイン…お願い…あまり無理しないで……セインと出会ってまだ3日しか経ってないけど、セインがクレイジーベアに弾き飛ばされた時、嫌‼︎セイン、絶対死んじゃ嫌‼︎ って気が狂いそうだったの、アクスやディアラ、アーチが危ない時とは全然違う感情、会って3日だけど貴方が好き、大好き‼︎ 絶対、私より先に死んじゃ嫌‼︎」
いつもと違う真剣な口調のマギーニャ、泣き疲れた顔はグチャグチャだし、泥だらけで汚れまくっている……でもセインにはその顔が、世界で一番愛おしいように感じた。
「わかったよ」
セインは微笑み続けながら小さくマギーニャにうなづいた。
熊に弾き飛ばされセインが意識を失った後、熊はひとしきり暴れて力尽きた。
マギーニャはセインのもとに駆け寄るとセインを隠すように、暴れる熊に無防備な背中を晒しながらセインを抱きしめ、ずっとセインの名を呼び続けていた。
「ありがとう、助かりました、本当にありがとうございます」
熊に襲われそうになっていた戦士風の女性は、深々と二人に頭を下げる。
名前はラルラ、鉄のブレストプレートに革のレザースカート、膝まである同じく革のグラディエーターサンダルを履いていた。
身長はマギーニャより少し高い165㎝、この地方ではかなり大柄な女性だか、スマートな体型に無駄のない筋肉が付いている。
年齢は18、綺麗で整った顔立ちにショートヘアーが似合っている。
ソルの町の冒険者ギルドの依頼で、普段はやらないが肉不足解消の為に、猟師の護衛をしていたそうだ。
猟師は5人、護衛の冒険者は3人だったそうだが、あの熊にラルラ以外は噛み殺された。
ラルラも命がけで戦ったが、一人になった時点であきらめ、逃げていた所でセイン達に助けられた。
あの熊は、クレイジーベアという立派な魔物で、魔法使いがいないと討伐は難しく、ラルラ以外の2人の護衛も剣士だった為、殺されてしまった。
実はクレイジーベアは魔法にめっぽう弱く、マギーニャのファイアなら、3発も当てれば倒せたはずだ。
森のこの地点では危険な為、ラルラを一人で帰らせる事は出来ない。
ラルラは剣士だ、戦力にもなるだろうとラルラにも探索を手伝ってもらうことにした。
「じゃあ、ラルラさん、この依頼書の一番下の臨時パーティーメンバーの所に名前書いて」
セインが依頼書とペンを差し出すとラルラは、よろしくお願いしますと言いながら名前を記入した。
確認したセインは、ラルラの頬に手を添えて、おもむろにキスをする。
セインはパーティー登録の儀式を、まだ本当だと信じて疑わないようだ……。




