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夢を見たその後で 3話 「告白」 その1

第3話   告白



「あちゃー。......クロワッサン真っ黒や」



「いてっっ!!」

「店長!!大丈夫ですか?」

「ちょっとナイフで手を切っただけやから大丈夫」



「店長、チーズのパンにチーズが入ってないんですけど.......」

「ごめん、忘れてたわ」


今日は本当に調子が悪い........。

はるかに結婚を断られたのがかなり効いてしまってるみたいだ。

断られた事そのものよりも 俺の心の中の自分でも忘れてしまっていた部分をはっきりと指摘された事。

自分でも気が付かない間に はるかを傷つけていたという現実がショックだった。


このままではふられてしまうかもしれない...。

何となくそんな気がしてる。

今は、とりあえず自分に出来る事をするしかない。はるかの為にも、自分の為にも。


「あーっ。イギリス食パンまで焦がしてもた!!今日はほんまに何をやっとるねん、俺は」

「店長、少し休憩行って来た方がいいですよ!」

「井上さん、ありがとう。今日はお言葉に甘えて少し休んで来るわ」




「ふう」

コーヒーを飲んで一息ついた。やっと気分が落ち着いてきたようだ。

それにしても、あんなにわかりやすく落ち込むとは我ながら恥ずかしい。

俺が落ち込んでいる事は井上さんにも見透かされてるみたいで余計な気を使わせてしまったみたいだ。また、謝っておこう。

とりあえずタバコに火をつけてもう少し気持ちを落ち着けよう。




「店長!大丈夫ですか?」

井上さんがやってきて俺の目の前に座った。

「私も休憩取っちゃいました☆」

正直、今は一人になりたい気分なんだがアルバイトの子にここまで気を使わせているんだから

これ以上心配かけるのも店長として情けないものがあるし、平静を装っていよう。

「ちょっと体調が悪かったんやけど、もう大丈夫やで!ありがとうな!!」


「大丈夫そうな顔してないですよ?顔に”ウソ”って書いてあります」

「...........そりゃ、体調がいまいちやから顔色悪いんも仕方ないって」

「そういうんじゃぁなくって........”何かあった”って顔してます」

女ってのはどうして人の心をこうあっさりと読んでしまうのだろうか?

図星過ぎて言葉が出ない。



「私で良かったらなんでも話してくださいね。いつも店長にはお世話になってるし、出来る範囲で力になりますよ」


「それはありがたいけど......」


一人になりたいとは言えなかった。

彼女は真剣に俺のことを心配してくれている。

一人になりたい反面、彼女の優しさが心に染み入ってきたような気がした。



「店長さえ良かったら、仕事が終わったら少しお話しませんか?」

「えっ?.......いや.....うん....」

あいまいな返事をしてしまったもんだ。

人の優しさを無下に断ることは俺には出来ない。

「それなら、仕事が終わったらここで待ちあわせって事でいいですか?」

「あ.....うん」

「それじゃあ、私は先に戻りますのでゆっくりしてきて下さいね」

「.............」



強引に押し切られたような気もするが、今の俺にはそれくらいでちょうどいいのかもしれない。

しかし、なぜ井上さんはそこまで俺のことを心配してくれるのか?

それにしても、情けないなぁ......俺。



とりあえず、残りのパンを焼き上げてしまうか。

水温が12℃で.....低速3分中速2分.....

 

90分でパンチして.......

220gで分割......

 

「ホイロは.......そろそろやね!」

上火が180℃で下火が220℃で.....


焼け上がった!!



「井上さんー、本日最後のイギリス食パン焼け上がったよ!」

「はーい、わかりましたー」

「いらっしゃいませー!!

 ただいまイギリス食パン焼立てとなっております!!どうぞお試しくださいませー♪」

井上さんをはじめ、女の子たちのかわいらしいかけ声が店の中に響き渡り、それにつられてお客さんたちも一斉に集まりだす。


本日の仕事もここまで、今日は失敗だらけやったけど何とか1日乗り切ることができた。

 

井上さんは30分ぐらい前に仕事終わっていたからそろそろ待ちくたびれている頃だろう。

俺も急いで行かないとな。


「お疲れさんー」

レジに残っていた小野寺さんに声をかけた。



「お疲れ様です。ところで、店長今から井上さんとデートですか?」

「えっっ??何でそう思うん?」

「さっき井上さん、ばっちり化粧して出て行っていましたし、店長のことをチラリチラリとみていたから何となくそう思ったんですけど」

「まったくのハズレじゃぁないんやけど、変な誤解があったらなんやから店のみんなには黙っていてな?」


「あれっ!?店長と井上さんは付き合っていると思っていたんですけど違いましたか?」

「いや、それは誤解やで!!そういう誤解を防ぐため、みんなにはこの事は内緒な」

「井上さんと店長ならお似合いのカップルだと思ったんですけどねー」

「だから、誤解やって!!」




「井上さんとならいいかなーって思っていたんですけどね.....」



「えっ!?.....どういう事?」

「なんでもないです!.......それより、井上さんが待っていますよ?」

「はいはい、それじゃぁ後はよろしくな!!」

「はーい!」

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