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初めての潜入任務・前編

まさかのほぼ一年ぶりの投稿。

結構ストレートなサブタイトルになってしまいましたが、その代わりに色々詰め込んでやっと本編スタートという感じになりました。

これからもマイペースに更新するので、あたたか~い目でお読みください。

ストラフォード邸。


この地区の近所一帯から見事に浮いてるほどの大豪邸であり、その土地も周りのそこそこ豪華な家たちから隔離されてゴルフコースを造れる広さを誇っている。


元々はアメリカに住む日本好き大富豪の別荘という形で扱われていたが、数年前からそのストラフォードの家系の長男が正式に日本に移りこんで住宅として住んでいるらしい。

ストラフォード家の主は世界中に金銭的な援助を拒まず、長男もその姿勢を日本で披露してくれ我々卑しい日本人は完全にこの豪邸の主をセレブ扱いしている。


巨大な財力に加えてその大きな器。そしてとどめに長男は超がつくほどの美形。テレビにもその端正な顔立ちを晒しており、今やかなりの年代の幅の女性から絶大な支持を受けている。

その有名人ぶりはその内、天皇の皇族と間違われてもおかしくない現状である。


しかしそのお高い人たちとは違い……流石アメリカの文化というべきか、ストラフォード邸では日本や海外の様々な富豪たちを集めて頻繁にパーティを広げている。そして何とそのイベントに一部のテレビ局の参加を許可しているのだ。

その一般の視聴者様たちに不快な思いをさせない配慮のためか、毎回ミュージシャンや今が旬のエンターテイナーを招待して独自のショーをさせている……いわばギリギリお祭り騒ぎと称しても間違いではない。


今度のゲストエンターテイナーは……忘れた。どっかで耳にしたと思うが。


そして今夜。俺はこのお祭りにちょいとお邪魔をさせてもらうことになっている。




もちろん、招待などされていない。






『ゆ、誘拐ですか?』


『そう。 誘拐 よ。場所はこの県の○○区のストラフォード邸。知ってるでしょ?』



誘拐。人さらい。アブダクション。

あの夜、目の前の美女は俺に突然訳の分からない要求をしたのだ。



『す、ストラフォード邸って……あの大富豪の!

 無茶ですよ!あんなSPがうじゃうじゃいる無敵要塞に……というかそもそも俺は今まで人さらいの経験なんて』


『あら。そんなの大して問題ないわよ。どんなプロのスパイでも最初は初めてじゃない』


『いやいやいや。そりゃそうでしょうけど……』



俺が抗議を続けようとすると、ジェーンさんは俺の瞳を深く覗き込むようにその美しい顔を至近距離に近づけた。

すっかり彼女のペースに乗せられた俺はそれに思わずひるむ。



『……いい?ユージ。

 アナタにはまだ気づいていないと思うけど、アナタにはとても強い 潜在能力 が眠っているの』


『潜在能力って……実は超能力を秘めているとかですか?』


『そんなチャチなもんじゃないわ。もっともっと精神の奥底にあるものよ。

 


 ……ねぇ。ユージは 引力 ってものを信じるかしら』



その物理学的な単語に俺は首をさらにかしげる。



『引力って……何かと何かは惹かれあうとかの意味で?』


『そう。分かりやすく言い換えれば 運命 ってものかしら?

 一つの事柄が次のへと連鎖的に起こることってよくあるじゃない。

 そして最初のキッカケはとてもとても小さいものでもあるの』


『小さいって……この誘拐がですか?充分すぎるほどデカすぎますよ。というか犯罪じゃないですか』


『あらあら“犯罪”なんて。そんなこともう承知してたと思ったわ。

 やっぱりアナタには直々に 補習授業 が必要かしら』



そういうとジェーンさんの目が一瞬光ったようなした。

それに本能的に反応した俺は危険を察知し、両手を上げた。



『い、いえ!ケッコウです!!

 何が何でもこの誘拐……成功させてみます!!』



俺は半ばテンパリ気味に敬礼するが、ジェーンさんはそれをおかしく小さく笑った。





『“成功させる”………じゃないわ。


 アナタは“成功する”のよ。それがアナタの運命なのだから』










(ぬゎ~んて。ズイブン電波な激励もらったけど……この マニュアル をさえ失くさなきゃ何とかなりそうだ)‘



そういいながらポケットから一枚の紙を取り出す。

これにはストラフォード邸の庭を含む豪邸の見取り図が描かれて、ご丁寧に下にはこの任務の段取りが一つ一つ描かれている。

そしてこの紙を添えて送られてきた荷物が2つあった。


一つ目はこの一式の黒の服。下は真っ黒で動きやすいタイトジーンズで上は同じ色のパーカー。この夜の時間帯に闇に紛れ込むのに完璧だが、電車で移動をしても人目にはただの中二病の服にしか見えない配慮だろうか。



そしてもう一つは……この新聞紙に包まれた謎のアイテム。丁寧に片手で持てる様なグリップの様な部分があり、その大きさには似合わず地味に重い。

……出来れば想像しているものと違うと嬉しいのだが、ジェーンさんが添えたマニュアルには



( 緊急時の時のみ使用許可を与える ……か。やっぱどっからどうみてもオハジキってヤツだよなぁ)



出来ればこんなブッソウなものの出番が回って来ないようにと願いつつ、マニュアルに書かれた段取りの1つ目を復習する。




<①ストラフォード邸への侵入は正面からはまず不可能である>


(当たり前だっつーの……)


< しかし夕刻からは庭のスプリンクラーが作動され、午後6時には 裏側の庭園 に起動される設定になっている。 >



と、記されている。

……正直言って、何故それが俺に侵入を許すことになるのかまったく分からない。それより気になるのはこの 注意事項 であった。



<注意事項:①誘拐はアジトに帰るまでが誘拐!現場に髪の毛一本も証拠を残してはならない! ②人目にゼッタイ見つかってはならない!自らしかける戦闘は以ての外!③ハゲには要注意!!>



……最後にものすごく気になるヤツが載っているが、俺はとりあえず時間を確認する。




「午後6時…か」



そうつぶやいて街中に立つ時計を見上げる。


この数十分間、辺りのビル街をテキトウに歩き回って時間をつぶしていたがまだ1時間半ほど暇がある。


マニュアルをオハジキさんが入っているパーカーの前ポケットに入れて、時間までこの心臓音を何とか落ち着かせなければならない。







「いやぁ!いつも通り楽しいパーティですなぁ、ストラフォード様!」


「お楽しみ頂けているようで光栄です、○○会長」



ワイングラスを片手に高笑いする肥満体型の中年男に、金髪の美青年は微笑む。



「しかしやはり、様々な他国に顔が利く貴公子は格が違うといいますか……こんな小さな国にわざわざ世界中の美女を呼び寄せるとは。羨ましいかぎりです、まったく!」


「なんと……“こんな小さな国”とはとんでもない。レディの皆様もこの美しい国を観光するために出向いてくださったのですよ。アナタがたが育み、成長させているこのニッポンにね」


「ハッハッハッハッ!これは相変わらず謙虚なお方だ!

 “顔が利く”と言ったのも冗談ではないのですよ。アナタがいるおかげで、この国の国際交流は活発に行われているのはご存知でしょう?アナタ……ルーカス・ストラフォード様は我々日本人が皆愛している 宝 だ!」


「それはそれはまた大げさな……私はただやりたいことをそのまま行っているだけですよ」


「それが出来ないことも我々日本人の欠点なのですよ!

 まったくアナタのような大物を身近に立たせて置きながら……気づけばここにいるかもしれない他国の美女に持って行かれてしまうのかもしれませんな」



会長の肩書きを持つ中年の男はフンと腰に手を当てるが、ストラフォードは手を上げて爽やかに笑う。



「フフフ。私が他国に場所を移す予定なんてありませんよ。

 女性なら……私が愛する一人だけで充分です」


「……はて?

 ストラフォード様に現在交際している相手はいましたか?」



首を傾げる中年男を青年は微笑みながら背を向けて場所を移し始める。



「交際相手……とは少し違いますね、残念ながら。


 何しろ相手は僕の厄介な…… 眠りから覚めた眠り姫 だから」



最後の部分を自分につぶやきながら、パーティ会場の窓の一つから向かい側の3階の部屋を静かに見上げた。









「……さぶっ!」



俺はマニュアル通りに裏側の庭園からの侵入すると、そこには殆ど警備が張られていなかった。まず最初の手順は難なく成功した……が、スプリンクラーが作動していたため体が見事にびしょ濡れになってしまった。少数が起動していたのなら避けるのは容易かったが、あの庭の広さを完全にあなどっていたおかげで上から下までぐっしょり水を被っている。警備が張られていなかったのもこのせいかと虚しく納得する。

しかし大丈夫だ。まだミスはおかしていない。

マニュアルに少しウォーター被害が被ったが、これから屋敷に水の跡を残すのは問題ではない。ただ髪の毛などが抜けないように気をつけながら誘拐を成功させれば、俺の完全勝利なのだから。


俺はマニュアルの紙を破かないよう慎重に絞ってから、ゆっくりと再び開いた。



<②庭園からの侵入に成功したらまず一息をつくこと。びしょ濡れのまま風邪をひくといけないので、仕事が終わったらしっかりと温かい風呂に入りなさい。>


(こんなトコロまで子供扱いをしないでほしいぜ……)



読み続ける。不思議なことにこれが最後の指令であった。



<③辿りついた場所から壁に沿って、身を屈めながら北のほうへ移動。最後から3番目の窓のあたりまで辿りついたら向かい側の棟を見上げ、3階の窓に注目。

午後10時半。その時刻ピッタリに明かりが点く部屋を確認して、そこへ向かいなさい。10時半以降はその棟の警備は手薄になるようになっている。しかし、庭園のようにはいかないので細心の注意をはらいながら侵入を心がけるように。>



俺はそれを読み終わると、これまでの手順から明らかに難易度が上がっていることを察して身を固める。

警備も流石に庭園の時と同じとはいかず、スプリンクラーが作動しているわけでもない。廊下にも明かりは点いているはずだし、この外で身を隠す黒い服も明るみでは容易く発見されてしまう。



(最悪……戦闘は避けられないか)



その事をアタマの中でグルグル復唱させながら、思わず新聞紙に包まれたオハジキさんを手で触れた。





「 そう。それで聞きましたかしら?今日のゲストイベントのことを 」




俺が背を任せた壁のほうから気品のある女性の声が漏れてきた。

盗み聞きの趣味はないが、出来るだけ情報を集めるために耳を澄ませた。



「もちろんですわ!今夜はあの念願の “白銀の魔術師様”のマジックショーが観られるのですもの!私はもう楽しみで楽しみで……執事に何度もイベントに間違いがないか確認させましたわ!昨晩もライブのビデオも何度も見直して……」


(ズイブンとミーハーな貴婦人だな……)



その黄色い声はやがて音量が小さくなり、場所を移したのかもう聞こえなくなった。



(“白銀の魔術師”ねぇ。確か昔から活躍してる手品師だっけな。

 俺はテレビでも見たことねーけど)



しかし学校で聞いた口コミによるとその手品師は白いスーツに身を包み、更に白い仮面で顔を隠しながらとんでもないマジックを披露するキザな野郎らしい。そのお約束のシルクハットからハトを出す基本的な手品から始め、瞬間移動のマジックやらスタジオのひな壇をポルターガイストの如く浮かばせたり、挙句の果て空中から大型トラックを出現させて落としたこともあると聞いた。

ズイブンと派手な手品をするらしいが……



(この屋敷を崩壊させるようなことは勘弁してくれよ……少なくとも俺がいる間は)



そう小さく祈っている間に時間は10時29分。指示通りに向かいの棟へ見上げる。




そして午後10時半。3階の一つの部屋に明かりが点いた。




「3階の北の端から5番目の部屋…!」



そう小さく復唱しながら俺は静かに目標の部屋へ向かう。








「ルーカス様……少し」



ストラフォードがパーティの出席者たちに挨拶を続けているとき、初老を迎えつつも凛とした男性の召使いが彼の後ろに歩み寄る。



「何だい?また 彼女 かい?」


「い、いえ!そうではないのですが……」



召使いは周りの者たちが聞こえないように注意をはらいながら、更に小さい声で続けた。



「 何者かが裏から侵入したようです…… 」


「ほう……」



ストラフォードは動揺を見せる素振りを一瞬も現さず、召使いに続けさせる。

                                                           


「裏の庭園付近の棟の下に不自然な水溜りがあったという報告があります」


「水溜り?野良猫がスプリンクラーを浴びて、そこで身を乾かしていたんじゃないのかい?」


「い、いえ。小動物にしてはその範囲は大きく……足跡のようなものが転々と残されていました」


「足跡か……」


「警備を強化させましょうか?それともそのまま捜索させましょうか?」



ストラフォードはゆっくりと落ち着いた表情で首を振った。



「いや。警備はそのままで良い。

 そのネズミくんをしばらく泳がせてみよう」


「し……しかし!あの 少女 が……」


「 “良い”と言っているだろう 」



青年が口調にアクセントを付け加えると召使いは大きく怯んだ。



「し、失礼しました。それでは警備はそのままで……」


「うん。しかし、代わりに あの人 を送っておこうか」



召使いはその言葉を聞いて大きく目を開いた。



「か、彼を送るのですか?しかし……もうすぐ彼の出番が」


「構わない。埋め合わせは僕がテキトウに済ませておくよ。

 時間が押している。さぁ、早く伝言を伝えて」



最初は戸惑っていた召使いは、直ぐに一礼をして早歩きでパーティ会場の裏の扉へと飛び出していった。



「……さて。どこかのネズミくん。

 君の 狙い はちゃんと分かっているよ」



ストラフォードは優しく笑みを浮かべながら向こうの棟の3階へと目を上げた。



「しかし、残念だ。


 その部屋ではないのだよ。彼女が居る場所は」









無人の廊下。


しかし警備はマニュアルの通り手薄であったが建物内の明かりは点いたままであり、その緊張に新聞紙を来るんだアイテムを手で強く握り締める。



(さぁ……これで最後の角のはずだ)



廊下のT字の場所の角に屈みこみ、背中を壁にあわせた。

そのまま息をつく暇を作らず、右ポケットから電源を切っている自分の携帯電話を取り出す。


それをゆっくりと自分の左前のほうへかざす。

自分の目から見える画面の反射を目的の廊下の全体を映し出すように角度を調整する。この手鏡を使うような作業はこの建物の中で既に数回繰り返していて、その手際に狂いはない。


前に出した携帯の画面には再び無人の廊下が映し出されていた。



「オールクリア……」



そう自分につぶやきながら、早足で目的の部屋の前へと辿りつく。


部屋の位置を間違えていないことを確認してから、俺はもちろんノックなどしないでドアノブをまわした。





─ ガタッ ─




俺が音を立ててまわしたノブの後の部屋の中から物音が聞こえる。



「!」(誰か居るんだな。この部屋の中に)



それをしっかりと確認して、躊躇もしないでそのドアを開けた。






その中は大きなマスターベッドを中心にした、西洋風の部屋であった。

綺麗に整ったマットレスとシーツ。立派なナイトランプに明るい月明かりを照らしている大きな窓。その質素な部屋でも目に移りこんでくるものが3つもあった。


一つは天井の大きなシャンデリア。こんなものが落ちてくると考えるとロクに眠れなさそうだ。

二つ目はナイトランプの横に座る熊のぬいぐるみ。何見てんだコラ。




そして最後に目の前。月明かりに美しく照らされた少女が立っていた。



「だ、誰……」



その少女は怯えきった声色で俺に尋ねた。


それと同時に、俺は新聞紙に包まったものを更に力強く握りしめる。




「……ただの人攫いさ。


 そういうアンタは……この屋敷の メイド だな?」



俺の指摘に少女は頷かなかった。しかし彼女の格好を見ればそれは答えるまでもないと判断したのだろう。

やはり女性の召使いというのは伝統的な服装で黒いシンプルなワンピースの上に白いエプロン、そしてアクセサリーに白いフリルのカチューシャをつけている。おまけにこの少女はそのセミショートの黒髪がよく似合う、非常に可愛らしい容姿をしていた。



「ひ……人攫いって……。

 こ、ここには誰もいません!私が警備を呼ぶ前にどうかお引取り下さい!」


「誰もいない……って。アンタがいるじゃねーか。

 何で部屋の明かりを消してここに棒立ちしてんだ?メイドならとっくに別の部屋の掃除で忙しいだろ」



俺の冷静な指摘にメイド少女はマユを潜めて怯んだ。

確かにこの部屋の明かりが点いた時は10分前……それを点けた犯人がメイドならばとっくに次の部屋に進んでいるハズだ。


俺は自分が質問したことを考え直し、自分で答えを推理することにした。



「……まぁ、俺がダンマリ決め込む必要ないしな。

 俺は10時半きっかりにこの部屋に明かりが点くことのを見張れと指示された。この屋敷を潜入してこの紙に出された指令はここまでだ。俺の目的のオンナってのがどこの誰かも教えてもらえなかったんだよ」



俺はしっかりと説明したつもりだが、メイドは警戒態勢を取っていないようであった。



「そ、そんなことは知りません。

 私は毎晩決まったこの時間にこのお部屋をお掃除しているだけです……」


「異議あり!

 なら何で明かりを消す必要があるんだ?まさか今日の月に見とれてたとかそんなこと言うんじゃないだろーな?」



俺の反論にメイドは声を上げようとするが、自分でそれをとっさに制した。



「……と、とりあえずそうですよ。

 今日の有明月は綺麗ですね……」


「とりあえずって……」

(この女……絶対なんか隠してやがるな)



必死に窓の外の月にウンウンと頷くメイドに頭を悩ませる暇なんてない。

俺は単刀直入に聞くことにした。



「まぁいいや。

 俺はとりあえず人攫いだ。俺は 女を一人 攫えと言われてんだが……そういうヤツに心当たりはあるか?」



……少し直球過ぎたような気がするが、メイド少女は俺のほうへとゆっくり振り向いてくれた。


しかし。その月明かりを背にした顔は少し寂しげに見えた。



「……います。

 いや、正確にはいました。 この部屋 に」



やっと口を開いたかと思えば、彼女は意味の分からないことを口走る。



「は、はぁ?それってどういう……」








「何で……… 何で あの人 じゃなく アナタ がここに………」






「 おっと。 ここにいましたか、ネズミくんは 」






俺の背後に謎の声が囁き、心臓が一気に飛び上がる。


声も上げそうになるが俺は咄嗟にメイドの方向に走って、間合いを取った。





急いで振り返れば、そこには月明かりに眩しいほど照らされた長身の男が立っていた。




この明かりを反射するような真っ白なスーツ。白いマントに白いシルクハット。


そしてその素性すべてを隠すような奇妙な白い仮面。




その様子は……明らかに仲良くしにきたようではなかった。


穏やかな挨拶の代わりに発せられていたのは……俺の肌を凍結させるような 殺気 。



「おや……時にそこのメイドさん。

 召使いの方々は全員会場のほうへお手伝いしに行っていると思っていたのですが?」


「あ……あっ。あ………アナタだったのですか。

 ストラフォード様が今日のために雇った 刺客 とは……!」



俺は話にまったくついていけていないが、俺の後ろのメイドは今にも失神しそうな声で目の前の怪人に尋ねた。


雇った? 刺客? 今日のため?




細かい詳細はまったく分からないが、二つだけハッキリしていることがある。





「とりあえず……はじめまして。

 今時、世間を騒がしている世紀のマジシャン。

 通称、“白銀の魔術師”と申します。少し年寄りくさい名前ですが」



目の前の白い刺客はその渋みのかかった声色で俺の予想を次々的中させにきた。






「そして今宵……… アナタが最後に見るマジックショー をお届けに来ました。

 準備はいいですね、小童?」


このマジシャン、どこかの平成のルパンとかぶっていますよね。

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