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死後のリスタート  作者: クレイジー
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答えを求めて



視点:エヴリン


夜は岩のように重かった。

寝返りを打っても、深呼吸しても、目を閉じても——眠りは訪れなかった。

頭の中で波のように思考が押し寄せては砕け、繰り返し私を飲み込んだ。


夜明けの光が窓を淡く染めたころ、私はほとんど眠れていないことに気づいた。

目は真っ赤に腫れ、泣いた覚えもないのに涙のように熱を帯びていた。


最初に気づいたのはマルラだった。


「どうしたの、その顔?」

天気の話でもするみたいな調子でそう言った。


私は目をこすり、ぼそりと答える。


「何でもない…ただのひどい夜。」


マルラは一瞬だけ私を見た。

探るような視線。けれど興味を断ち切るように顔をそむけ、そのまま部屋を出て行った。


ここ数日、彼女はこうして消えることが増えた。

影のように。

誰にも何も残さず。


部屋を出ると、廊下でエレナが待っていた。


「おはよう、ふたりとも。」

いつも通り丁寧で綺麗な声だった。


私とエレインは会釈した。

だが——


マルラは無視した。


まるでそこに人がいないみたいに。

彼女がいちばん求めていた視線を、今は自分から避けている。


問いかけようとした時、エレインが袖をつまんだ。


「それ…ずっと話したかったの。」と小声で言った。


私は息を吐くしかなかった。


私の頭の混乱は、それ以上に厄介だったから。


アーサー・キングスウェルの「日記」が頭から離れない。


2073年。

マンチェスター。

イギリス。

タイムマシン。


私は2023年に死んだ。

彼より五十年も前に。


どういうこと?


> もし彼が未来から来たのなら、なぜこの世界は地球の進化形じゃないの?

なぜ存在しなかった種族がいて、

なぜ月は割れていて、

なぜ彼は「新たな始まり」と呼ぶの?




何ひとつ繋がらない。


私の知る物理も、

この世界の常識も、

全部あてにならない。


皿を洗うたびに疑問が積み重なった。


アーサーは生きている?

もしそうなら——どうやって会いに行く?


必要なのはただ一つの手掛かり。



---


計画、という名の思いつき


フェレンティス卿の馬車の音が屋敷に響いた。

戻ってきた。


胸の奥が跳ねた。

今聞かなきゃ、勇気は消える。


けれど、問題が一つ——

監視の鬼、カイリーン夫人。


近くにいれば、私は彼と話す前に叱られる。


そこで私は決断した。

悪い意味で、すばやく。


「エレイン、お願いがある。」


「嫌な予感しかしない。」


「カイリーン夫人をちょっとだけ…片付けて。」


「エヴリン、トラブルは——」


「本当に大事なの。例の本のこと。」


彼女は息を止めた。

私を信じるしかないと悟ったのだろう。


エレインは歩み寄り、カイリーンの耳元へそっと囁いた。


「リサンダー様が…また私のスカートを引っ張りました。」


空気が張り詰めた。


「また?」

カイリーンの声は氷のように鋭い。


「はい…」と震えた声でエレイン。


「今すぐ対処します。」


嵐のように去っていった。


エレインは小さく笑い、肩で息をした。


「最悪だけど……頑張って。」



---


フェレンティス卿のもとへ


彼は手袋を外し、召使いにコートを渡していた。

堂々とした立ち姿。

空気が自然と道を開ける。


私は深呼吸し、歩み寄る。


「フェレンティス様、おはようございます。」


「ああ、君か。」

記憶を探るような目。

「たしか…エヴリン、だったな?」


「はい。」


彼は薄く笑った。


「まさか本を読めたとは言わないだろうね?」


心臓が跳ねた。


「い、いえ。ただ…質問があります。」


本当は言いたかった。

でも危険すぎた。


「この本を書いた者は…まだ生きてますか?」


フェレンティスは顎に手を当てた。


「古い筆跡だ。数十年か、もっと昔かもしれん。

まだ生きているとすれば——老人どころの話ではない。」


私は本を抱きしめた。


46歳で来たアーサー。

今、生きているなら?


どれほどの年を越えている?


「じつはその本、続きがあるらしい。」

フェレンティスの言葉はさらりと落ちてきた。

「これが第一巻に過ぎない。」


息が止まった。


「…続きが?」

声が震えた。


「ああ。だが所在は不明だ。」


彼は歩きかけて、ふと振り返った。


「少女よ。——その本が君の手にあるのは偶然じゃない。」


視線は鋭く、しかし優しい。


「気をつけるんだ。」


そして去っていった。



---


私はしばらく動けなかった。

鼓動が胸を叩きすぎて、息が追いつかない。


続きがある。

まだ何か隠されている。


ならば私は追う。


アーサー・キングスウェル。

彼を探し出し、真実を知るために。.

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