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METORO  作者: 未世遙輝
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第7章

ミラー大佐は、テーブルの端に立ち、腕を組み、鋭い眼光で部屋全体を見渡していた。「戦争が近い。」彼の低い声は、凍てつく地下の空気を震わせ、その重みが隊員たちの心を締め付ける。


カーンが、その声に反論するように踏み出した。「なぜスナイパーが必要なのだ?」彼の声には、ミラー大佐の決定に対する、明確な疑念と、理解できないという苛立ちが混じっていた。


「あのバケモノを排除し、この任務を終わらせるためだ!」ミラー大佐は、強く拳を握りしめ、その言葉に憎悪と決意を込めた。彼の視線は、路線図のどこか一点を射抜いているかのようだった。


「ミラー、駄目だ、殺しては…」カーンの声が、切迫した響きを帯びる。彼は、ダークワンを完全に殲滅するというミラー大佐の命令に、必死に異議を唱えようとしていた。彼の顔には、苦悩と、過去の過ちを繰り返すことへの深い恐れが刻まれている。


「そいつを押さえろ!」ミラー大佐の命令が、冷徹に響き渡る。数人の屈強な隊員が、一斉にカーンへと向かっていく。


「愚か者め!過ちを繰り返す気か!」カーンは、もはや悲痛な叫びのように言葉を吐き出した。彼の言葉には、人類が再び、取り返しのつかない過ちを犯そうとしていることへの、深い絶望が込められている。彼は、自分が感じている「真実」を、どうにかして彼らに伝えようともがいていた。


しかし、ミラー大佐は冷酷だった。「話は終わりだ。カーンを連れ出せ。」彼の声には、一切の迷いも容赦もなかった。隊員たちがカーンを取り囲み、強引にその体を管制室の外へと引きずり出す。


「そんな…」カーンの声が、かすかに聞こえる。彼の視線が、僕へと向けられる。その瞳には、助けを求める光と、深く傷ついたような失望が宿っていた。「アルチョム!これが悪夢を終わらせる最後のチャンスなんだ!」彼の叫びは、僕の心臓に直接響くようだった。僕は、その場に立ち尽くすことしかできなかった。


カーンが引きずり出されていく姿が、ガラス窓の向こうに小さく消えていくのを見送る。彼の最後の言葉が、僕の脳裏にこだましていた。「カーンの事は忘れろ。バケモノに近付きすぎて我を失っているようだ。」ミラー大佐の声が、冷徹に響く。それは、カーンの存在を、そして彼の警告を、一切の躊躇なく否定する言葉だった。


「いや元からあんなもんだよ。」別の隊員が、皮肉めいた口調で呟いた。その言葉に、他の隊員からも、わずかな笑いが漏れた。彼らにとって、カーンの言動は、もはや慣れ親しんだ奇行の一つに過ぎないのだろう。


ミラー大佐は、再び僕の方へ向き直った。彼の視線は、厳しさを帯び、僕の決意を試すかのようだった。「いいかアルチョム。任務を遂行し、急いで戻ってくるのだ。」彼の声には、絶対的な命令が込められていた。僕は、静かに頷くしかなかった。この地下の闇の中で、僕はただ、命令に従い、生き残ることだけを強いられる。それが、僕に課せられた唯一の役割なのだと、改めて突きつけられた瞬間だった。


ミラー大佐は、テーブルの端に仁王立ちし、腕を組んでいた。彼の眼光は鋭く、その低い声が部屋に響き渡る。

「お前たちの任務は、奴が盗んだコンテナを届けられる前に押さえることだ。」

彼の言葉は、明確な命令だった。レスニツキーが盗み出した「コンテナ」――その中身が何であるかは不明だが、それが非常に重要なものであることは、その厳戒な雰囲気から明らかだった。


「いいな?」

ミラー大佐は、有無を言わさぬ口調で念を押す。隊員たちの間に、微かな緊張が走る。


「イエッサー!」

一斉に響く返事は、彼らの忠誠と、任務遂行への覚悟を示していた。


ミラー大佐は、さらに言葉を続けた。彼の声には、この任務の重要性が込められている。「もしレスニツキーがアレを盗み出したのなら、メトロ全体の脅威となる。」

その言葉に、部屋中の空気が凍りついた。レスニツキーが盗み出したものが、メトロ全体の存亡に関わるほどの危険なものであるという事実が、隊員たちの表情に、新たな恐怖の影を落とす。それは、単なる任務ではなく、メトロに生きる全ての人々の運命を左右する戦いとなることを意味していた。


ミラー大佐の眼差しは、再び僕らへと向けられる。彼の声は、有無を言わせぬ絶対的な響きを帯びていた。「生け捕りにできなければ…奴の首を持って来い!」

その言葉は、冷酷な命令だった。任務失敗は、許されない。生け捕りが不可能であれば、抹殺せよ。その残酷なまでの決断に、僕の心臓は締め付けられた。


「イエッサー!」

隊員たちの返事が、再び部屋に響き渡る。その声は、もはや躊躇することなく、ただ命令に従うことを選んだ者たちの響きだった。


ミラー大佐は、腕を組み直すと、冷たい目で僕らを見据えた。彼の視線は、僕らがこの任務を完遂できるのか、あるいは、この地下世界に新たな絶望をもたらすのかを、試しているかのようだった。彼の後ろに広がるメトロの路線図が、僕の行く手を、そしてこの世界の未来を、嘲笑うかのようにそこに存在していた。それは、ただの地図ではない。僕らが生きる、この狭い世界の全てなのだ。そして、その全てが、今、僕らの手にかかっているのだ。

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