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死後のリスタート  作者: クレイジー
20/28

小さな暴君



「エヴリン!」

エレインが部屋へ飛び込んできて、扉が激しく鳴った。

「いったい何してるの?!」


私はガキの首をがっちり腕で締め上げていた。

ライサンダーは羽をむしられるニワトリみたいに足をバタバタさせていた。


「こいつ、変態なのよ!」と私は唸った。

「私のスカートをめくったの!私のよ、エレイン!礼儀を教えてあげてるだけ!」


「礼儀?! 」

エレインは必死に私の腕を引っ張る。

「エヴリン、お願いだから、あの子は男爵の息子なのよ!」


「だから何?!男爵の息子でもメイドの下着を覗くなら、痛い目みるのは当たり前でしょ!」


「ぼ、ぼくは…」

ライサンダーは咳き込みながら目を見開いた。

「ただ… 見たかっただけ…」


「何を見たかったって言うのよ?!」

私はさらに腕を締めた。


「きみの… 色を…」と言いかけた。


「黙れ!」

私は怒鳴った。


「エヴリン、今すぐ離して!」

エレインが肩をつかんで揺さぶる。

「死ぬわよ!ほんとに!」


私は大きく息を吐き、ようやくガキを放した。

ライサンダーは膝から崩れ落ち、咳をしながら首を押さえ、耳まで真っ赤だった。


「お… おまえ… 化け物…」と彼はむせた。


「化け物はあなたでしょ!」

私は指を突きつけた。

「次スカートをめくったら、本当に殺すから!」


その瞬間——


扉が再び開いた。


マダム・カレインが入ってきた。


その表情は… 牛でも倒せそうなほど冷たい。


「何があったのです?」

彼女が言った。


私とエレインは固まる。


ライサンダーはまだ咳き込んでいた。


カレインは私たちを見て… 次にガキを見た。


ライサンダーの咳が止まった。


そして突然——


彼は笑った。


軽くて、意地悪くて、小さすぎる体には不釣り合いな笑み。


「何もありませんよ、マダム・カレイン」

彼はぐちゃぐちゃの襟を整えながら言った。

「僕はただ… 新しいメイドの忠誠心を試しただけです」


カレインの目が細くなる。


「試した… とは?」


「合格でした」

ライサンダーは堂々と私を指差した。

「それで決めました」


私とエレインはぞっとする。


「彼女を僕の側室にします」


怒りで視界が赤くなった。


なんてクソガキ…


カレインは深くため息をついた。


「ライサンダー様、側室を持つにはお若すぎます」


「ぼくはもう十二歳だよ!?もう大人みたいなもんだ!」


カレインは腕を組んだまま無表情で言う。


「では、お父上と相談いたしましょう、若君」


その瞬間、彼の笑顔が消えた。


ぴたりと。


彼は目をそらし、腕を組み、ほっぺを膨らませた。

まるでお菓子を取り上げられた子供だ。


「……わかったよ」

と彼は不満げに言った。


部屋を出ると、空気は鉛のように重かった。

カレインは前を歩き、ゆっくり揺れる尻尾が… 怖い。


私とエレインは処刑台へ向かう囚人みたいに後ろをついていった。


廊下で彼女が立ち止まり、ゆっくりと振り返る。


その目つき——

あれは叱る目じゃない。


殺す目だった。


「正気を失ったのですか?」

彼女の声は、獣が喉で唸るように低かった。

「フェレンティス家の跡取りに手を出すなど…」


彼女は一歩前へ。


私の首筋の毛が総立ちになる。


「もし本当に若君が怪我でもしていたら……

この場でわたくしがあなたたちを絞め殺していましたよ」


足が震えた。


エレインなんて倒れそうだった。


廊下全体が静まり返る。

家そのものが息を止めたみたいだった。


カレインはさらに目を細めて続ける。


「あなたたちは ゴールデン卿に同行しているだけ です。

それ以上でも以下でもありません」


「騒ぎを起こせば… 何か一つでも問題を起こせば…

この屋敷から生きて出られません」


ごくり。


エレインも同じ音を立てて唾を飲んだ。


「理解しましたか?」


「は、はい…」

と私は答えた。


「はい、マダム…」とエレイン。


ようやくカレインは背を向けた。

まるで私たちを“処分候補”として記録したかのように冷たく。


私たちは震えながらついていく。


あの部屋の前を通ると、妙な寒気がした。

静かすぎる。息が詰まるみたいな。


「行きますよ」

とカレイン。

「あなたたちは一ヶ月ここで働きます。ゴールデン卿と男爵は長い会議をされます。それまで、屋敷の一員として動いてもらいます」


「一ヶ月?!」

私はエレインに耳打ちする。


エレインは “今日死ななかっただけマシでしょ…” みたいな顔をした。


台所へ戻る。


温かい料理の匂いが少し安心させてくれた。

使用人たちがちらりと見たが、すぐに仕事へ戻る。


エレナがいた。


野菜を並べながら、カレインとまるで旧友のように話している。


あんなに話すエレナ、初めて見た。


「続けなさい」

と彼女は私たちに言った。

「ゴールデン卿はお腹が空いていますし、彼の好みを一番知っているのはあなたたちです」


たしかにその通り。


私もエレインもマルラも、完全に覚えていた。


玉ねぎ嫌い。

強い匂いが苦手。

豚みたいに食べて、文句ばっかり。


料理を手伝い、皿を整え、補助テーブルを並べる。

マルラは文句顔だったが、仕事は完璧。


エレインは静かに働き続けた。

まだ頭の中で事件を反芻しているようだった。


カレインは全体を見渡し、完璧さを確認していた。


時間はゆっくりと過ぎていった。


少なくとも——

この初日は、これ以上の騒ぎはなかった。


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