紅の月1
※王家の争いが始まってから、10年後の事。
懐かしい夢を見た。
「おはよーノエル」
「おはよう、アオイ」
ノエルと呼ばれた女の子は10歳にしては容姿は整っており一つ一つの動作にも微かながらの気品があった。髪は父親譲りの見事な紅の髪をし瞳は翡翠色の聡明そうな子だった。
細いその腰には不釣り合いな剣が下げられていた
一方、アオイと呼ばれた中性的な顔をしている男の子は少しおとなしそうな雰囲気だった。髪は青っぽい黒色という珍しい色をしており、さらにこの国ではかなり珍しい瞳の天色をしていた。その髪を短く切ってあるが故に男の子ということがわかるような子だった
「今日は何して遊ぶ?」
「公園いこうよ。ノエル」
「いいよ」
夢の中の俺は幼いノエルと共に公園に行った
そこに居たのは不運にもいじめっ子たちだった
「おーアオイちゃんよぉ。今日も女らしくノエルと遊んでんのか?」
「アオイ・・・あんなやつ気にしなくて良いから」
10歳と言えども、ノエルは周囲より飛び抜けて可愛かった
この年でもきっと彼らにも独占欲というものがあり、ノエルが欲しかったという事とが今の年になってわかる。きっと自分たちは彼女に近づけないのに俺が側に居るのが気にいらなかったんだろう。
いじめっ子が俺たちの前に立ちふさがった。
側を通ろうとしたら腕をつかまれ、痛みで顔を歪めた
「勝手に行こうとすんなよ」
幼い頃の俺はただの無力なガキで体格の良い、いじめっ子には勝てなかった
「痛っ」
「アオイ!?」
「ノエル。こんな、へなちょこより俺の方がかっこよくて、つよいだろ?だからオレと付き合えよ」
そう、このいじめっ子は完全にノエルが欲しくてたまらないらしい。
何回か告白しているらしいが、全部「無理」と切り捨てているらしい
「何が嫌なんだよ!?こんなやつより数倍オレの方が強いだろ?」
この年の男はある意味バカなので強さが男のステータスみたいなことを考えている。だから俺より強いのになんでこんなやつと一緒に居るのかがご不満らしい
「くそっ!!こんなやつ!!」
バンッ
俺は地面に放り出された
次にいじめっ子が狙ったのはノエルだった。彼女の細い腕をヤツが思いっきり持った
「痛い!離して!」
その瞬間をよく俺は覚えている。
プツンと頭の中で何かが切れる感覚。次の瞬間俺はヤツに殴りかかっていた
「ノエルを離せ!!」
「なんだ、この女野郎!!」
そこから一方的にやられ、ボロボロになって崩れ落ちた
「ハァハァ・・・」
「うぅ・・・」
ノエルの方を見ると泣いている。あのときの俺が泣かしてしまった幼いノエル。
いじめっ子は一方的にアオイを殴ったことで怒りは治まったらしく、帰っていた
「ごめんね、ノエル」
確か、自分がボロボロよりもノエルが泣いていた事の方が痛かった気がする
「アオイのばか・・・ごめん・・・私・・・アオイの事が好きなのってダメなのかな・・・?」
幼いけど告白されたってのはわかった。
「ノエル・・・」
「アオイ・・・とりあえず、家に帰ってケガの手当しよ?私・・・がするから」
「うん・・・ありがとう。ノエル」
そこからノエルに支えられて家に帰った
「ノエル。僕も・・・君が好きだよ」
本当にあのときの自分はマセガキだと思う。
でも、ノエルが泣いていた顔から少し笑顔になった顔を見たら嬉しくなった
「本当に?」
「うん。クレナイに誓って」
「ありがとう。アオイ。私もアオイの事が大好きだよ。だからーーーー私の本当の名前を教えてあげる。私の名前はーーーーーーーーー」
そこで夢は途絶えた