夢を見たその後で 5話 「伝えたいこと、ひとつ」 その1
「.................」
どこをどう歩いたのか、知らない公園に来てしまったみたいだ。
ブランコに腰かけ空を見上げた。
真っ暗で、まるで 今の俺の心の中のような色をしている。
「出来るなら、こんな決断しかできなかった私を許して下さい。」
10年後、この事を振り返ったとき
この決断があなたにとってプラスになってると思える日が来ると私は信じています
「昔の事でも......一度でも好きになった人の幸せを考えるのって普通の事だと思うけど?」
美香の言動すべてに納得がいった。
なぜ、突然失踪したのか?
なぜ、別れる時まで俺の事を気にするのか?
なぜ、自分の事より俺の幸せを願うのか?
簡単な事じゃないか!!
美香は......!!
自分がこうなるって事が分かってたんじゃないか!!
彼女は、もう10年も前に......自分が普通の人よりも長くは生きられないと分かっていたんだ。
その時は5年後になるのか......10年後になるのか。それとも明日、突然やってくるのか
俺なんかには想像もつかないような恐怖と戦いながらも......それでも俺の事を想って別れを決断したんだ!!
たった17歳の女の子だぞ!?
俺が美香の立場ならそんな決断が出来たか!?
答えは明確だ
出来る訳がない........。
28歳になった今の俺でも、自分の死に直面してあそこまで気丈には振る舞えはしない。
ましてや10年前の俺なんかでは到底考えられなかっただろう。
俺は何をやっていたんだ?
なぜ、気が付かなかった!?
ちゃんと見ていたら何か悩み事がある事ぐらい気が付けたはずだ。
なぜ、俺は自分の事しか考えられなかった!?
たった17歳の女の子が目の前で悩んでいたというのに。
美香....お前ホンマに凄いよ。
心から尊敬するわ。
でもな、お前の人生からおいてけぼりを食らうのは10年前で最後にしてくれないか?
俺が今、想っている事をもう一度会って伝えたい。
本当の別れになる前に..........
もう一度 美香に会いに行く。
そして次の日......
美香の病室の前には「面会謝絶」の札がかけられていた......。
どうしても話がしたい!!
そう思って看護士さんに美香と話が出来るのかと聞いてみたが「今は、本人の希望でご家族以外の方とは会わせられません」と返ってきた。
「それと......今、田村さんに会っても話の出来る状態じゃありませんので.....」
帰り際に看護士さんはそう付け加えた......。
現実とは残酷なものだ....
その言葉が俺の中で繰り返される........。




