今日の暗殺のターゲットに初恋を奪われてしまって殺したくても殺せない
殺す。処理する。殺す。処理する。
毎日その繰り返し。
そんな私が変わった日。
2030年、AI(人工知能)がほとんどの職を奪っていった。
そんな中、日本は不況に陥り、ものすごく金持ちの人間と、家すらも持っていない人間のこの二つにくっきり分かれた。
そして一つの職業が裏社会で流行った。
殺し屋。
恨む、恨まれるが最も多い現在、依頼の電話は絶えることなかった。
19:32 電話が鳴る。今どきめずらしいダイヤル式電話だ
一人の女性が電話を手に取る
「もしもし」
「私だ。冥蓮」
彼はオーナー、本名を知るものはこの世に存在しない。殺し屋グループの主犯格?的な感じの謎が多い人物
「あ!オーナー!はい!今日はどうしましたか?」
彼女は冥蓮。本名は桜 花子。幼い時に父親の残した借金を返すために殺し屋をやっている。
といっても、もう既にその借金は返し終わっていて、自分が幼い時に面倒を見てくれたお礼として、今も働いている。
「渋谷ヒルズ203号室にて167cm24歳。大手IT企業の社長、今田大輔を殺してほしいとのことだ」
「はい。了解しました」
花子は着替えて、あらかじめ手配してた車に乗り、渋谷にむかった。
「オーナー、なんであんなメスガキを雇っているんですか?みるからに非力そうですし」
オーナーのSPが窓から外の車を見て言った。
「彼女は…絶対に裏切らない。なぜだと思う?」
「裏切ったら殺すとか?」
「いいや、違う。彼女は、感情がないんだ。」
「と、いいますと」
「視覚障害者が、生まれた時から目が見えないように、彼女は生まれた時から、感情がないんだ。人を殺すことになんにも思ってない。」
「でも、あのような体では返り討ちに遭い、殺されてしまうかもしれません」
「死ぬならそれで結構。なんならそっちの方がありがたいね」
「なぜですか?」
「なぜなら彼女は、この会社を潰せる力を持っている。」
渋谷ヒルズにて
「着きました冥蓮様。ご無事を祈ります」
「じゃあ終わったら連絡するから」
階段をあがる。少し長い針のようなものをもって203号室の目の前に立つ。インターホンを鳴らす
「はーい、今行きます」今田大輔がドアを開ける。ただし誰もいなかった。
彼は部屋に戻り引き続きPCで書類の管理をしていた。
そしてリュックの中からクッキーを取り出し食べる。
バタン
今田が倒れた。ヒルズの前に救急車が集まる。
「え!?また社長がやられたのか?」様子を見に来たルンペンたちが騒ぐ。その横を花子は通っていく。
行きと同じ車に乗った。
「冥蓮様。今日はどのような方法で?」
「今日は汚れたくない服だったから。毒殺した。」
「おほほ。詳しく聞いてもよろしいでしょうか」
「インターホン鳴らして、そっちに気をいかせているうちに、202号室から、窓つかって入って、」
「コーヒーなどに毒を入れたのですか?」
「だったら楽だったんだけど、ぱっと見全然見つからなくて、手に塗ることにした」
「あら?手に塗ったらバレちゃうんじゃない?」
「だから、パソコンのキーボードに塗った。でも全部に塗る量がなかったから、絞った」
「なるほどAキーとかでしょうか?」
「いや、それだと小指にしか毒がつかない。あなたは小指でお菓子をたべるの?」
「いいえ」
「でしょ。彼はおそらく左利き。マウスが左側にあったもの。だからまず、マウスの右ボタン。」
「なるほど、それで彼は左手の人差し指を使って…」
「ううん。それだけじゃ足りない。ばあやは右利き?」
「はい、そうですが」
「ではばあやは左手でお菓子を食べることが絶対にないのですか?」
「いいえ、右手がふさっがているときは左で食べることもあります。」
「それは、おそらく左利きの人も同じです。なので右手の人差し指で打つことの多いUキーに毒を塗りました。」
「さすがです、冥蓮様。」
そして花子は部屋に戻った。
運転をしてくれた『ばあや』はオーナーに呼ばれた。
「今回はどのような殺し方かは聞き出したか?」
そしてばあやは車の中での出来事をすべて話した。
「やはりあの子は天才だ。IQが150超えるだけある」
ばあやは申し訳なさそうに聞いた
「あの…あの子の殺し方を聞いてなにか?」
「データを集めているんです。彼女は天才だ。家にとってもふさわしい人材。。。だが、そろそろ潮時かと思って。」
「といいますと?」
「もうてっきりいらないんだ、あの子。裏切ったりしたらどうしようもないしね。」
「あなた、まさか?」
「あの子を暗殺する。でも彼女は天才だ。返り討ちにされたらたまったもんじゃない。だからこのデータを基に暗殺の計画を立てているんだ。」
ばあやはその日は寝れなかった。仕事づきあいとはいえ、昔からのつきあいの子が殺されるかもしれないから。
そんな時、一人の男が、この女の人生を変えようとした
そして翌日、再び電話が鳴る
「もしもし」
「私だ。」
「あ、オーナー今日はどちら様を」
「茨城県、大子町にあるマンションにて、172cm 28歳 独身 センター分けの男を※扼殺せよ」
※手や腕で頸部を強く圧迫
し、死に至らしめること
「扼殺ですか…」
「なんだ、お前にできないことはないと思っていたのだが…」
「いいえ、できます、できるんですけど…少々時間がかかってしまいますが」
オーナーはニヤリと笑う
「いやいや、結構結構、ターゲットが死んだのをゆっくり確認してから帰ってきてね。ゆっくりね」
花子はオーナーの言葉に違和感を覚えた。
そして花子がばあやの車に乗って現場に向かった
「では、オーナー、そろそろ」
SPが声をかける
「ああ、そうだな。お前ら全員現場に向かえ!」
車の中にて…
「冥蓮様。本日はいつも以上にお気をつけください」
「どうしてですか?」
「え、いや、それはですね…あ!今回冥蓮の苦手な扼殺なので」
「ねえ、ばあや。それって本当ですか?信じていいのですか?何か様子がおかしくないですか?」
「え?いいえ、そんなことは…あり、ありませんよ」
そして現場に到着する
「もう、恐らく冥蓮様をお迎えに来ることはありません。頼みますから、逃げて、好きな人と結婚して、子供産んで っていう平凡で幸せな生活をおくってください」
ばあやは花子の目を見て、涙目になって言う。
「冥蓮様、いや 花子ちゃん。大好きです。どうかご無事で」
花子は一瞬、真っ暗だった目が光る
「ばあや、ありがとう」(でもごめんなさい。死んでも任務を遂行する。私は、その為に生まれてきた人間だから…)
ばあやはハッとする
(あの子に『ありがとう』なんて、初めて言われた…)
今思えばこれが始まりだったのかもしれない。
はじめて口から出てきた感謝の言葉。
こんな不思議な感覚。
生まれて初めてだ。
花子はマンションをあがる。
と、その途中に一人の男とすれ違う。
花子は思わずふりかえる。
(172cm 28歳 独身 センター分け ㇵッこの男だ。扼殺扼殺扼殺扼殺)
花子は縄を持ちとびかかる。
その瞬間その男はふりかえる。
花子はとっさに縄を隠した
「あれ?見ない顔ですね。もしかして引っ越してきたんですか」
男は笑顔で聞く
「え、えっと、あ、いや、その」
花子はこれまでオーナー以外の男性と話したことがなかった
「緊張しないでも大丈夫ですよ。私は影水 こうたろうと言います。なにぞとよろしくお願いします」
花子はようやく声を出せた
「わ、私は、えっと、花宮 桜っていいます」(なんでこの名前にしたのかは分からない。理由はハッキリしていた。決して本名は明かしてはいけないから。でも…なんで元の名前に似せちゃったんだろう。なんか、この人には『桜』って呼んでほしいような、そんな気がした)
「よろしく!花宮さん!」
「sd&@jwkp」
「へ?なんて?」
「桜 って呼んでください…」
花子は限りなくちいさい声で言った。
「はい!桜さん。これからよろしくおねがいします。」
彼は部屋に入っていった。
花子は唾をゴクリと飲み込み、部屋のドアの隙間から催眠ガスを流し込む。
花子は5分ほどドアの前で座り込んだ。そして部屋に入り、ターゲットのこうたろうの首を掴んだ。
手加減などしずに、本気の力をだして、首をしめた。
一分ほど経ち、こうたろうの心臓が完全に止まったことを確認し、花子はゆっくり階段を下りて行った。
そのとき、
下の階から、煙が迫ってきてた。
花子は口をおさえ階段を上がっていった。
窓の外を見ると大量の人達がいた。
オーナーのSP、執事、料理人、めしつかい、
逃げ場はどこにもなかった。
「はぁ、ハメられた」
そう。計画がはじまったのは約1年半前、とある出来事がきっかけだった。
「本日は新宿のビジネスホテルに泊まっている、チャットTGPの社長を殺してほしい」
「ですが、そんな大事な任務、私できる自信が…」
「なるほど。では私が同伴しよう」
当然花子は驚いた。
今までオーナーがそのような悪事に自ら手を染めることはなかったから。
そして決め手の一手で花子が社長を刺そうとした時、なぜか目の前で手が止まった。
「何をやっているんだ。冥蓮。さっさと殺さんか」
花子は手が動かなかった。その隙にターゲットは姿を消した。
オーナーは花子をにらみつける。
オーナーは驚いた。
なぜなら花子の目に光がうつっていたから
「バカな、そんなハズがない」
オーナーはあることを決意した。
それは
冥蓮を殺害すること
オーナーは焦りに焦った。
彼女が『心』を持ち、やがてこの会社を裏切ることになったら、誰一人彼女を止められないから。
ある程度人のいないところに、なるべく殺すのが難しい体が強い男で、彼女が一番苦手な扼殺という方法で、なるべく時間を稼がせつつ、マンションの周りを包囲して、マンションごと焼き尽くすやり方。
花子はなんとなくわかっていた。
どうでもよかったんだ。生きても死んでも。
「私は様々な人を殺めてきました。行くなら地獄でしょう」
花子は床に落ちてたタバコを拾い、吸い始めた。
「悔いはないです。」
そう言い階段を下ろうとした時、誰かが花子の服を引っ張った。
「大丈夫ですか?桜さん」
振り返ると、そこには首が青ざめているこうたろうがいた。
「え?なんで」
花子は二つのことを疑問に思った。
一つは、なんでこの男を殺そうとしていた私を助けるのか
もう一つは、何故生きているのか。
一つ目の答えはこうだ。
顔を見られてなかった。こうたろうから見たら、花子はただの近所の住民であった。
そして二つ目の答えはこうだ。
本気で殺そうとしなかった。
あの時のように…
花子は本気で殺せなかった。完璧主義な彼女なら、こんな失態はしないはず。
では、なぜか
それは…
桜花子が
本気で恋をしてしまったから
確かに花子は本気で殺った。自分ではそう思っていただろう。
ただし無意識の間に手加減をしてしまったのだろう。
花子は頭の中がぐちゃぐちゃになった。
「何やってるんですか、桜さん!はやくしないと煙が」
その瞬間花子は泣いた。
人生で初めて泣いた。
「なんか、なんか、さっきまでどうでもよかった命が…惜しくなっちゃったじゃないですか」
もう、恐らく冥蓮様をお迎えに来ることはありません。頼みますから、逃げて、好きな人と結婚して、子供産んで っていう平凡で幸せな生活をおくってください
冥蓮様、いや 花子ちゃん。大好きです。どうかご無事で
はい!桜さん。これからよろしくおねがいします。
「いいのかな?神様、ばあや。私なんかが、幸せになっても」
「いいのかな?神様、ばあや。たくさんの人々を殺めてきた私が、平凡な生活をおくっても」
「神様、一生のお願いです。今までの罪をお許しください。そして私に平凡をください」
「ああ、ああ、ああ何やってるんですか、桜さん。火で囲まれてしまいましたよ」
窓の外を見ながら花子は言う。
「こうたろうさん、好きです」
花子はバッグをひたすら強く窓にぶつけた。
ただしそんなもので窓が割れるわけがない。
「何やってるんですか?桜さん」
「たしかこの近くに湖があるはずです」
こうたろうは一つ大きなため息をついて言った。
「桜さん、僕も好きです」
こうたろうもパールを拾って窓をわろうとする。
「息を合わせるんです。桜さん」
「はい!!せーーーーーーーのっ」
窓は豪快に割れた。
約12メートル先に湖。現在は7階。
「無理だ、、、計算違いだ。あんなに遠いなんて」
花子は絶望の顔をする
「落ち込まないでください、二人で力を合わせれば、このガラスのようにどんな困難でも打ち破れます。捕まってください」
花子は言われるがままにこうたろうの腕に捕まった。
そしてこうたろうは高く飛んだ。
しかし、、、、、
わずかに距離が届かず、
花子は目をつぶった。
地面につく瞬間、こうたろうは花子を高くあげた。
花子は湖に飛び込んだ。
こうたろうは…
高さ37メートルからの落下、即死だった。
花子は水面から顔をだした。
目に映ったのは頭が砕けたこうたろうの姿だけだった。
花子は泣けなかった。
目の光も消えてしまった。
一度手に入れたものが、再びなくなってしまった。
オーナーが花子のところに行き、銃口を頭につきつけて言った。
「この男が死んでどう思った?」
花子は言った。
「別に」
完




