無色の月
廊下でうろうろと、さっきから歩き回っている紅色の髪をした男が言った。その声には不安と焦りが色濃くなって出ていた。
「まだか!まだ産まれんのか!」
ここは、クレナイ《紅》国。今、まさに新しい生命が産まれようとしている。
さっきから子を産んでいる最中の妻と産まれようとしている子を心配するあまり歩き回って、1時間が経過しようとしていた
そのうろうろとしている見事な紅色の髪を持つ男こそ、この国の王だった
「王よ、落ち着いてください」
王の近衛騎士・スティが言った。
「あなたがどっしりと構えてなければ、この国の民はどうなるのです?王妃様と御子が気になるのはわかります。しかしもう少し落ち着いてください」
「おお・・・そうだな・・・スティ、すまない」
そういって王は椅子に座った
スティと呼ばれた男の近衛兵が少し落ち着いた様子の王を見て安堵の息を吐いた
そのときーーーーー
「おぎゃぁ、おぎゃぁ」
新しい生命の声がした
「産まれたのか!?」
ガタンッと音を立て妻の元へ王は走っていった
「王よ、おめでとうございます。元気な女の子です。母子ともに健康で安産でした」
この国一番の医師が言った
「あなた・・・」
ベットに横たわる女性が言った。
「私たちの子が・・・・産まれました・・・」
「そうだな。よく頑張った」
王は妻をぎゅっと抱きしめた
「名前を・・・この子に付けてもいいでしょうか?」
「あぁ。つけてやってくれ」
「ありがとうございます、あなた・・。この子の名前は・・・ノエフィリア。ノエフィリア・クレナイ」
「ノエフィリアか。良い名だな。」
幸せな空気が流れているその場に似合わない声が響いた。
「王!大変です!弟王が攻めてきました!」
「なんだと!?あいつが!?」
・・・この子と妻だけでも何とかしないと・・・
「あなた」
「なんだ?」
「私はなにがあろうとあなたの側にいます。」
「しかし、ノエフィリアが生まれた今、必要なのは母、」
「いいえ、私はどれだけ危険だろうとあなたの隣にいます」
「・・・。王よ。ひとつ提案があります」
「・・・なんだスティ」
「城下町にノエフィリア様を隠すのです。混乱が収まったらノエシリア様を迎えに行くというのはそうかと」
「・・・。それでお願いします。・・・あなたは・・どうでしょうか」
「・・・・。仕方ない・・・生きていれば必ず会えるだろう。今は娘のためにこの反乱をとどめることにしよう。スティ。ノエフィリアを頼む。」
「了解いたしました」
赤子のノエシリアは城下町で、決定した日だった