沈黙を綴りて

【短いあらすじ】
沈黙が支配する街で、古書修復に携わる二人。検閲の痕跡と遺言が見つかり、制度の「選択」が絆を襲う。喪失と記憶を抱えた証人の物語。
【あらすじ】
監視と沈黙が暮らしに浸透した街。そこで古書修復士の藤代は、大逆事件による処刑を免れた『生き残り』として静かに暮らしている。彼の仕事を手伝う『私』が見るのは、修復という名の儀礼的作業と、そこに忍ばされる検閲の痕跡だった。いわば声を奪われた社会で、彼と私だけが言葉を拾う。だが一冊の古書が、沈黙を裏返す引き金となる。監視の足音が近づく中、愛と信義、思想と逃亡が交錯する。沈黙は、誰を守り、誰を殺すのか？