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夢を見たその後で Epilogue その2

祐希とはるかの物語にはもうすこしだけ続きがあります。





あれからしばらくたったある日の事......。


2人は結婚する事になりました。


そして、はるかのおなかの中には新しい生命が宿っています。


それはどうやら女の子らしいです。


いままで、そして今も2人の前に広がっている道は


けして平坦なものではありません。


きっと、これから先2人の前には様々な困難がおとずれる事でしょう....。


みなさん、どうかこの2人をあたたかく見守ってあげてください。





生きていくという事は


悲しみを受け入れないといけない時もある


絶望を受け入れないといけない時もある


後悔を受け入れなければ いけない時もある


そして、そんな現実を


受け入れなければ いけない時もある。


その中で傷つく事もあるかもしれないし


逆に人を傷つけてしまう事もあると思います。

 

現実は厳しく、今という時間は


2度と戻ってはこないからこそ


人は幸せな一瞬を大事に思えるのかもしれません......。



祐希とはるかの物語に新しい1ページが加わりました。



はるかのおなかの中で10ヶ月もの間はぐくまれてきた

新しい小さな小さな命が

今、まさに外の世界へと羽ばたこうとしています。


新しい家族の誕生.......

それは、祐希にとってもはるかにとっても突然の出来事でした。

2人にとってのおぼろげに見えた未来予想図は

新しい命の誕生で急速に現実のものとなっていきました。


はるかのおなかの中ではびっくりするくらいの

スピードで新しい「未来への可能性」が育まれてきました。

2人の間にはいろいろな不安や現実の厳しさがあり悩みました。

それでも守るべきぬくもりを見つけた2人は決断しました。



絶対に守り抜いてみせる............と。



美香も俺とはるかの事を天国で喜んでくれているかな?

分娩室の前で俺は何故かふと、亡くなった美香の事を思い出した。


「大丈夫、絶対に美香も俺とはるかの事を応援してくれてるはずや」

俺は3回声に出して言ってみた。



今頃はるかはきっと陣痛の痛みに耐えているのだろう.......。

病院の都合で立ち会うことが出来ないけど、本当は傍にいてやりたい。

自分の事のように.......自分の体じゃない分

どうにも出来ない不安に押しつぶされそうになる。




何時間たったのだろう.........

永遠の時間にも思えるし、ほんの数分のような気もする。


静寂の時をやぶったのは俺を呼ぶ看護士さんの声だった。



看護士さんに抱かれた我が子をはじめて抱いたとき

情けない事に俺は震えが止まらなかった。

産まれたばかりなのに涙を流して泣いたりする事......。

そして、俺の腕にしがみついてきた事........。

すべてのことが新鮮で


世界はこんなにキラキラと輝く事が出来るんだという事をはじめて知った。

そうだ、はるかは!!!はるかは大丈夫なのか!?


「はるかの様子は......どうなんですか!?」

先生にお礼を言う前にたまらず口にしていた。


「奥さんも元気ですよ。おめでとうございます!」

先生のその言葉に体中の力が一気に抜けたような気分になる。


「本当にありがとうございます!!!」

俺は先生の後姿に向かって深々と頭を下げた。


本当に良かった........。

はるか、ホンマによく頑張ったな。

俺は心からお前の事を尊敬する。

ホンマによく頑張った。




俺は今日という日を生涯忘れる事はないだろう。



俺たちにとって今までの人生より、これからの人生の方がきっと長いだろう。

その中できっとどうにもできない悲しい事は必ず訪れるだろう......。

それでも、明けない夜はないように.......

朝日のように全てのものを照らし、光り輝く未来を信じたい。


俺にとって


はるかにとって


まだ、産まれたばかりのこの子にとって......



しばらくして.....


産まれてきた彼女は「咲」と名付けられました。


春に咲き誇る花たちはとても奇麗だけど、その裏では長い長い冬を耐えて生き抜く力があります。

つらく悲しい事があってもその悲しみを糧に出来るからこそ、花はより美しく見えるのかもしれません。

そんなふうにこの子にもなって欲しいという想いが込められています。

そして、「未来さき」は光り輝くものであって欲しいという両親の希望です。


両親のそんな願いを受け咲は日々成長していきました。





そんなある日のこと......


咲は机の上にある1冊の本を手にとって俺に話しかけた。


「パパー。ゆめを見たそのあとで....ってなーに?」


「咲にはまだ、少し難しい本やなー。でも、もう少ししたら咲にもお話を聞かせてあげるな」


「うん、わかった。ぜったいに、やくそくねー」




咲は今、小学2年生。この物語を理解するには後、数年はかかるだろう。

理解できるようになった時には、この物語を咲に話してあげたいと思う。

いつの事になるかはわからないが、俺は、その時が楽しみだ。


そして、俺が彼女を大事に思っているのと同じくらい彼女の事を大事に想ってくれる人を

連れて来る日がいつの日か来るのだろう。

その時は、その彼と酒でも飲みながら話をしたいと思う。



この話をしたら、きっと咲は顔を真っ赤にするんだろうな......。

俺もなんだか照れくさいし、「俺の娘はやらん!!!」って”ちゃぶ台”をひっくり返して困らせてみるのも面白いかもしれないな。

.....と、まだまだ「さき」の話を想像しながら少しにやけてしまう。



その時にでも彼に話してやろう。

パパとママがどうやって一緒になったのか。

どうして咲が「さき」という名前になったのか。



この本を読みながらゆっくりと、ゆっくりと..........。



それが、今の俺の夢だ。

誰もが持っているどこにでもあるようなちっぽけな夢。

でも、そんなちっぽけな夢や幸せを守るためにみんな懸命に生きているんだと俺は思う。





そんな事を考えながら、バルコニーに出て煙草に火をつけた。

煙は空へ上がり、やがて雲に溶けていった。







夢を見たその後で....



fin

あとがき


おつかれさまでした!!

「夢を見たその後で......」

を最後まで読んでいただいてありがとうございます。

作者のnorinoriです。


さて.....あとがきなんですが、

ここではこの物語を書くに当たって気をつけたことや

感じた事を書いてみたいと思います。



まずは、リアリティにこだわりたかった事です。

夢を見たその後で.....は現代の物語です。

ファンタジーの要素も一切ありませんし

歴史、文化にもふれていません。

一言でいえば空想のものがまったくないんですね。



「誰の身にも起きうる日常を描いた物語」がテーマの物語なので、

現実的に考えて、ありえない事は起こさない

という方向性でシナリオを書いていきました。

という訳で、主人公とその彼女の喋り方も

あえて少しズレた関西弁ににしました。




というのも、ゲームとかドラマに出てくる人って

大抵は標準語?か関東弁?だと思うんですよ。

それが気に入らないって訳じゃないんですよ。

ただ、生まれも育ちも関西の私としては

「○○だよ」とか「ダメじゃん!」と言っている

自分自身がどうしても想像できなかったんですね。

広島、岡山で2年ほど転勤を経験してみたり

東京で数ヶ月間生活をした時期もあったのですが、

どうしても関西弁以外のの言葉をマスターできなかったし....。





だって、関西に住んでる人が標準語を喋ってる時点で

非現実的だと思いませんか?

もし、私が広島で生まれ育ったなら

この物語の主人公は広島弁になっていたと思います。



現実の生活により近い姿を描きたかった....というわけです。

だから、会話文なんかも実際に自分が言った事、聞いた事

を中心に組み立てています。

お店でのやり取りも私がパン屋の店長をしていた10年前のことを

思い出しながら「生きた」生活観を出そうと試みたつもりです

実は、登場人物もほぼ全員実生活でのモデルがいます。

ちなみに祐希は私自身をモデルにしています。



一応おことわりしておきますが

実生活ではあんなにモテていませんよ.....。

私の軽い願望ですな(笑)

ただ、なんでモテまくってるのかはちょっとした理由があって、この物語は、元々サウンドノベル(ゲーム)として発表していたので、このエンディング以外にも複数のエンディングを用意する予定だったんです。トゥルーエンドの「はるかエンド」の他に「井上さんエンド」「小野寺さんエンド」「美香エンド」「バッドエンド」の5種類考えていたのですが、元々考えていた(描きたかった)「はるかエンド」以外はなーんか蛇足っぽく感じ外した結果、モテまくる主人公だけが残ったという訳です(笑)


と言うか、偶然にも「はるかエンド」を書き終わったその日に妻の妊娠を知り、それからは、バタバタしてしまいなかなか続きが書けなくて(苦笑)

時間ができれば何とかして「井上さんエンド」だけでも書きたいなーって思っているんですけどね。



本当は魅力的な男友達のキャラクターも入れたかったんですが、現実の店が、自分以外すべて女の子(子じゃない方もいますが....)だったのでなかなか違和感なく男友達役のキャラを作ることができず断念。



設定だけでなく話そのものもなるだけ身近に感じてもらえるようにあえて実話を取り込みました。

例えば第2章で出てきた美香の手紙なんかも、実際に私が以前もらった内容に少し手を加えて使いました。他にもイロイロと実話を盛り込んだりしています。


ただ、基本的にはフィクションなので実在の人物とは全く関係ありませんよー。そこだけはあしからず.....。


この物語を書き始めた時、現実の生活では6年付き合っている彼女がいて普通に結婚しようと思っていました。

ただ、いろいろと込み入った事情があって

なかなか結婚には至らなかったのですが、

そんな中で時々、昔に別れた彼女のことを

思い出して今はどうされているのかな?

とふと気になっている。

...........そんな自分がいました。


別に昔の彼女とどうこうしようという気はありませんよ。

言い訳じゃなくホントに。

ただ、もしホントにその彼女ともう一度出会ってしまったら

本当に冷静でいられるんやろうか?

とそういうことを想像しながら書き始めました。


田村美香に関してはいろんな意味で賛否両論が分かれるかもしれませんね。

祐希と美香の間では結論は出たとはいえ、祐希の立場から見たら美香の人生から置いてけぼりを食らった事実は変わらないし

美香の立場なら、彼女に課せられた運命はあまりにも過酷だったので......。


美香の運命に関しては最後まで迷いました。

フィクションとはいえ人の命を題材にする以上、軽く扱うべきではないですし、それに見合う必然性がいると考えます。




「さよならから生まれるものもあると思う、

さよならは悲しいだけじゃない。切ないだけじゃない。そう気付かせてくれた」




生きている以上いろんな形で「別れ」を経験しますが、さよならから生まれてくるものもあるんじゃないかな?と言う想いが彼らに「あの言葉」を言わせたと思います。

もし、美香は奇跡的に助かって再び祐希の前に姿を現したのなら、彼らはきっと「あの言葉」は言っていないと思います。

あとがきの上の方でも書きましたが奇跡的に助かって......というシナリオも当然、考えていました。

ただ、すべてを丸く収める都合のよい「奇跡」と言うものは自分としてはリアリティに欠けているような気がしました。

話は飛んでしまうんですが、最近の子供向けの昔話は「喧嘩したけど和解して終わり」というパターンが主流になっています。

猿蟹合戦で猿が死んで終わり.....というのは教育上問題との価値観も分かるんですが、本来の内容を変えてまですべてを丸く収める必然性があるのかな?という想いがあります。

悪い事をすれば当然罰せられるという事を「昔話」という形で子供に教えるなら必要な残酷さなのではと個人的には思います。

現実は時に残酷だけど、同じように希望の光もあるという事を祐希と美香の別れに込めたつもりです。

ハッピーエンドだけど、祐希というか登場人物全員の心の中にはほんの少しのリグレット(後悔)があるはずです。

でも、どんな結末を迎えても絶対にすべてが丸く収まるという事はあり得ないんじゃないかと思います。

ただ、みんなそういうリグレットを抱え、そして乗り越え「幸せ」というものに少しでも近づいていけたらいいんじゃないんかなと思いました。



実際にこの文章を読んでいる人でもいろんな立場の人がいると思います。

これから結婚を控えていると言う人もいるかもしれませんし、夢かなえて自分のお店をオープンさせると言う人もいるかもしれません。

逆に、仕事を退職しようかどうか悩んでいる人だっているかもしれません。

いろんな人がいろんなドラマを抱えていて、同じものを見てもそれぞれの環境も違うから見えている景色も違うと思います。だから、同じ事柄でも感じ方は人それぞれだと思います。


第1話のはじめに祐希は「いろんな角度で物を見ないといけない」

と美香が昔言っていた事を思い出す所から始まりますが、その話は最終話にして



”同じ物を見ても人によって見え方や感じ方は違うだろう.........。

いい風に捉えるも悪い風に捉えるも人それぞれだと思う。”

「いろんな角度で物を見ないといけない」と昔、俺に教えてくれた人とはもう2度と会う事はないが、今になってその本当の意味がわかってきた気がする。


と締めくくります。これは、祐希と美香とが納得のいく別れ方ができないと出てこない言葉と思います。だから、美香に関してはあの結末以外にありえないんじゃないかな.....となりました。

文章で取り繕うことは出来ますし、そこがフィクションのいいところでもあるんですが、この物語に関してはなにか違うような気がしました。




最後のワンフレーズ「そんな事を考えながら、バルコニーに出て煙草に火をつけた。煙は空へ上がり、やがて雲に溶けていった。」は我ながら結構気に入っているフレーズです。

いい歳したおっさんがバルコニーでたばこを吸っているという

何とも絵にならないワンシーンの中には実はこれだけの「ドラマ」が隠されていて、でも、それは特別な事でもなんでもなくそんな「ドラマ」は誰もが持っているもの。だから、一瞬一瞬を大事にしたいものですね。




お気づきになった方もいるかもしれませんが、この物語は、基本的に主人公の自分目線の1人称で話が進んでいます。

でも、ところどころ親としての目線の1人称になっている場所があります。

それは、この物語を書きはじめたのが自分が独身の時だったので、

修正をかけている現時点との精神年齢のギャップからきています。

こればかりは、実態にわが子をもってみないと分からないものですよね。




生きていたら辛い事や悲しい事なんて

きっと物語よりもたくさん転がっている

そう思います。

現実は物語よりも厳しいものです。

でも、その厳しさがあるから

物語よりもおもしろいものだと私は信じたいです。


誰かを信じる事

誰かを疑う事

誰かを愛する事

誰かを憎む事


それは実は紙一重なのかもしれませんね。


最後になりましたがこの物語を読んでくれた全ての人へ.....

ありがとうございました!!


またどこかでお会いしましょう☆

2006年、2014年


作者 norinori


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