第六章 私の誕生日
その日、ダルデアの村はいつもより穏やかに見えた。
雪は松明の柔らかな光を反射し、家の中では暖炉のぬくもりが肉の焼ける匂いと混ざり合っていた。
今日は私とカエルの誕生日だった。五歳。
この世界では誕生日は五年ごとにしか祝われない。けれども、両親は小さな宴を用意してくれた。
スープは薄味で、肉には塩気がなかった。だが、それでもかまわなかった。
その料理には味以上の温かさがあったからだ。
父が友を失ってから初めて、彼の目にかすかな光が宿っているのを見た。
「今日でお前たちは五歳になる」
父は重たい手を私とカエルの頭に置き、静かに言った。
「これからは子どもではなく、家族の一員として手伝う時だ。」
カエルは椅子から飛び上がりそうになった。
「ぼく、狩りを教えてもらえるんだよね、父さん?!」
父はわずかに誇らしげに頷いた。
「そうだ。これからは私と一緒に学ぶんだ。」
そして彼の視線が私に向いた。
「エヴリン、お前は母さんを手伝え。台所のことを覚えるんだ。」
私は思わず顔をしかめた。
「それだけ?」
「大事なことだ。」
「不公平よ!」私は腕を組み、声を張り上げた。
「カエルは剣で遊べるのに、私は台所で鍋をかき混ぜるだけなの?」
カエルは笑いをこらえていたが、目が楽しそうに輝いていた。
父は深く息を吐き、厳しい声で言った。
「遊びではない。男は戦い、部族を守らねばならん。」
「じゃあ女は一生奴隷みたいに台所に縛られるってこと?」私は尻尾を床に打ちつけながら言い返した。
「私だって狩りを学びたい!」
――どんな世界でも、女はいつも下に見られる。そう思うと胸が苦しくなった。
小屋の中に重苦しい沈黙が落ちた。カエルでさえ目をそらした。
「エヴリン!」
スレインの声は雷鳴のように響いた。
「お前が武器を取る必要はない!危険すぎる!」
「私は自分のしたいことをする!」私は強く言い返した。
「台所に閉じ込められるなんてまっぴら!」
一瞬だけ、父の厳しい目が揺らいだ。
彼は膝をつき、戦いで硬くなった手で私の小さな手を包み込んだ。
「お前には分からないだろう…」
彼の声は低く、かすかに震えていた。
「私は戦で兄弟を失った。もしお前まで失ったら…私は耐えられない。」
言葉が喉につかえ、何も返せなかった。
その時、母がそっと私を抱き寄せた。
「エヴリン…女が劣っているわけじゃないの。ただ、男は戦場の重荷を、女は家庭の重荷を背負うの。どちらも欠けては生きていけないのよ。」
母は優しく微笑み、私の額に口づけを落とした。
――こんなふうにしてもらったのは、いつ以来だろう。
「昔は戦う女もいたわ。でも結婚して子を持てば、皆剣を置き、家族を守る道を選んだの。」
母の穏やかな声が胸に響いた。
私は気づいた。――今、口にしていたのは前世の私だ。
長い沈黙のあと、父は再び口を開いた。
「私の母も戦士だった。だが、若くして死んだ。私と弟は母を知らずに育ったんだ。だからこそ、親のどちらかだけが命を賭ければいい。両方を失うわけにはいかない。」
そして少し間を置き、重々しく言った。
「…だが特別に許そう。エヴリン、お前は魔法を学んでいい。」
「えっ…?」私は耳を疑った。
「聞こえただろう。」父の目は再び鋭くなった。
「ただし条件がある。人間と深く関わるな。」
母がやわらかい声で続けた。
「村には魔術師が必要なの。できるのはあなただけ。」
胸が高鳴った。
――本当は許されなくても学ぶつもりだった。けれど、こうして認められたことで心が軽くなった。
「でも…ディレイさんは戻ってこないかもしれないわ。」私は母に尋ねた。
「他の人間を知っている。頼めば教えてくれるはずよ。」
「ただし、それはお前が八歳になってからだ。」父がきっぱりと告げた。
その夜、私はたくさん食べ、両親からいくつもの昔話を聞かされた。
眠りにつくとき、頬には笑みが浮かんでいた。――だが、その幸せは長く続かなかった。
翌朝、怒号で目を覚ました。外へ飛び出すと、広場には村人たちが集まっていた。
片側には白狼族。もう片側には黒狼族。
声は刃のようにぶつかり合い、憎しみに満ちた視線が雪を貫いた。
「俺たちは仲間を殺した奴らと共には生きられない!」白狼族の男が吠えた。
「お前たちだって俺たちを何人も殺しただろう!」黒狼族の男が怒鳴り返す。
風は冷たく、足跡が深く雪に刻まれていた。
胸の鼓動が早まる。
――父はいない。止められる者もいない。
張り詰めた沈黙は、今にも破裂しそうだった。




