告白
「お母さん」
僕が立ち上がるのを見てお母さんはニッコリと微笑んだ。
「もう大丈夫?」
小さくだが頷いた。
お母さんは僕の両肩をぽんとたたいた。
「あなたなら大丈夫私たちより頼りになります」
僕はそれを素直に喜び今度は力強く頷いた。
手紙をぎゅっと握り締め
彼女のいる病室へとむかった。
「…わかってるのかよ?!」
ドア越しにだが声がだだ漏れだった。
僕はゆっくりとドアを開ける。
中には中尾と彼女が二人…
「わた…しだって…!」
「あんたが辛いのは俺も、アイツもわかってる!
けどな…あんたが笑わない分
あんた以上に苦しむのは、お…アイツなんだよ!」
「私以上の苦しみ?
何言ってるのよ…歩きづらくなって、髪の毛が抜けて……」
その言葉にショックを受ける。
二人の喧嘩の理由はなんとなくわかった。
でも…どうしてアイツ……
「馬鹿か!
あんたが辛いのを見てるアイツの気持ちもわからなくなったのか?
笑ってやってくれよ…頼むからアイツに
殺してだとか死にたいなんて言わないでくれよ……」
声が震えて中尾はそのまま崩れる。
彼女はベッドに座ったまま一筋の涙を流した。
「……すみません。
今日俺変だな。ごめんなさい。」
彼女はゆっくりと首を横に振る。
「中尾君…ありがとう」
この光景は見なかった方がいいのかもしれないと思ったため
中尾から身を隠した。
彼はエレベーターの中に姿を消した。
見守るだけが愛じゃない。
そんなことを学んだ気がした。
今度は僕の番だ。彼女の病室に入る。
「亮ちゃん……」
足音でバレタみたいだった。
「明日香」
「亮ちゃんさっきは…」
「僕はまだ就職もしてないし、バイトだって給料やすい
だから…ちゃんとした事はまだまだ先になるけれど…」
僕は生唾をのんだ。
うまく言葉がつづかないからだ。
「来週、その…記念日に…形だけですが
ウェディングドレス着てみませんか?」
僕の突然の言葉に彼女は言葉を失う。
「もう、死にたいなんて思わせません。
もう、好き"だった"なんて言わせない。
僕をあなたの全てにしてください。
そして…あなたは
僕の全てになってください。」
ポロっと彼女の瞳から涙が溢れだす。
僕はそれを拭ってやる。
彼女はその手に自分の手を重ねた。
「暖かい…」
「そうかな」
「うん…私の涙と重なってかもね」
「はは…」
彼女は手をぎゅっと握る。
「田村亮介さん。
私の全てになってください。
そして私をあなたの全てにしてください。」
僕は返事をするように彼女の頬に、唇にとキスをする。
二人で見つめ合い照れ笑う。
「ぁ。…それ」
彼女は手に握っていた手紙に目をやる。
「気にしない」
「ぁ…の…」
「気にしない」
もう一度キス…キス…キス…
「亮ちゃん…好き」
まだ僕らには乗り越えなければいけない壁はたくさんある。
また壁にぶつかっても今日の日のように乗り越えてやるだろう。