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応用

誓断輪廻せいだんりんね 転生した異世界で課せられた転生者たちのルール『人殺し、死、自殺』


カニス 正式名称 カニス・アミークス この世界での犬の獣人種の名称


ネズミが暴れるのは異世界転生者、転移者に反応している可能性がある。

まだそうだと確信したわけではないが、思い当たる節が一つある。


それは、俺たちを追いかけ続けてきた魔熊の存在。


冬眠する時期に冬眠ができなかったから気が立っていたとか魔熊の目を潰したリオンの匂いを追っていたとかにたまたま遭遇し狙いをつけられたとか色々考えたが、あの執着は尋常ではなかった。

もし俺の仮説が正しければあの追走劇も今回の件もリオンが俺たちを追い込むために仕組んだ(はかりごと)なのか?。


……いや、そうなるとリオンの行動には矛盾とまでは言わないが、不可思議なところが多くなる。


あの夜俺たちを何故助けた?何故遭遇した時交渉を持ちかけた?


それにネズミの行動もそうだ。

何故真っ先に俺に飛び付かず、マコトを背後から襲った?

目の前にいたから?マコトが転生者…いやそれはないな…犬が転生したと言われた方が信じる…


考えが外れた…


今ここでリオンを悪人と決めつけるのはやはり早計かな…。

あれ?そういえば…


シアン「リオンに依頼したことってなんですか?」


ドルゴ「ん?ああそれもあれなんじゃよ。あいつにネズミが出るようになった話をしたらな?

『僕ネズミ退治とか得意やで〜』

って言って坑道の奥に手ぶらで行ったんじゃよ。危ないからやめとけって一応止めたんじゃが

『問題あらへん』言って聞かんかったわ。

そんでしばらくしたらそのまま何事もなく帰ってきて、本当にネズミが出んくなったからあいつがネズミを追い払ったくれたのは本当じゃ」


手ぶらで…?どうやってネズミを覆い払ったんだ?というか


シアン「弓は持ってなかったんですか?」

ドルゴ「持っとらんかったな」


俺らを助けてくれた時も弓を使っていたし、森で魔熊を追い払った時も弓を使ったと言っていたのに何故今回は手ぶらだったんだろう?

異世界特典というやつか?それがあの人の場合、弓を自由に出すことが可能な能力だったのか?


でも俺は女神から特典なんて何ももらってない…あの人だけ特別?


ああ、もう本当に…この世界のことも、カニスのことも、異世界転生者たちのこともなんも分からない…

…だめだ、一旦やめよう。

分からないことに意識を向けることよりも、とりあえず今は目先の問題のことだけ考えよう。


まずは情報の整理だ。

とりあえず一旦家に帰って考えるようかな…


情報を摂取しすぎて少し頭が熱くなっている気がする。


家に帰り、カーネが作ってくれた食事をしっかり食べ、ゆっくり寝た。

寝たら随分頭が軽くなった気がする。


下に降りる前に頭がスッキリしているうちに一旦整理しとこう。


ドワーフたちが掘っている下の坑道は採掘だけが目的ではなく、地上で起きている侵略戦争に備えて使われる避難路としても使うために掘っている。

故に、採掘を中止することはあっても放棄することはおそらくできない。


採掘中にネズミたちがドワーフやテリアを襲い邪魔をしてくる。サイズは大きいペットボトルくらい、一匹なら余裕で退治できるが集団で襲ってくるため、簡単には退治できない。そのため、爆発する鉱石、デトナイト鉱と電気が発生する鉱石ヴォルタリン鉱を使い合せ、坑道を爆破し封鎖することで凌いでいる。


これは何か応用で色々な使いかたができそうな気がするからもっと話を聞きたいな。


ネズミと頻繁に遭遇するようになったのは、リオンがこの村に訪れた時から退治するまでと、俺たちがここに辿り着いたあとのこと。

この世界に来た転生者たちに反応しているのか?何か他に理由があるのか分からない。


…情報としてはまだまだ足りないことが多いな。

俺はネズミのことを死骸でしか確認できていないし。

そういえばゴキブリの駆除対策しているメーカーはゴキブリのことをよく知るためにゴキブリを部屋に放し、同居することでどういう行動をしどういう習性を持っているのかを調べた…なんて話も聞いたことがある。


それに倣うなら、ネズミ対策するにはネズミがどういう生態なのかよく知る必要があるかもしれない。

だけどどうやって知る?


ネズミが一匹トコトコ歩いててくれれば捕獲もできる可能性もある…

いや…マットが素早すぎて捕まえられないと言っていたから難しいか…


なら定番の罠を仕掛けて捕獲する?

よくかごのようなもので捕獲しているイメージはあるが作り方が分からない…

こういう時の主人公って大体そういった知識を都合よく持ち合わせてて解決できるんじゃないのか?

やっぱり俺は主人公ってタイプの人間じゃないのかもしれないな…


それにカニスは手先が不器用なんだった。

大まかな想像はできてもそれを実現できる知識と技量が足りない…

はぁ…

……………


…だけど、ドワーフだったら何かできるかもしれない。

物作りに長けていて、手先が器用だ。大まかな説明だけでも彼らならもしかしたら…

自分にできないことは頼ることも大切だとこの世界に来てたくさん学んだ。

だからドワーフの方々に聞いてみることにする。


ドルゴ「そういう罠は昔からあるが、効果はあんまり期待できんぞ?」


もう何度もドルゴさんに話を聞きにきている。

人見知りなところがある俺からしてみればこの人は本当に話しやすいから甘えてしまう。


シアン「期待できないのは何故ですか?」

ドルゴ「昔は出てきても一匹二匹じゃったが今のネズミは集団で行動してるじゃろ?二匹くらいなら入っても壊れないのを作れるが、集団で入ったらカゴが壊れる」


なるほど…確かに。

シアン「ちなみにカゴって今ありますか?」

ドルゴ「待っとれ」


奥から持ってきてくれたカゴは小型犬や猫を動物病院に連れて行く時に使うケージくらいの大きさの網状の籠。

これなら確かにたくさんのネズミが入ったらはち切れて壊れてしまう可能性は高い。


にしても器用に作ってあるな。

現代の加工技術に比べれば杜撰(ずさん)な部分はあるけど、どうやって作ったんだこれ?


シアン「これってなんの材質でできてるんですか?」

ドルゴ「これじゃよ」


ポイっと投げ渡されたそれは黒くて軽い鉄パイプのような形状をしていた。

シアン「これは…」「鉄竹じゃ」


ああ!俺が魔熊退治に使った時に利用したあれ!!

鉄パイプぐらいの太さがあるものが網に使われるくらい細く加工できるのか!


シアン「すごい…」

ドルゴ「そのすごいはどういう意味の…すごいじゃ?」


え?どういう意味?どういう意味で俺はすごいって漏らしたんだろう?


シアン「えっと…なんていえばいいんだろう…技術力というか、物作りしている人はやっぱりすごいなって」

ドルゴ「プフッ、あ〜はっはっは〜やっぱりシアンはカニスの中では変わっちょるわ!」

シアン「え?え?」


べしべしと俺の背中を叩きながら爆笑するドルゴさんと、なぜ笑われてるのか分からない俺。


ドルゴ「マットが息子を可愛がるわけがわかったわ。付いてこい。もっと色々見してやる」


そういうとドルゴさんに連れられ、採掘場とは別の作業所みたいな場所に連れてかれた。


そこはまるで古い時代の工場見学。

鉄と油の匂いにまみれ、鼻がいいカニスの俺には少し刺激が強いが見るもの全てが面白かった。


さっきの鉄竹を火属性の鉱石イグナリス鉱で熱を与え、曲げたり、時には溶接に使ったりもする。

魔熊に逃げている時に見た、綺麗に切られている鉄竹もイグナリス鉱を使い伐採したと知る。


熱した鉄竹は水を貯めることができるアクエラ鉱が入った釜で冷まし、金床で叩き、また熱を加えて形を変えている。


前の世界でも見たことがない世界にふと気づいたら尻尾が大きく揺れていた。

だけど冷静に考えればこれだけの技術があれば、人間たちに目をつけられ襲われる可能性は高い。


シアン「坑道を掘るようになった理由ってあるんですか?」

ドルゴ「…ああ。儂等に警告したのは他でもないリオンじゃ。じゃからあいつのことは腹は立つが憎めん。

シアンはどうおもっちょる?」


シアン「わかりません。知らないことが多すぎるので」

ドルゴ「お前らしいの〜」


俺らしい?俺らしいってなんだろうと思ったが、多分褒めてくれる気がしたから深く考えないでおいた。


ドルゴ「ああ、そうじゃ。これを親父に渡しといてくれ」

手渡されたのは斧というよりナタに形状が似た武器。


ドルゴ「お前らにはこういった頑丈で力一杯振り下ろせるのがいいじゃろうって他の奴らが作っちょった。無骨なお前の親父によく似合っておるじゃろ?」


ああ、確かに。

簡単に折れたりしない感じはマットによく似てる。


ドルゴ「また聞きたいことがあったらいつでもこい」

そういってドルゴさんは奥の作業場に戻っていった。


話聞いたり、色々見せてもらってたら結構もういい時間だ。

他人が見たら、ただの工場見学に心踊らせた少年のように見えるかもしれないが、俺にはとてもいい経験ができた。

道具は一つだけあってもしょうがない。

組み合わせて使えば、いろんな使い方ができる。

最近頭が凝り固まっている俺にはいい刺激だった。


とりあえず俺もまた家に帰って、色々考えてみよう…


…ん?あれは…


シアン「マコト?」

帰る途中、マコトが壁に向かって座り込んでいるのを見つける。

そこは先日、マコトとヘイミッシュさんたちが掘り進んでいた場所を埋め立てた場所。


シアン「何してるの?」

マコト「……ここ掘っちゃだめ?」

以前掘っているところを見つかって、ここは掘る予定にない場所だからだめだと怒られた場所だ。


シアン「ドルゴさんたちがだめだっていったからだめだと思うよ」

マコト「……」


ああ、これはまた帰らなイーヌ状態かな…?


シアン「そろそろご飯だから帰ろう?」

マコト「……」


なぜそんなに掘りたいのか?

この先に、何かあるのだろうか…?

この日の俺はまだその異変に気づけなかった。

ドルゴの「憎めん」ってセリフを入力中に変換で「肉麺」って出てきてお腹空きました



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