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ジャック

誓断輪廻せいだんりんね 転生した異世界で課せられた転生者たちのルール『人殺し、死、自殺』


カニス 正式名称 カニス・アミークス この世界での犬の獣人種の名称


シアン「マコト!大丈夫?」

アンナ「怪我してない?」

マコト「え?うん?」


マコトを後ろから襲おうとした小さな影。

それをグレーターさんが阻んでくれたおかげでマコトには傷一つなかった。

というか当の本人は気づいてもいなかったっぽい…

感が鋭いはずなのに、たまに本当に鈍ちんになるなぁこの子は…


マット「すごいね。完璧な仕留め方だ」

グレーターさんが仕留めた影を掴み上げマットが状態を見ている。

マットは普段から狩りに出て獲物を仕留めているプロの狩人。

そのマットが完璧と称賛するのは最高の褒め言葉のはずなのに言われた本人は…


グレーター「え、あっ…俺は…何をして…?」

耳に入ってないのか、影を仕留めたグレーターさん本人は困惑し放心している。


グレーターさんが脊髄反射でやった本能的行動は、犬を飼っている人なら見たことがあるかもしれない。


おもちゃを咥え、左右にぶんぶんと振り回すそれの名前は『シェイク』と言われる小型の動物を仕留めるために犬の中に刻まれた狩猟行動。


俺も以前なんかのショート動画で遊びではあるが本来は小動物を仕留めるための行為だと解説動画で見たが、実際にその行動で小動物を仕留めているのは初めて見た。


そして仕留めた獲物も小型というには少しでかい。


魔熊などに比べれば全然小さいがそれでも2Lのペットボトルくらいのサイズ。

前の世界にいたネズミのイメージよりも二回り近く大きい。


シアン「これが…ネズミ…」

アンナ「やだ…」


この世界のネズミは初めて見た。

おそらくアンナも初見なんだろう。死骸から目を背けている。

目を背けたくなるのはわかる。

グレーターさんに仕留められたネズミは首が不自然に曲がり、口から舌を垂らしながら死んでいる。

血はそんなに出てはいないが少しグロテスクな光景。


マット「すごいね。誰から教わったの?」

狩りをしているマットは死骸を見るのに慣れているからなのか何も気にせずグレーターさんにどうやったのか尋ねているが相変わらずグレーターさんは放心している。


シアン「お父さんは今のグレーターさんの狩り方を知らなかったの?」

マットだって同じカニスだ。

同じような狩りの仕方を経験しているものだと思っていた。


マット「う〜ん…今の殺り方は俺も初めて見るなぁ…俺たちスピッツ族はどちらかというと獲物を追いかけまわし、獲物が疲れてきたところを道具を使って仕留める持久戦タイプの狩りだからね。彼のような短期戦みたいな狩り方はやらないね。多分テリアは俺たちよりも瞬発力あるんじゃないかな?三秒足らずで仕留めてたもんね」


マットが言う通り、グレーターさんがネズミを捕まえ振り回したのは三秒程度だった。

たったそれだけの秒数でこの大きさのネズミを絶命させれるのは少しの驚きと恐怖を感じる。


シアン「じゃあ今の狩り方はテリアたちだけがやる狩り方なの?」


ラスティ「いえ、わたくしたちもこういったやり方は知りませんわ。というよりもネズミをこうやって倒すのも初めて見ました。ネズミが出たらいつもツルハシなどを振り回して追い払っていましたし、こうやって倒すことも可能なのを初めて知りました。それになんというのでしょう。今わたくしが感じているのは…グレーターの退治の仕方に驚いているというよりも、『ああ、そうやればよかったのですね…』という関心が勝っています」


マット「俺もグレーターくんの殺り方を見て、全く同じことを思いました。何て言うのかな…そんな効率のいい殺り方があるんだって…」


さっきまで知らなかったのに、そうすればよかったのかと思うということはもしかしたら眠っていた本能が目覚めようとしているのだろうか?

もしさっきのシェイクを他のみんなも本能的にできるのだとしたら、もしかしたらこれがネズミ退治の鍵になるのかも…


ラスティ「けどあのやり方でははぐれたネズミくらいにしか使えませんね」


シアン「え…?そうなんですか?」


ラスティ「はい。ここにいるネズミは基本的に集団で動きます。さっきのグレーターのやり方で倒せるのは一体だけ、その一体を倒している間に他のネズミ達がわたくしたちの体を齧り殺すと思います。そのくらいここのネズミは凶暴で脅威なんです」


はぁ!?さっきのシェイクが三秒足らずの秒殺だったのに。その秒殺の間に齧り殺してくるってここのネズミはどれだけ集団で行動してるんだ!?十や二十どころの話じゃないだろ!?


シアン「じゃあ普段どうやってネズミを追い払っているんですか?」

ラスティ「それは…」


「それは儂から説明してやろう」


後ろからドスの聞いた声をかけられ振り向くとそこにいたのはドワーフのドルゴさん。

声色や表情を見ると少し、いやかなり機嫌が悪い。


ドルゴ「悪いなシアン。説明する前にちょっと待ってくれ」

シアン「は、はい…」


ドルゴ「オラああああ!!!誰がここ掘れって指示したあああ!!中にいるのはわかっとるんじゃ!!出てこんかい!!!」


坑道全体に響き渡るんじゃないかというほどの怒号。

耳がいいカニスには正直うるさすぎて耳がキーンっとなるレベルの大きさ…!


「やっぱりここは採掘許可降りている場所ではなかったのですね?アイビィー」

「すまん!なんとなくここは掘ったほうがいいと思ったんだ!」

「どっちにしろ俺たちは共犯だ…」


ゾロゾロと奥から泥だらけの茶髪の男と、泥だらけの白髪の髭男と、泥だらけの黒髪の髭男が出てきた。

白髪の髭男と黒髪の髭男は先ほど姿を消した、ヘイミッシュさんとドゥーガルさんだったが茶髪で折れ耳の好青年のような見た目をした人は見たことがない。

もしかしたらあのカニスが先ほど名前だけ出てきたジャックという人なのかもしれないが…あれ?けど今さっき聞こえた名前ではアイビィーって言ってなかったか…?


ドルゴ「お前ら、なんでここを掘った…?」


茶髪の男「なんとなく!ここを掘ったほうがいいなと判断した!」

ヘイミッシュ「アイビィーが掘っていると聞いて私も参戦しました」

ドゥーガル「……悪かったな」


ドルゴ「お前らがここを掘ったせいで、はぐれとはいえネズミが出てるんじゃが?」


茶髪の男「なに!?それは気づかなかった!誰も怪我してないか!?」

ヘイミッシュ「マコトくんは!?お父様に報告に戻ったマコトくんは無事ですか!?」

ドゥーガル「……みろ。ヘイミッシュ、やつに怪我はなさそうだ」

マコト「大丈夫だよ?」


あれ?あの怒号を聞いてまだわちゃわちゃできるのか?

……もしかしてだけど…テリアって騒がしい種族…?


茶髪の男「おお!?なんでここにネズミの死骸がある!?誰が退治したんだ!?」

ヘイミッシュ「ほ…それはよかった。マコトくんはせっかくできた新しい堀り友ですからね。怪我なんてされたら責任を感じてしまいます!」

ドゥーガル「……そうだな」


穴の中から出てきたテリア三人組はドルゴさんが青筋を立てピクピクしているのにも気づかず、自由気ままにわちゃわちゃしている。

まるで中学、高校生男子のような落ち着きのなさ。


その後ろでドルゴさんが大きく息を吸う仕草を見せたので、俺たちスピッツ達は頭の上にある耳を手でたたんで次の行動に備えた。


その後の三人組の姿もまるで教師に叱られる男子生徒のようだった。

テリア三人組は正座させられ「勝手な真似をするな!」「人の話をちゃんと聞け」などの説教をされて全員耳と尻尾を垂れ下げしょんぼりしている。


先ほどまではネズミの不意打ちとグレーターさんの秒殺劇のせいでかなり緊張した空気だったはずなのに、テリア三人組が現れてからはなんかしっちゃかめっちゃかになっている。


割と長めの説教がようやく終わり、初めて茶髪のカニスが俺たちに挨拶してきた。


「初めましてスピッツの皆様方!俺はジャック・ラッセル・テリアの四代目。ジャックだ。家族や仲間からはアイビィーとも呼ばれている。どっちで呼んでもらっても構わない!」


さっきまで正座させられしょんぼりしていたのが嘘のようにハキハキと自信満々に喋るこのカニスがやっぱりジャック・ラッセル・テリアのジャックさんだった。


アイビィーっていうのは確か四を意味するローマ字表記IとVから取ったあだ名のようなものだった気がする。

確か英語圏内の人は自分の息子に自分と同じ名前をつける家庭があり、二代目はJr。三代目はIII(サード)やトレイと呼んだりするって聞いたことがある。

あの有名な怪盗の名前がそのシステム。

この人はその四代目。四世だからIV(アイビィー)か。


ジャック・ラッセル・テリアは有名な犬種だ。とても有名な映画にも出て活躍し世界中にその犬種の名前を轟かせたし、CMなどにもちょくちょく起用されている。

ということはおそらくとても頭がいい犬種なんだろう。


ジャックさんの見た目は髪は短髪で、毛は明るい茶色。

けど尻尾は白く飾り毛はない。


顔や喋り方からは自信が溢れており、おそらくだけどこのカニスがテリアの中心人物だと予測ができた。


そしてグレーターさんには申し訳ないが、真逆のイメージを持ってしまった。


ジャック「このネズミはグレーターが退治したんだってな!すごいじゃないか!」

グレーター「……いや…その…」


背格好や毛の長さなどのシルエットはほぼ同じなのに、毛の色は真逆。

明るい茶色と白のジャックさん。

暗く濃い茶色と黒のグレーターさん。


毛の色が性格を表しているなんてことは絶対にないはずなのに、二人の性格は毛の色と同じく性格も明と暗を表しているように見えた。


そしてグレーターさんの視線と喋り方に俺は強烈な共感を味わった。

出会って間もない俺たちを子分にしたがるあの性格は、おそらく彼も自分に自信がない強烈なコンプレックスを持っているんだということに。

ジャックラッセルテリアで有名な映画は有名なコメディ映画『マスク』です。

この間Amazonプライムにあったので観直しましたが、ジャックラッセルのマイロの頭の良さに脱帽しました。

なんだあれ


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