神聖なる儀式
転生3日目、剣も鎧も買ったし魔法も習得した。
あとは実戦あるのみ、目下の敵はキャプテンゴブリンとその仲間たち、奴らはソルの町から西に半日の距離の森に出没する。
その森はソルから近い為、ソルの森と安直な名称だが、森の中全域を捜索するとなると、それだけで丸2日はかかる。
私が転生した直後に遭遇した、マウンテンワニも同じ森を捜索する以上は警戒する必要があるだろう。
自衛団長のマクガイアさんの嫁、メアリーさんが作ってくれた3日分の保存食、水、寝袋などをリュックに詰め込み、朝早くソルの森に向かった。
肉が食べたい、キャプテンゴブリンを倒さない限り、ソルの町の肉不足は解消されないのだ。
困っている人を助けたい、私ごときがと思うが努力はしたい、転生前のように逃げたくはない、今の私はやる気に満ちている。
森の中に入る、村長に教わった猟師や冒険者用の細い道を通れば、迷わずに森全域を捜索出来るそうだ。
ガイルさんが、一緒に捜索に来たがっていた。
しかし彼にはわるいが、ランクデシでは足手まといだし、何より鎧に着替えただけで、私と気付かったうらみは忘れちゃいない。
奴では武器屋と防具屋のオヤジすら見分けがつかないだろう、ハゲはハゲでもハゲかたに違いがあるし、それに気付かないのはハゲに失礼である。
そう、彼らは先祖代々なのだから‼︎
おおっと、哲学的な事を考えてると索敵が疎かになっていたようだ。
前方の林に何かいる、セインは剣を鞘から抜き、ゆっくりと林に近づく。
「待って!わたしよ‼︎セイン」
林から聞き覚えのある声がする。
「マギーニャさん⁉︎」
林の中から出て来たのは、昨日、魔法の基本を教えてくれたマギーニャさんだった。
「アクスが怪我してるでしょ、する事ないのよ、暇だからセインに会いに村長さんトコ行ったら、ソルの森に行ったって聞いたからさー、心配でというか、単純に二人っきりで、また会えるからっていうか〜……」
マギーニャは、顔を赤くしてモジモジしている。
なんでも、深刻な顔をして、何か考えながら森の細道に入って行くセインを見つけて、おどかそうと林に先周りし、隠れていたらしい。
「今、この森はキャプテンゴブリンが出没するから、ソロで入るのは私以外禁止のはずですが…」
「だから〜…なんていうか〜……愛のチカラ?一緒に探検するぅ〜」
あいかわらず、デレまくってるが凄く積極的なマギーニャ、強い男に憧れる恋する魔法使いである。
うーん…、若い女性に慕われるのは嬉しいがマギーニャさん、どう見ても荷物もってないよな、一緒に行くとか……、日帰りの遠足じゃあるまいし…。
どう見てもマギーニャさんって今朝、朝食の後、着替えて上からローブ羽織ったら
「行ってきまーす‼︎」
って両親に声かけて、玄関のドアの前で、あっ‼︎ つえ、持つの忘れちゃった〜テヘペロってやってしまった気がするし…。
流石は筋肉質な神に見込まれしセイン、すべて今朝のマギーニャの、実際の行動である。
まぁ、食料はウサギや猪がいるらしいから現地調達でいいか、
「此処まで来てしまった以上、1人で帰るのは危険でしょう、一緒に行きますか?」
セインは笑顔で言う
「ありがとう、嬉し〜‼︎よろしくねセイン」
喜ぶマギーニャ。
ただ、今回の依頼はセイン1人で受けた事になっている。
村長から貰った依頼書にも、セインの名前しか書かれていない。
依頼は、ギルドランクなどの査定の関係で、依頼書以外の者の協力は、緊急時以外は禁止だ。
「依頼書の一番下に、臨時パーティーメンバーの欄があるでしょ、そこに私の名前を書けばいいの、アーン、セインと私の名前を同じ書類に書くなんて、感動するねっ。」
と言って、セインを見つめ、得意のテヘペロを、綺麗に決めるマギーニャ。
あの、むさ苦しい赤斧のアクスとは何度も連名してるでしょ……。
「あとは、私とキスしたらパーティー成立よ‼︎」
誰にでも分かるような嘘を堂々と言い放つマギーニャ。
えっ?そうなのか?そうゆうものなのか?
本気で悩むセイン。
儀式みたいなもんだろうし、いやらしくなく、サラッとスマートにしなくては‼︎
何故か?覚悟を決めるセイン。
マギーニャの両肩を掴み、力強く自分の身体と密着するまで引き寄せ、優しくキスするセイン。
マギーニャは少し驚きながらも、目を瞑り、その柔らかな唇で、セインの唇を下から従順に迎え受ける。
本当に、なんの疑いも無くキスしてしまうセインなのであった………。
この儀式が本当ならマギーニャさんは、あの、むさい赤斧のアクスと何回キスしてたのだろうか?




