神社研究会から神社部に昇格!?
「え!? 姫心ちゃん、なんでいるの!?」
紅菜が驚いた声を上げた。
姫心は黙ったまま、モジモジしている。
後から来た麗が、部室を覗き込んだ。
姫心を見つけた瞬間――。
駆け寄った。
「姫心ちゃん、来てくれたんだ〜!」
嬉しそうな声。
「......約束だからね。あれ、出来てる?」
姫心が、少し恥ずかしそうに言った。
「もちろん!」
麗が自分のパソコンを開いて、姫心に見せた。
パソコンの画面を見た姫心――。
テンションが、みるみる上がっていく。
「お~!」
目を輝かせる姫心。
「見て、こんなパターンもあるよ」
麗が画面を操作する。
「おぉ~~!!」
さらに、姫心のテンションが上がる。
(なに見てるんだろ......?)
「え~、何なに?」
紅菜が興味深々で、パソコンの画面を覗き込んだ。
その瞬間――。
「なにこれ? ダサっ!」
紅菜が笑った。
画面には――
Tシャツのデザイン。
筆で書かれたような達筆で――。
『一隅を照らす』の文字が描かれている。
「ひとすみをてらす?」
紅菜が首を傾げる。
「違う。『いちぐうをてらす』。最澄さんの言葉」
姫心が訂正した。
「一隅を照らすってどういう意味? てか、最澄って誰?」
「もう、紅菜は知らなくていいの」
「え~、ヤダ~、教えてよう~ 姫心ちゃ~ん」
紅菜がすり寄る。
「同じ一年なんだから、『ちゃん付け』はやめてよ」
「姫心~、教えてよう~」
「ヤダ」
そんな、やり取りを見ていた麗が言った。
「姫心ちゃん、これで入部してくれるよね?」
「......う、うん」
「てか、『ちゃん付け』はやめてよ」
姫心が小さく頷いた。
それを聞いた麗が――。
飛びつきながら、姫心を抱きしめた。
「嬉しい〜!」
「え? 姫心、入部してくれるの?」
「ほんと?」
「やったー!」
紅菜も喜んでいる。
「これで四人になったから、『部』に昇格できるね!」
麗が嬉しそうに言った。
(あ......私、もう人数に入ってる......)
気づいたら、入部していた。
断る間もなく。
「よ~しッ」
「早速、職員室に行って――」
「部の申請をしに行こう!」
紅菜が立ち上がった。
「え、今から?」
姫心が驚く。
「こういうのは、早い方がいいの!」
「行こう、行こう!」
紅菜が私たちを急かす。
(......なんか――)
(こうゆう紅菜のところ――)
(だんだん慣れてきた......)
四人で部室を出た。
* * *
職員室に向かう廊下。
紅菜が鼻歌を歌いながら、先頭を歩いている。
その後ろを、私と姫心と麗が続く。
「ねえ、姫心ちゃん」
私は隣を歩く姫心に、話しかけた。
「なに?」
「麗と、何か約束してたの?」
「ああ......Tシャツのデザインをお願いしたの」
姫心が少し照れたように言った。
「ネットで探しても、いいのなかったから」
「え? 麗ってデザインできるの?」
驚いて、麗の方を見る。
「うん。企業のロゴとか、名刺のデザイン作ってるよ」
「すごいね」
「そんなことないよ~」
麗が小さく笑った。
(......二人とも、意外と話しやすいかも)
* * *
職員室の前に着いた。
紅菜がドアをノックする。
コンコン。
「失礼します!」
元気な声で入っていく紅菜。
私たちも続いて入る。
先生が数人、デスクで仕事をしている。
「あの、神社研究会の穂高です!」
紅菜が担当の先生に話しかけた。
「ああ、穂高さん。どうしたの?」
優しそうな女性の先生。
「部員が四人になったので、部に昇格したいんです!」
「あら、本当? それは良かったね」
先生が笑顔になった。
でも――。
先生が一瞬、間を置く。
「ただ、部にするには、顧問の先生が必要なのよ」
先生が申し訳なさそうに言った。
「え......」
紅菜の表情が曇る。
「今、同好会の担当は、私がしてるけど――」
「部になると、正式な顧問が必要になるの」
「そうなんですか......」
紅菜が落ち込んだ声で言った。
「顧問を引き受けてくれる先生を、探してみてね」
「それができれば、部として申請できるから」
「はい......分かりました」
紅菜が小さく頷いた。
職員室を出る。
廊下――。
紅菜が俯いている。
さっきまでの元気はない。
「顧問......か」
麗が呟いた。
「誰か、引き受けてくれる先生いるかな?」
姫心が心配そうに言う。
「......分からない」
紅菜が力なく答えた。
* * *
部室に戻った。
四人で、机を囲んで座る。
「顧問、どうしよう......」
紅菜が、机に突っ伏しながら呟いた。
「神社に詳しい先生とか、いないかな?」
麗が考え込む。
「歴史の先生とか?」
姫心が提案する。
「うーん......」
「でも、顧問って大変だから――」
「なかなか引き受けてくれないよね」
紅菜がため息をついた。
私は――。
何も言えなかった。
顧問を探す方法も、分からない。
「とにかく、先生に聞いてみようよ」
麗が前向きに言った。
「そうだね......」
紅菜が少しだけ顔を上げた。
「明日から、探してみよう」
姫心も頷く。
神社研究会の部員が、四人になった。
でも――部になるには、まだ壁がある。
(顧問......見つかるかな)
少し不安だった。




