幽導孤児院とは
片付けも終え、孤児院の皆と別れの時がきた。
皆別れを惜しむように玄関に詰めかけ、泣いている子も何人か居る。
「あ!そうですわ、管理人さんだけタイミング無かったからこちらで……」
カチカチとセルフィー棒をスマホに取り付け、ユウメにギュッと腕を組まれる。
孤児院の皆とユウメと縁、皆が入った一枚を写真に残す。
「うふふ!良い写真ですわよ!データは孤児院にも送りますからね〜」
わーい!と歓喜する子供達を優しく見守る院長と職員達。
「縁兄ちゃん」
ふと袖を引っ張ったのはトラメだった。
「また来る?」
不安気な目をしながら言うトラメの頭を撫で、縁は言う。
「また来るよ」
嬉しそうな顔に変わり走って行ったトラメは遠くから大きなバイバイをしている。
縁も振り返し、軽トラに乗る。シートベルトをしながらユウメが言った。
「トラちゃんはいつか幽荘に来るかもですね〜」
「へ?」
「女の勘ですよ〜」
なんか当たりそうで怖いと縁は思ったが、実際訪れたのは孤児院である。
言わば、何かしらの理由で子供だけになってしまった子の集まる場所だ。
皆明るく、今日のファッションショーを非常に楽しみにしていたのが伝わった。そして最大限楽しんだ事も。
それはあの子達の寂しさの反動があるのかも知れない。
軽トラを動かし帰路に着く間、ユウメは語り出す。
「あそこは名前の通り幽荘のある地域、幽導村と関わり深くて幽荘も関わりがあります」
「それは何となくですが感じてました」
「幸せかどうかは抜きにして、あの孤児院は恵まれています。今日ショー観に来た地域住民の方々からも支援を受けれていますし、遥か昔からこの地域の子供の拠り所になっていました」
確かに一孤児院のイベントにしては盛大であり、設備も充実。孤児院自体しっかり運営されてる印象だ。
「支援が手厚い、つまり子を手放す事がしやすい場所にもなってしまうのです」
縁は言葉を失う、何かしらの理由があり存命だが親が子を孤児院に預けやすい面に気付いたからだ。
「両親を失い親戚にも受け入れられずに行き着いたならまだしも、親の意思で子を手放しに来る。……捨てに来ると言う事になり、あそこが捨てても良い場所に変わる事が怖い事なのです」
「幽導孤児院は……実際にそうされた過去が?」
「現在も事例は減ったとは言えあります、もちろん大半は回避しようが無い理由の子達ですが……歴代院長含め職員さん達の尽力でそんな面を見せない様にしている事、本当に凄い事だと思いますわ」
縁は院長と話した事を思い返す、ユウメと狐音の二人がその尽力を更に支えているのだと。
「私に出来るのはあの子達が一瞬を輝かせるだけ、微力ですねぇ」
「そうは思わないですよ」
「え?」
縁は今日のイベントを通じて、決して一瞬では無いと確信していた。
「僕は少なくとも一生もんの体験でした、きっと孤児院の子達は経験した事を人生の柱にすると信じられます」
嘘偽りの無い本音を吐き出した、ユウメがやってきた事が微力な訳が無い。むしろユウメだからこそ道標を子供達に建ててあげれてる。
「確かに何かの理由で手放しやすくなるかも知れません、でもそれは親の問題で子には全く関係ないですよ。そんな子供達にユウメさんが魅せる姿、絶対に糧になり外に翔ける大人になると思います!」
「管理人さん……ふふ」
「ユウメさん?」
「自己満足だと卑下しすぎて弱気になってましたわね、ありがとうございます」
「いや……僕は今日観た事から感じるままに言っただけで……」
「あら、赤くなって可愛いですわね〜今日お付き合い頂いたお礼にお背中流しますわよ〜」
「ダメですよ!何の為に壁作ったと思ってるんですか……」
「まあ、そんな管理人さんもウブで可愛いですわね」
ここからは幽荘に着くまで可愛いの嵐で、縁はまともにユウメを見る事が出来なくなった……
——チャプン
「……全く、ユウメや縁を揶揄いすぎじゃぞ」
「うふふ、管理人さん可愛いんですもの〜」
縁は帰宅早々に狐音にユウメを風呂に入れる様頼み、自室に篭ってしまった。
「今日、皆元気じゃったか?」
「ええ、皆輝いていました」
「儂も行きたいとこじゃが、立て込んでてのぅ」
「仕方ありませんわよ、狐音姐さんは守神ですもの」
「なんじゃ藪から棒に、懐かしい呼びしよって」
「管理人さんと孤児院の話をしていたら懐かしくなりまして〜」
「ふむ、どうやら踏ん切り付いたようで何よりじゃ」
「幽導村、やっと時代が変わりましたね」
「……そうじゃな、縁が来て楔が断ち切れるかもな」
「私は私の出来る事を致します、だから狐音姐さんも」
「ふふ、心配には及ばんよ。何年やって来たと思うとる?」
「そうですわね、でも……だからこそです」
「わかっておるよ、ありがとうのユウメ」




