夢を見たその後で 6話 「はるかへ......」 その3
「はるか.......」
「ん?どないしたん?」
「はるかに話したい事があるねん」
「うん...ええよ」
「この前な、俺に”祐希の心の中には私の知らない誰かがいる”って言ってたやん?」
「うん、言ったで」
「その人の事なんやけど...聞いてくれるか?」
「うん.....ええよ」
「もう、10数年も前の話やねんけど 学生時代付き合っていた子の事。ホンマに昔の話なんやけど.........」
「その人がどうしたん?」
「あの当時まだ俺は10代やったから全然何も分かってなかったんやけど.....。それでも、あの当時は今の はるかに想う気持ちと同じように彼女の事を愛していたねん」
「うん.......」
「今からちょうど10年前、突然その彼女が失踪したねん」
「...........!!」
「いや、失踪って言っても事件に巻き込まれたとかそんな大げさなもんじゃないねんで」
「...........」
「ただ、ある日突然連絡が取れなくなって。そのまま何ヶ月が過ぎたんやけど........今度は彼女が目の前に現れて突然別れを言ってきたねん」
「ずいぶん勝手な女やなぁ?......なんで祐希はそんな女の事いつまでも引きずってるん?」
「引きずってたって言うより、あの時.....突然別れを言われた悔しさをバネにして、反省して自分を見つめなおすきっかけにしてたつもりやねん。だから、はるかが言うように俺の心の中に彼女が存在してるのも否定できんけど間違っても未練とかじゃない自信はあるよ」
「うん........」
「今、俺が1番大事に想ってるのは間違いなくお前やねん」
「.............」
「それは......ホンマの事やねん!!」
「.........ちょっと、祐希!!突然どうしたん!?」
「単にワガママで別れたんならよかったのにな」
「えっっ!?.....何の話なん!?」
「その彼女........最近.....癌で亡くなったねん」
「えっ.......?」
「彼女.....もう、10年も前に脳腫瘍にかかっていたんや」
「えっ!?それってどういう事?」
「彼女は......自分が普通の人より早く死ぬって分かってて、それでも俺の事を想って別れる事を選んだねん!!たった17歳やっていうのに.....自分がいつ死ぬかも分からへんってのに!!」
「.............!!!」
「俺はあいつが癌やったなんてつい最近まで知らんかった。あいつが死ぬ直前になって彼女のおかんから電話があって初めて知ったねん」
「そうとも知らず俺は自分の中で結論を出していた。ずいぶんと大人になったなあって勝手に思っていたわ............」
「何で気が付けへんかったんやろう......な」
「祐希......?」
「私には彼女がどんな人なのか分からへんよ。
でも、祐希がいつまでもこのままでいる事を彼女は望んでへんと思うねん」
「ああ、それは分かってる.....」
「だったらそんな暗い顔せんとってよ!!」
「やっぱり、祐希は何も分かってないわ!」
「なんで彼女は自分が癌にかかったって事を
最期まで祐希に言わんかったと思っとるん?」
「えっ.........?」
「祐希の事を愛しとったからちゃうん!?癌にかかった人の気持ちは私には分からへん。でも、祐希の事が好きだって女の気持ちは分かる!!」
「好きやから言わんかったんちゃうん!?
人よりも早く死んでしまう自分じゃ祐希と一緒には幸せになれへんって思って身を引いたんちゃうん!?」
「うっ..........」
「そうちゃうん!?だったら祐希のこんな姿を見て彼女はどう思う?
きっと喜ばへんよ.....」
「分かってる.....つもりやねん....」
「それなら、もっと真剣に前を向きーな!」
「今の祐希は........彼女の事も、私の事も....誰の事も見てないで!?.......自分の中に閉じこもってしまっとるねん!」
何にも言い返せない........。
はるかの言う事は正しい。そして、俺は今どこも見ていないのかもしれない。
「何か反論してよ!!!なんでここで”おまえしかいない”って言ってくれへんの!?今の祐希は本当に誰の事も見ていないんちゃうん?彼女、がっかりしてるで.......」
「私には、あの人の代わりなんて.....
出来ないし....したくない。だから......」
「ちゃんと前見てよ.....祐希!!これは、祐希自身の問題なんやから祐希しか答えを出せへんねんで!!!それまで私は祐希とは会わへん......連絡もせーへん!!もしかしたら、このまま”さよなら”かもしれへん。それでも祐希は答えを出して欲しい。私の為にも......亡くなった彼女の為にも」
「はるか........」
はるかはそう言って立ち去っていった。
今の俺では追いかける事すら出来なかった。
今、追いかけたならまだ間に合うのかもしれない。
でも、そんな中途半端な答えをはるかは望んではいない筈だ。
答えは俺自身が見つけないといけない。




