雨上がりの緑の小さな子どもたち
雨が降りました。
やがて雨が細く細く霧のようになって、ゆるやかでのんびりした風が吹きました。
風の上に、わあっと緑のケープを着た小さな子達がいっせいに飛び乗ったのが見えました。
雨が優しく葉っぱを叩くと、ひょいとした調子に緑の子たちが生まれてくるのです。
緑の子たちは風と同じように透きとおっていますが、雨で鮮やかさを増した緑の空気を吸い込んで、風よりほんのちょっぴり緑色をしていました。
風に乗り込んだ緑の子たちはおおはしゃぎしています。
緑の子の命はとてもとても短いので、お行儀よくしている暇はありません。
大急ぎで楽しまなければならないのです。
風が竹笹の横を通りすぎる時、緑の子たちは飛び乗ってきらきら光る雨露をとんがったつま先で転がしました。
下校途中の小学生が水滴を降りかけられてきゃあきゃあ騒ぎます。
緑の子たちは大笑い。風もすまなそうにしながら小さくクスリと笑いました。
水たまりはかっこうのダンス場です。
優しい風が通りすぎた時、水たまりにさざ波を落としていったのは、手をつないで踊っている緑の子たちのとんがったつま先なのです。
風が進むうちに緑の子たちは、つま先が水を吸って重たくなって、風からずり落ち消えていきます。
そして土や水や空気の中にストンと溶けてしまいます。
緑の子たちを乗せていた優しい風も空気に紛れるころ、最後に残った緑の子は、運良く金色のお日様を眺めることができました。
ほんのちょっぴりの緑にお日様の金色が混じりきらきらします。
そしてポトンと上から落ちてきた葉っぱの露と一緒に、ひょいと土に消えていきました。