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少年と

やたらと中二病くさいサブタイトルですが、ちょくちょくと明るめの雰囲気を残して書いていこうと思います。これから登場人物がやらかすことは尋常ではありませんが(汗

─「死のう」とは何か違う。─

─「死んでみたい」という感じのほうが合っているのかもしれない。─




「ゴルァ!!!どこまで逃げる気だッ!!!ジョン!!!」


「待ちやがれ、このクソ野郎!!!」



前へ前へと足を伸ばして、後ろの3匹をグングン引き離す。

距離はどんどん開いていくが……ハッキリ言ってしまおう──── 俺は今、ピンチだ。



(ウカツだったな……。まさか仲間がいたとは)



唯一の手持ちのバッグを手で振りまわしながらため息をつく。


俺は夜道を駆け抜け、ビルの角を曲がった所に逃げ込む。

そこに捨てられていたダンボールの畳みをしゃがみ込んで、自分の前に覆わせる。


俺が隠れていることも気づかずに、3匹のろくでなし共は俺の前を荒々しく横切っていった。



(一人一人、殴り倒しても良かったんだけど……フェアなタイマン勝負をさせてくれるとは思わねーしな)



通り過ぎて行った追っ手たちの気配が感じられなくなるのを確認した後、俺は薄汚い箱を投げ捨てる。

しかし立ち上がってジーンズから汚れを祓った時、このビルの間にコツッコツッと足音が響いた。


その音がする方向へすかさず顔を向けた。



「誰だ?」



足音は鳴り止まない。この音の高さから推理をすれば、履いているのはハイヒール。



(─── 女か)



その簡単な答えに辿り着いたの同時に、ビルの一室からのぞく明かりがその音の正体を照らし出す。




「………ウフフ。いやだわ。

 私を不審者扱いするなんて」



目の前の暗闇から姿を現したのは推察どおり、女性だった。


しかしこの日本の街で頻繁に見かけるようなのではなく、美しいロングの茶髪を凛々しくなびかせた外国人だ。

その姿は黒いフォーマルパンツスーツにハイヒール。おまけに外国人特有の長身がその彫刻のような顔立ちをより一層美しく、輝かせた。


その女神のような年上の女性を見て俺は思わずフリーズしてしまった。

足は動かない。ハッキリと意識できるのは彼女を見ることと心臓がバックンバックンしていること。



(………あれ?ど、どうしたんだ俺。

 何でここで固まるんだ?)



その様子を窺った女性はくすくすと笑った。



「……あらやだ。もしかして見とれてるのかしら?」


「み、みみみみみみみ見とれてる!?

 そ……そんなんじゃねーっての!何言ってんだ、このアマ!!」



俺は次々と威嚇するように暴言を投げるが、女性はそれをかわすようにこちらへ近づいてきた。


彼女は俺の目の前で立ち止まる。

身長が俺より高いせいで少し見下ろされるカタチになっていた。

彼女のブルーの目の視線が俺の目に突き刺さるが、こちらはちょうど顔の前にあるモノをいち男児として本能的に見てしまう。



(や、やっぱりデカイ……。縦も前も)



女性はその様子は鼻をムフゥと鳴らしながら、何か納得をするように頷いた。



「ウンウン。健康的な反応ねぇ。

 外見からすると……中学生かしら?」


「なっ……!?

 こ、高校生だ!バカにすんな!」


「あらあらそうなの。ゴメンね。

 ブスッとしてる割にはカワイイ顔してたから」



(っ─~!!?

 か、カワイイ!!?)




あまりにも恥ずかしい言葉に顔が真っ赤になる。


そうアタフタしている間、彼女は前のめりになり俺の顔に覗き込む。……今は遠慮して欲しいのだが。



「ねぇ、ぼく。名前は?」




「えっ……?

 

 ゆ、ゆうじ。亀有雄治<かめあり ゆうじ>。」





そう聞くと女性は凛々しく笑った。





「………ねぇ、ユージくん。

 





 今からお姉さんとイイコトしない?」












「は…………




 ハァアアアアああぁぁアあァ────~~~~ッッ!!!????」






絶叫。




俺は今宵、入り込む隙間はビルの間だけではないようだ。





─────







俺が年上の美人に誘われたのはこの夜の街に溶け込んでいる、ネオンライトの照明がまぶしい一つの店であった。

いつもは目障りに覚えるこの光も、今夜はやけに俺の中のナニかを上昇させる。


自動ドアを超え、その中でまず目に飛び込んだのは多数のモニター。

それぞれに映し出されているのは一つ一つの別世界であった。

男の俺はしばらく眠っていた奇妙な冒険心をいつの間にか呼び覚ましている。



そんな興奮の昂ぶりをどうにかしようとしている時、



モニターの一つから音声が流れた。
















「昇竜拳ッ!」










(───── ってゲーセンかよッ)



「も~。何まだブスっとしてるのよ。

 もしかして何かヘンなこと期待してたのかしら?」


「別にそんなことないですよ………」



ペースに乗せられてから俺は敬語で話している。

そんな彼女は子供のようにクレーンゲームやらリズムゲームなど、目を輝かせながら見回っていた。



「何かやけにウキウキしてますね。日本のゲーセンは初めてですか?」


「んー?いや、前にも何度か一人で来たことあるわよ。

 でも毎回くる度に周りがジロジロ見てくるのよねー。

 美人ってのも楽じゃないわぁ」


(いや、いい大人が一人でゲーセンで遊んでるのが痛々しいんだろ……)



俺が事実であろうことに考えついた時、彼女は「あっ」と声を上げて一つのシューティングゲームの前へ駆け寄っていく。



「あったあった!

 私このゾンビゲームが一番好きなのよね」



自分の中で知らんと呟きながら、俺は彼女のプレイの様子を後ろから窺うとした。


地味に下手なのか上手いのか分からない英語のアナウンスがゲームから鳴り、彼女は手に持ったプラスチックの銃を画面に目掛けてゾンビたちをどんどん冥府へ駆逐していく。



「………ところでユージくん」


「呼び捨てでいいです」



前の画面でスプラッタショーを繰り広げているにも構わず、彼女が俺に話しかけてきた。



「………ユージ。




 あなた、もしかして家出中かしら?」





「…………そうですけど」




ゲーム内でゾンビの脳みそがぶちまけるの見ながら年上の美人は愉快に笑う。




「そうだと思ったのよ。学生が夜に歩くには荷物が多すぎるし。

 塾帰りだとしてもスポーツバッグなんか持ち歩かないわよね」


「……はい。中に着替えが2式ほど入ってます」



俺がそう言い終えるのと同時に彼女が1ステージをクリアしていた。


画面を良く見れば、そのステージのハイスコアを叩き出している。



(うめぇな………)



虚しいゲーム力の対抗心を燃やすことなく、彼女が自分の名前を入力するのを見つめた。






JANE






その英文字が4つ画面の中央に並んだ。






「……ジェーンって名前なんですか?」


「そうよ。

 ジェーン・ドゥ。いい名前でしょ」



………良く似合っている名前だと思うが、何故か騙されている感が自分の中でモヤモヤと広がる。


そんな腑に落ちない気分を味わっている時、彼女が俺のほうへプラスチックの銃を差し出してきた。








「ハイ♪

 あなたの番よ」



突然のバトンタッチに思わず戸惑う。



「えっ……?

 い、いいですよ。俺は」



俺は断るが、呆れたような表情を見せ付けられた。



「まったく、ぬぅわ~に遠慮してるのかしら。

 カッコいいところをこんなキレーなお姉さんに見せるチャンスよ?」



彼女はそう凛々しく笑いながら俺の手に銃を渡す。






「それに……アナタ、さっきも別のゲームセンターで同じゲームしてたじゃない」


「えっ!?

 み、見てたんですか!?そんな前から!?」


「まぁ、”見てた”っていうより”見かけた”って感じかしら?




 アンタ、あの時はカッコよかったわ。


 だから………もう一度見せて?」





銃を取った手に彼女の手が覆う。







─── ドクンッ ───







自分の中で何かが跳ねた。



(な、何だ今の……。

 ………まさか)




そんな胸の不思議な感覚を抑えつつ、俺は銃を確かにと受け取る。









「分かりました。

 カッコいいところ、見せてやりますよ」






俺も愉快に笑みを浮かべてゲーム台のほうへ足を運んだ。









……正直に言ってしまおう。

俺はこの女性を好きになってしまった。


こんなクソつまらない人生を15年も歩いてしまってたが、このような感情は今まで自分の中で浮かんだ例がない。


何で好きになったんだって?そんなこと俺が聞きたいぐらいだ。





お袋がいなくなって5年。親父はダラダラと会社に通い、帰ってくれば酒にひたすら溺れれる。俺のこと何か気に止めやしない。

学校にも友人が数少なくはいるが、アイツらはアイツらで自分自身に忙しい。特に高校生になれば非情にもツルむ友達を選ぶ。何の取り柄も無い俺はいつの間にか蚊帳の外だ。


趣味といえば地味な筋トレとゲーセンに通うくらい。

シューティングの腕が無駄に上がり他人のハイスコアを超えてしまえば、今日のようにロクでもない連中に絡まれる。

特に今日に関しては家出中だというのに、いつもの習慣のせいでなけなしの金を無駄遣いしてしまった。そしていつものように絡まれる。

家を出ているから簡単に怪我をする訳にはいかず、尻尾を巻いて逃げていたという訳だ。

……それにぶっ倒れるのを覚悟して家出をしたが、あんな奴らに袋叩きにあって死ぬなんてゴメンこうむる。



だけどそんな情けない俺をこの女性は気に入ってくれた。嬉しくない訳がない。

お望みどおりカッコいいトコロを見せてやろう。





受け取った銃を片手に……そして台に置いてあるもう一つの銃を俺は空いてる手で取り、


2丁拳銃の構えを取った。





(このゲーセンの「ジョン・ウー」の実力………しっかり見てろよ!)







─────







(……やっぱり大正解だったわ)



私は目の前の少年が画面に向かって発砲する姿を見て微笑んだ。

別のゲーセンで見かけた姿が今、私の前で蘇っている。


……流石に2丁拳銃は時代遅れだと思うが関係ない。




今、このユージという少年に浮かび上がっている 顔 。




ゲーム内といえど、自分が撃ちたいと思う相手に撃っている快感に浸っている純粋な表情。ごく普通の一般人でも同じようなものを作るが、この子は違う。

さっき不良から逃げていたのは少しどうかと思ったが、あの判断力の速さを見れば話も違う。



(この子になら………きっと出来るわ)








少年は息をついて2丁のプラスチック銃を台に置いた。

ゲーム画面には見事に新ハイスコアが更新されている。



「どうですか、ジェーンさん!!ハイスコアですよ!!」



彼は目を輝かせながら私に報告する。

見れば分かると言ってやってもいいが、彼の幼さが残る顔に私は和んでしまう。



「ウフフ、そうね。本当にカッコよかったわ、ユージ」



私はテヘヘとかわいく笑うユージへゆっくりと近づき、その顔に覗き込む。

それに反応するかのように、彼の顔はさらに赤くなる。

きっとこうされるのが弱いのだろう。



「さて。もういい加減遅いし、お開きにしましょうね」


「ウン……。そうですね。

 今日は本当に楽しかったです。ありがとうございます」


「いやいや、良いのよ。誘ったのは私なんだし




 ……でも」




彼の方に優しく手をかける。


今日、彼に近づいた本当の目的を果たすために。







「もう一つ、お姉さんのお願い聞いてくれる?」


「えっ?は、はい!

 ぜひ何でもおっしゃってください!」



元気な返事に私はまた微笑んでしまう。



「分かったわ。ありがとう。

 して欲しいことがあって……… おつかい を頼みたいの」



興奮していた少年の頭に「?」が浮かび出る。



「お、おつかいですか……?」


「そう。

 女の子 を一人ね」


「あっ、女の子一人 ですね!

 分かりまし…………












 ─────     えっ?」







ボーイズワールド。

少年の時は止まる。




しかし私はそれにまったく構わず要求をハッキリと伝える。







「ねぇ、ユージ。



 アナタに 誘拐 を頼みたいの」




主人公のユージは流暢に外国人と話しているわけですが、この小説はあえて言語にはこだわりを入れません。

これからも異国のキャラ同士が喋っても言葉の壁は一切ないと思ってください。

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