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あなたへ  作者: 深崎 香菜
4/35

記念日

僕たちが付き合うようになって2ヶ月という月日が流れた。

大学にも慣れ、明日香さんの妙に高いテンションにも慣れて・・・・

「ねぇ亮ちゃん」

「はい」

「もうすぐ2ヶ月の記念日だよー!」

「あ、そうですよね。今回はどうしましょうか?」

明日香さんのワガママで僕たちは毎月付き合い始めた12日にはお祝いをするとこにしている。

先月は少し高いレストランで食事をした。


 僕は普通、お祝いなんてものはお互いの誕生日、クリスマス、そして1年ごとの記念日だと思っていたし、

今まで付き合った子(といっても数えるほどだけど)だってそうだった。

でも明日香さんは毎月が楽しみになると言っていたのでしている。


「ねぇ、私亮ちゃん家行きたい」

「え、ちょ・・・・・」

明日香さん、それがどういう意味かわかってるんですか?

「僕、一人暮らし・・・です」

「ん。知ってる。私もよ。」

「知ってる・・・って。本気です?」

「来られたらマズイことでも?」

「いや、ないです。ないですけど・・・!」

「・・・・けど?」

わかってないな・・・・・


 そう、僕らは未だキス止まりです。

健全な付き合いとか言うと笑われるでしょうがそこどまりなんです。

明日香さんがそういうことをしたいかどうかは別で、

僕は正直なところしたい・・・です。

好きな人を抱いた瞬間、やっぱり自分のものなんだなぁって思える。

そんな瞬間が好きなんですが、そういう雰囲気になってもキスで終わってしまうことが多いんですよね。


「なんでも、ないです」

「じゃあー!亮ちゃん家でご飯食べようねッ!

 私がご飯作るから。手作りだよぉ〜」

「・・・・それは素敵すぎる」

「じゃあ、明後日亮ちゃん駅まで来てね!」

「はいはい。わかりました。」

そう言って僕らは別れのキスをする。

彼女の住むアパートは大学から徒歩30分。

バスや電車に乗ればもっと早いのだが一緒に歩きたいというこれまた明日香さんの発言でこうしている。

「また、明日ね!」

「はい。明日」

手を振って別れる。

いつも振り向くと手を振り続けていてくれる彼女がいる。

僕が見えなくなるまで振っていてくれているようだ。

そんな些細なことが幸せで、僕は一人で笑ってしまう。

ニヤけた顔が怪しいと思われても仕方ないだろう。

そんな幸せを僕は手放したくないんだ。





「お邪魔しちゃいます!」


 とうとう明日香さんが来た。

「あの・・・片付けたつもりなんですけど、まだ汚い・・・です」

昨日はお互い講義が終わると別々に帰宅し、

プレゼントを買ったり僕は部屋の掃除をしていた。

ずっとしていたのだがきれいになんてならない。

「ほぇ。ぜんぜん汚くないよー」

「え、でも、そことか雑誌が・・・」

捨てればいいのだが新しく購入した漫画や雑誌、

お気に入りの漫画は捨てることが出来なかった。

本棚を購入しようと思ったくらいだ。床に積むのは・・・もうやめよう。


「これ、冷蔵庫いいかなぁ?」

明日香さんは買ってきた食材を僕に見せた。

僕は頷き冷蔵庫を開けて彼女から食材を受け取り一つ一つ入れていく。

それにしてもすごい量・・・だなぁ。

「何、作ってくれるんです?」

「え、内緒だよ。」

「は、はあ」

「食材見てわからないなら聞いてもわかりませ〜ん」

料理・・・しないもんなぁ・・・

「楽しみに・・してるからいいですよ。

 ってか、そろそろ聞いてもいいですか?」

彼女は僕の質問にキョトンとする。

「さっきから無視し続けてますけど、

 そのバッグはなんです?」


 そう、駅からずっと聞いているのだが無視続きだ。

彼女の手にはとても大きなバッグが握られていた。

それは僕が持ったのだがとても重かった。

「何って・・・・・おと、まりグッズ・・・?」


あー・・・お泊まりかぁーっておい!


「明日香さん・・・!それ、は本気です?冗談です?」

「・・・・・本気・・・だけど・・・だ、め?」

いやむしろ大歓迎ですがッッ

「ダメでは・・ないですけど、その・・・」

「・・ダメなら、ご飯食べたら帰るから・・!」

「いや、その。明日香さん・・・がいいなら、どう・・・ぞ。」

「・・・・・・帰る。」

明日香さんはそういうと玄関へスタスタ歩き始めた。

僕は何が起こったのかわからずあわてて彼女の手をつかんだ。


「どうして・・・!」

「だって、いつもそう!

 亮ちゃんはいつもいつも私に任せるんだもん!

 今回ここへ来るのもそう、帰りだってそう、

 毎月のお祝いだってそう!!!

 いつも『明日香さんがいいなら』とかそんなのばっかり!

 今だってそうじゃない!

 そんな反応見せられたら本当は嫌なんじゃないかとか思うの!

 不安になっちゃうの!

 私・・・は、亮ちゃんが大好き、で、そ、それに一緒に、いた、たいし。

 な、のに亮ちゃん、は私なんか・・・って、かん、がえちゃうの」


 明日香さんはそういうと泣き出した。

僕の心がミシっと音を立てた。

思い返せばいつも僕の答えは曖昧だった。

心の中ではすごく嬉しいのに、『明日香さんがいいなら』とか、『いいですよ』と言っている。

『いいですよ』は他の人から聞けば普通の返事なのだろう。僕だってそのつもりだった。

けれど彼女にはこう聞こえていたのかもしれない。

『別にいいですよ』そう思えたのかもしれない。

どうしてそんな返事してしまったのだろうか・・・・・





「亮・・・・・・ちゃん?」


僕は気づくと彼女をギュっと抱きしめていた。

彼女がこっちを見ようともがいていたがそんなのお構いなしに強く、強く抱きしめた。


「・・・・・めん・・・・」

「亮ちゃん・・・・?」

「・・・・・ごめん・・・・俺、ずっと明日香と居たいと思ってるし・・・

 変な気ばっかり・・・使ってた・・・・・ごめん」


彼女はゆっくりと僕の手を解き、こちらを向いた。

「私も、ごめん・・・ね?」

そして唇に柔らかいものが触れた。

彼女が僕に背伸びしてキスをしていた。僕はそのままそっと目を閉じた・・・




「・・・へへ」


彼女は唇と話して涙をぬぐった。

僕は反対側の涙をぬぐい、もう一度ギュっと抱きしめた。

「今夜・・・泊まってください・・・」

彼女は突然真っ赤な顔になり小さく頷いた。

その姿が可愛くて今度は僕からキスをする。彼女はそれに応えてくれてそれが幸せに感じる。

唇を離した後、彼女が照れ笑いをしながら

「・・・初めて明日香って呼んでくれたね。それに俺・・ってなんか初めて言ってるの聞いた」

そういえばいつも僕は彼女の前では『僕』って言ってたな・・・

「・・・なんか、気づいたらそう言ってました…」

「あぁ〜〜〜!!!!!!」

突然彼女が怒った顔をする。今度は何?!

「また敬語に戻ってるよね?!ね?!」

「・・・・・気にしないで・・・・ください」


 そう言った僕をクスリと笑い、そして彼女がギューっとしてくれた。

「亮ちゃん、大好きだよ」

「・・・僕もですよ」

もしかしたら、これ以上幸せな記念日はもう訪れないのかもしれない。






 夕飯は彼女いわく一番の得意料理、オムライスと野菜スープだった。

フライパンの上で卵を巻くのが上手く、僕はずっと横でかんしんしていた。

見た目だけでなく味も最高で、彼女はとても幸せそうに笑っていた。

お風呂を順番に入り、その後テレビを見ながらずっと話していた。


「あ。もう2時。」

「明日出かけるしもう寝ましょうか」

「・・・う、うん」

なんとなく緊張な空気になる。

僕はそっとベッドにあがり隣を空ける。

「ややややややっぱり、一緒のお布団だよね・・・?」

彼女が慌てて言う。電気がついていたら真っ赤なのがわかるだろう。

「あ、嫌っていうか、アレならここどうぞ、僕布団敷きます。」

「嫌・・・じゃない・・!えと、寝ます」

そしてチマチマと歩き僕の横へ体を滑り込ませる。

彼女に布団をかぶせてあげると彼女が小さな声で話しかけてくる。

「うで・・・枕頼んでもいい?」

僕はそのお願いの仕方が可愛くて仕方なく、今にも襲いそうなのをこらえながら

彼女の頭の下に腕を入れた。

彼女は嬉しそうにこっちを向いて寝転ぶ。


「なんか、亮ちゃんスッゴイ暖かい。」

「そうですか?」

「うん、すっごく・・あったかい・・・」

そうやって甘える彼女にキスをした。

彼女は僕をギュっとする。深い、深い、キスのあとついに・・・・・



ついに・・・・・





ついに・・・・?




「・・・・明日香さん?!」

どういうわけか彼女は眠っていた。

とても幸せそうな顔で・・・・


「し、信じられない・・・!

 ちょ・・っと、明日香さん?!」

彼女は起きずもう一度キスをしても反応をみせない。

本気寝・・・・・・か。

それでもこの幸せそうな顔が愛らしくて僕はそれから一時間ほどその寝顔を眺めていた。

気づいたら夢の中にいた・・・・




翌朝目覚めると隣に彼女の姿は無かった。

慌てて起き上がるとキッチンで鼻歌を歌いながら料理している彼女が目に入った。


「あ、おはよう!」

彼女はニコリと笑いテーブルに料理を運んだ。

「じゃーーん!

 明日香特製あさごはーん!」

僕はベッドからおりて机に座る。そして向かいに彼女が座ったのを確認していただきますを言って料理に手をつける。

「ん゛。おいしい」

「ほんと!?よかったぁ」

「へー。これ美味しいな。」

そう言って僕がいろいろと手をつけていると彼女がモジモジしだした。


「明日香さん、食事の前にトイレは・・・」

「ち、違う!」

「ん。そしたら何です?」

「えっと・・・私、ね。昨日、寝ちゃった・・・よね。」

「あぁ・・はい」

その後彼女は何度も謝ったわけだが、僕は別に良かった。

いや、よくないのだがしたいだげか気持ちでもないわけで・・・

「いいですよ、そのかわりまた来てくださいよ?・・・その、泊まりで。」

「へ。あ、はい」


 その後支度をして僕らは家を出た。

明日香さんの荷物はコインロッカーへ。

明日香さんからのプレゼントは手作り料理。

そして、僕からのプレゼントであるネックレスはちゃんと彼女の首元にあった。


 映画を見て、お茶をして食事をして・・・

思う存分楽しんだ後僕はまた駅まで彼女を送る。

「ねぇ、亮ちゃん・・明日も・・・お休みだよぉ?」

「え、そうですけど。」

「で、ね。提案があります!」

手を上げて背伸び。あぁ、可愛すぎる・・・・

「はい」

「もう1日・・・・だめ?」

「え、でも着替えなんかは?」

「その、昨日着たのとか・・?下着は、買ってくる!だめ・・・ですか」

そりゃ大歓迎だ。

「えっと、お願いします・・・・」





 家に戻ると彼女はそそくさとお風呂に入った。

僕もそれにつられてか彼女のあとにお風呂に入る。

昨日もそうだったのだが湯船につかると彼女がここにも入ってたんだなーっと

やらしい気分になる自分が恥ずかしい。

何、考えてるんだ僕・・・・


 お風呂から上がると彼女はテレビを見ている。

僕はその隣に座り一緒にテレビを見ていた。


「明日香さん、明日は学校でしょ。寝ましょうか」

時計は夜の11時を指している。

僕の家は大学が始まる1時間前には家を出ないと間に合わないのだ。

「そ、うね。」

彼女は昨日と同じく僕の腕枕で眠るようだ。

今日は疲れてるだろう、そう思いながら僕は目を閉じた。







・・・・ん?






今、唇に・・・・・

目を開けると明日香さんが僕にキスをしていた。


「あ、明日香さん!?」

「い・・・やですか?」

「嫌、大歓迎なんですけど・・・その・・・僕、たえれなくなりますよ」

「えええっそ、そそれって・・・」

「あのね、僕だって男・・・です。

 好きな人が隣で寝てて2日もたえるのでさえキツイものあるのにキスなんかされたら・・・」

彼女は僕の胸に顔をうずめ小さな声で

「いいよ」

と言った。

僕の心臓が高鳴るのがわかる。

そして彼女はまた真っ赤になっているのかいつもより熱が伝わるのが早い・・・

「明日香さん、それはどういう意味か、わかってますね?」

小さく頷く彼女。

僕はそっと彼女を僕の顔の位置まで持ち上げる。

そして目が合ったのだが彼女が目をそらした。


「目、逸らさないで下さい」

僕はそう言いながらキスをした。

深い、深いキスで、僕の手は自然と彼女の胸へと運ばれる。

僕が胸へ触れたとき彼女が甘い声を漏らし、そして遠慮がちに言った。


「りょ・・うちゃ・・・あ、のね、私・・・」

「はい」

「き、すはあるけど・・その、こういうの・・・は初めて・・・なの」

えええええッ

「と、いうことは僕が・・・・」

「や、優しくしてください・・・って言うんだっけ・・・」

あぁぁ、可愛すぎ。


「僕で、いいんですよね?」

「・・何度も言わせないで!!」

「いた・・・かったらごめんなさい」

「・・・・痛くないですように・・・」

「痛くならないよう、努力します」


そう言ってまたキスをする。



彼女のひとつ、ひとつの反応が可愛くて嬉しくて・・・・

そして、やっと繋がったとき、彼女の全てが手にはいった気分になる。

こんなに幸せに感じたのは初めてかもしれない。

心のそこから『好き』という言葉が湧き上がってきた・・・・


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