夢を見たその後で 4話 「10年も前に......」 その4
病室には........美香がいた。
ベットで眠っている美香は、抗がん剤の副作用のせいか 1ヶ月前は元気に俺と話をしていた人と同一人物とは思えない やつれた姿になっていた.....。
「美香........」
あまりの現実にそこから後の声が出ない。
いや、これが現実なのか どうかも未だに理解できない。という方が正しい。
「..............」
少しは話が出来るかもと思っていたが、今日はとてもそんな状況じゃなさそうなので帰ることにした。
「美香......それじゃ、また....明日な」
「ダメ、もう.......来ないで.......」
立ち去ろうとした俺を呼び止めた一言は
聞こえるかどうかの小さい声だった......
「美香!話が出来るのか?」
「どうして........祐ちゃんが......ここ.......に......いるの?」
「どうしてって、美香のお母さんがさっき俺に電話をくれて。俺、美香が癌だったなんて知らなかった......」
「お母さんが....? 出来れば、私の...こんな....姿........見られたくなかったな.....。でも、祐ちゃん.....に会えて嬉し....い」
「美香.........」
「最期に.....もう一度.....会いたかった。でも、明日からは...来ないで!.....もう、あなたの...事も思い...出せなくなるかもしれないから。」
「私、ホントは..祐ちゃん...と別れたく...なかった。今でも祐...ちゃんが好きよ。でも、そんなあなた..を...忘れて...しまいそうなの」
「だから...今日..で...本当の...お別れ....」
美香の最後の一言が俺の胸に突き刺さった.......。
第5話「伝えたいこと、ひとつ」に続く.....




