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夢を見たその後で 1話 「日常」 その2

「おはようございまーす」

朝一番のアルバイトの子が元気いっぱいに店に入ってきた。

「井上さん、おはよう」

井上 愛子 20歳のフリーターだが、元気があって気立てがいいムードメーカー的な存在だ。

仕事もよくしてくれるので店長としてはかなり重宝している。

といってもあまり重宝しすぎたら

「店長はアイばっかり褒めすぎだよ!」

なんて他のバイトの女の子に言われるのでその辺のバランスが難しい。

そうでなくても「店長は若い子ばっかりひいきしている」なんて言われやすいからなぁー。

経験したことある人なら解ってくれると思うのだが、店長ってホント難しいです。...ハイ。


「わぁ~。いいにおいがしてきましたね」

「井上さん、来て早々忙しいやろけどパン焼けてきたから店に出していってなー」


「はぁーい。今日も一日頑張りましょね☆」

俺も、今日も一日頑張らないとな。



「やっとメシにありつけるー」

午前中の分のパンを全部焼き終えて少し遅めの昼ごはん。

立場上、悠長に1時間も休憩を取れるわけじゃあないけど、それでも休み時間があるだけ今日はまだマシな方だ。

井上さんもちょうど今から休憩に入る所みたいでお店のパンをいくつか買っている。


「店長も今から休憩ですか?」

「おぉ、やっと休憩やけど井上さんも今から?」

「はい☆せっかくですから、一緒にご飯食べませんか?」


「そうやなぁ。せっかく誘ってくれてるわけやし一緒に食べよか!!」

まぁ、たまには女の子とお昼を一緒に食べるのも悪くないよなぁ。

「はい♪じゃぁ”てるてる”で待ってますね」


”てるてる”とはショッピングモールの飲食コーナーの名前である。

なぜ”てるてる”なのかはいまいちよく解らないが、まぁまぁ雰囲気がよく落ち着けるのでうちの従業員もよく利用している場所である。

俺はコーヒーを頼んで席を探していると

「店長ー、ここですよ」

井上さんは嬉しそうに手招きしている。

俺は、井上さんの座っている前の席に腰を下ろす。


何故か井上さんはにこにことこちらを見ている。

いつも、笑顔を絶やさない明るい子だ。

目の前の彼女をふと見てみる。

目はパッチリとした二重で、鼻は高いとは言えないが淡いピンクの頬と丸顔のせいか可愛らしいという感じだ。うん!.....十分に合格点だろう。


「あんまり見ないで下さいよー何か恥ずかしいじゃぁないですかー」

つい、まじまじと見てしまっていたらしい。


「私は構わないですけど、あんまり他の女の子を見ていたら彼女に怒られますよー」

「ごめんごめん、そんなにまじまじと見るつもりじゃなかってんけど、ちょっと見とれてたみたいや」



「褒めても何も出てきませんよーでも、彼女とは最近どうなんですか?転勤で離れ離れな訳ですし寂しがってるんじゃないですか?」


「うーん、どうなんやろねぇ...」

俺には付き合って5年の彼女がいる。

5年もたつのだから大概の事はわかっているつもりだが、結婚とかそういう事に関してはお互いいまいち煮え切らないような気がする。

俺にとっては今の所一緒にいて一番落ち着く人だって事は疑いようのない事実だし、おそらくは彼女もそう思っている。

.......と俺は思う。


俺もいい歳だ。そろそろしっかりとした”自分”というものを持っていたいけど、将来設計にいまいち自信が持てなかったりする。


 

何かを変えたい.....

 

 

ただ、何を....?



お互いイマイチ煮え切らないのは好きとか嫌いとの問題じゃなく、簡単に手に入る”普通”の何かを変えたいのかもしれない。


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