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夢を見たその後で 最終話 「夢を見たその後で....」その2


「........という訳で皆さんとは1年あまりの間ですが

本当にお世話になりました。ここで得た経験は僕にとっての

一生の財産になると思います。

みんなも体に気をつけて無理をしないで頑張ってください。

本当にありがとうございました」

 

 

あれからいろいろと迷ったが今月付けで退職届を出した。


今日は俺の為に仕事場のみんなで送迎会を開いてくれている。


仕事が嫌だとかそういうのではないが、自分自身の環境を変えたかった事。そして、その中で自分の力がどこまで通用するか試してみたくて退職を決意した。


はるかとはあれ以来連絡を取っていない。

もしかしたら、もう連絡は取らないかもしれない。


まだ、自分の中で答えを見つけてはいないから。

本当は何を大事に想っているのか。

そして、自分がどうありたいのか。

ゆっくりでもいいからその答えを見つけるまでは..........。

 

「店長がいなくなったら寂しいです......」

井上さんが俺の隣にやってきた。


結構飲んでるみたいで、いつもよりだいぶからんで来る。


「いや、別にもう会えないって訳じゃないんやからさ......」


「そんな事言ってもう2度と連絡しないつもりなんです!!」

井上さんは本気でからみモードだ


「そんなつもりは.......ちょっと小野寺さん!!笑ってないで助けてや!」

「私には出来ませんよぉ~。井上さんだって最後の夜に思い出が欲しいでしょうし、邪魔は出来ませんよ(笑)」


そんな殺生な.......。

はるかとは今、微妙な関係だがそれとこれとは話が違う。

「そうですよ。思い出ですよ......店長!!

....もう、お店辞めちゃうんだから店長じゃないか」

井上さんは完全に出来上がっている。

「もう店長じゃないなら立場とか関係ないですよねぇ.......祐希さん?」


だめだ!!井上さんはお酒を飲ませたら危険だ。


周りのみんなは.........。誰も助けてくれる気配がない。みんなニヤニヤしてこっちを見ている。

勘弁してくれ~。これで、本当に手を出したら手を出したで大問題になるだろうに......。


「所で、退職の事は彼女は何て言ってるんですか?」

少し落ち着いた所で小野寺さんが聞いてきた。


「彼女には言ってないよ」


「えっっ!!そんな大事な事彼女に相談しなかったんですか?」

小野寺さんは驚きの声を上げた。

「彼女と何かあったんですか?」

「まぁ......ね」



「そうなんですか........それなら....せーのっ」



「いのうえさーん♪店長が彼女と別れたらしいですよー」


なぬっ!?

誰も別れたとは言ってないんだけどな.....。

「本当なんですか!?祐希さん(既にこの呼び方に変わってる....)大丈夫ですか!?」

井上さんがすぐに飛んできた。


「いや.....別れたという訳じゃないんやけど...」





「........という訳で今は連絡を取ってないねん」

事のなれそめを説明した。


「そっかー店長もいろいろ思い悩んでたって訳なんですね」


小野寺さんがしみじみ肯く。


「店長の答えかぁ.......」


一方の井上さんはそうつぶやいてから難しい顔をして俯いた。


井上さんの気持ちは嬉しいけどやっぱり彼女の気持ちに応える事は出来ない。

あれだけ可愛くて機転が利く子なんてめったにいないと思う。

そんな子が俺の事を好きでいてくれるなんて我ながら

奇跡なんじゃないかと思ってしまう。

それでも、今 彼女の気持ちに応えてしまったら

井上さんの事をはるかや美香の代わりのように見立ててしまいそうで怖いのだ。



それだけは絶対にしたくない。井上さんにも失礼だし自分にも納得がいかない。

もし、井上さんの気持ちに応えられる時が来るのなら、自分自身が納得する答えを見つけた時。もっとも........その頃には井上さんなら俺なんかよりいい男をきっと見つけてるだろう。




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