夢を見たその後で 1話 「日常」 その3
「......!」
「...ちょう!」
「..んちょう!!]
「松本店長ーー!!!」
井上さんが目の前で手を振りながら話しかけてくる......
ぼーっとしていたみたいだ
「どうしたんですか?急にぼーっとしちゃって」
「いや、ちょっと考え事しとったみたいやわぁ」
「彼女の事でも考えていたんですかぁ?いいなぁー。私もそういう風に想っていてくれる人が欲しいなー」
半分は当たりなんだけど少し思い違いの妄想をしてるらしく、ニヤニヤしながらこっちを見ている。いちいち訂正するのも面倒なんでそういう事にしておこう。
そうこうしている内に結構な時間が過ぎているみたいだ。
「井上さん、ところで今何時なんかなぁ?」
「えーっと、2時ですねー」
「.......」
「あちゃー、すっかり時間が過ぎてしまってるわ。オーブンに食パン入れたまま休憩来たから...。今頃、素敵な匂いの”真っ黒食パン”が出来上がってるしまってるやろうなぁ.....」
「ひ、悲惨な光景なんでしょうね......」
「まぁ、とりあえず戻ろっか......」
案の定、オーブンからは大量の黒煙と一酸化炭素中毒になるのでは!?と疑うような匂いがたちこめていてちょっとしたボヤ騒ぎになっていた.....
「やっちゃいましたねぇ...」
「そうやね.....」
「火事ではないので安心して下さい」
と一通りお客さんに説明してとりあえず事態は収まったけど..........
「こいつらを始末せにゃぁあかんよなぁ....」
俺は食パンになる筈だった黒い塊を泣く泣く片付けていった.......。
「お疲れ様でしたー」
閉店時間も間近になり、ラストの子に一通りの指示を出して店を出た。
「さぁ、早く帰って寝ようかなぁ」
「さて、と.....」
帰りのコンビニで買ってきた弁当を口に運びながらパソコンの電源を入れる。
家に帰ったら仕事は終わり。という訳にはいかず、パートさんやアルバイトのシフト、売り上げの計算や販促計画などいろいろ考えないといけない事が多いのだ。
普通の労働時間が1日13時間ぐらいでこういう時間外を含めたらさらに1、2時間上乗せになるんだからなかなか大変。
まぁ、どこぞの大手コンビニの店長は平均18時間働いてるのに、上からも下からも文句を言われたりと労働基準法はどうなっているんだろう?みたいな所も現実にある事を考えたら俺なんかまだマシなのかもしれない。
アルバイト連中も、なんでもかんでも店長がすると思わないで欲しいもんだ。
「やっと終わった!!」
明日に備えてそろそろ寝ますか......。