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現代幽荘物語  作者: かずや
過去から未来へ

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未来幽荘物語の始まり


 縁は妻を伴い幽荘を訪れた。

 三年ぶりの鎮魂祭参加には訳があった。

「皆に挨拶していこうか」

 縁は妻と一緒に鎮魂祭準備をする、幽荘住人達と挨拶をしていく。


「ほれ、持っていけ。特別扱いじゃ」

 狐音に菊の花束を渡された。

「狐音さん……」

「儂等は毎日行けるが、お主らはそうもいかん。それも人じゃ、鎮魂の儀までに済ませてこい」

「はい」


 幽荘から少し歩いて小さく見える程度の小高い場所、そこに一つの墓石がある。

 幽荘を遠くに見られて、以前は村だった辺り。遥か昔村長の家だった所らしい。


 (幽導村乃墓)


 墓石にはそう刻まれている、側面にはタカ、隆二、里子と。

 タカは二十年くらい前に天寿を全うした。

 戦争孤児で流れ着いた幽荘に生き、意図せず神の影響を受けたが見事に人として寿命を迎えたのだ。

 遺言には幽荘が見える場所で眠りたいとあり、この場所に墓が建った。

 そしてそれを聞いた生前の両親も縁に伝えていた。

「墓はあそこが良い、俺達の生まれた幽導村でな」

 そこから数年で隆二が亡くなり、後を追うよう翌年里子が亡くなった。

 それが三年前、二人とも大往生だった。

 葬儀や喪に服す期間の関係で、今日やっと鎮魂祭に参加する事になったのだ。

 この時点で縁も六十五歳、世間的にはまだ時間はあるが人生的には折り返している。

 一般的な人間としては普通に過ごせている。

「あなた、見て」

 妻が墓石横を指す。

「……なんだ、今日来るの知ってたのか?」

 墓石の側で綺麗な花が三輪咲いている、縁は笑い摘まずに置いといた。


「じゃあ、また来るよタカさん、父さん母さん」


 ——「鎮魂の儀を始める」

 幽荘に戻った縁夫妻は離れて儀式を見守る。

 狐音から綺麗な金色の尻尾が現れ、全身に淡い光を纏わせる。

 狐音からユウメに、スズメに、ヘビメに、ネコメにと光が伝わり全員が神聖な光を放つ。

 側でみている妻とトラメも息を飲む。

 光は地面に移り儀式の場所そのものが光に包まれ、地面に溶けるよう収まっていった……


「……これにて鎮魂の儀を終了とする」

 狐音は静かに息を吐き一礼、皆も倣い一礼を行う。


 狐音達は毎年こうしてお盆に儀式を行ってくれている。

 仕事の都合がある時も優先して毎年だ。

 元々は幽導村地域の孤児の為だった、今はそこにタカや両親も加わり命を全うした人へも優しく慰霊されている。

 (親父達は幸せだろうな、捨てたとは言え生まれ故郷でずっと見てくれた神がこの先まで見てくれるなんて)

 世の中は大きく早く変わる、それでも大事に残されている物がある。守るのは人じゃないのかも知れないが忘れちゃいけない。

 繋ぐのは人、もしかしたら見てるだけの神様達が気まぐれを起こすかもしれない。

 それが何百、何千年の中の一瞬かもしれない。

 その時に恥じない伝承をしていたい。

 縁は心の底から思った。

 幽荘は続く、縁には見れて後三十年ぐらいだろう。

 幽荘の住人、神達からすれば縁と過ごした七十年ぐらいの付き合いは一時の時間感覚。

 人と神は生きる時間が違う、だからこそ幽荘を通じて同じ時を経たのだ。


「おーい、縁や。呑もうぞ」

「車だっての狐音さん」

「泊まれば良いじゃないかのう」

「あなた、私は構わないわよ?」

「……全く、神様のマイペースは変わらないな」


 ——現代幽荘物語 完

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