テリア
誓断輪廻 転生した異世界で課せられた転生者たちのルール『人殺し、死、自殺』
カニス 正式名称 カニス・アミークス この世界での犬の獣人種の名称
次の日、俺はマットとカーネにちゃんと相談した上で、ドワーフたちが住む穴に降りることの承諾を得た。
前回は流れでソラも連れて行かざるおえなかったけど今回は危ないかもしれないから、ソラは家でお留守番をしてもらうことにした。
ソラ「うううううううううううああああああああああああああんんんん!!!!ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!!!!お兄ちゃんが行くならわたしも行く!!!!!!」
ととんでもなく大きな咆哮を放ちながら大暴れしたけど、ダメなものはダメです。
代わりについてきてくるのは…
シアン「ごめんねシュウ。ついてきてもらって」
シュウ「……ううん」
とてもいい子で頼りになるアキ一族のシュウだけについてきてもらった。
本当はシュウを誘うのも少し躊躇した。
シュウは元が大型犬ということもあるのか、体つきが大人たちと遜色ないくらいしっかりしてきている。
なのでマットたちと一緒に狩りについていくことも日常的になってきている。
それでもまだ年齢的には子供であることから、大人たちと同じペースで働かせるわけにもいかないと、定期的に休みをもらっているらしい。
せっかくの休みだ。
普段、肉体労働しているわけだし、家でゆっくりしてリフレッシュした方がいいに決まっている。
だけどマコトを連れて行くと何をやらかすかわからないし、ソラはまだ小さい。
アンナにお願いしようかな…?とも思ったが男の人が苦手なアンナが、男の人ばかりいるドワーフの村に連れて行くのはストレスにしかならないかもしれない、と思ったのでアンナにはソラのお守りの方をお願いした。
本当なら自分で覚悟したわけだから一人で行くべきだ!とも思ったが、それはマットとカーネが「誰かと一緒に行きなさい」と反対したので、迷惑と思われるかもしれないがシュウを頼ることにした。
俺のお願いをシュウは嫌がるそぶりも全然見せず、二つ返事で快諾してくれた。
本当に優しくていい子だ。
さて、俺が下の穴に降りてドワーフに聞きたいことは三つ。
まず一つ目はこの世界のネズミのこと。
まずそれを知らないと何も解決できない気がする。
二つ目はどう困っているのか。
何に困っていて、どこまでやれば解決になるのかがわからないとどうしようもない。
三つ目、今どうやって対応しているのか。
そのままその対応を続けていて解決するのか、もしそうなら俺の出番はない。
だけどもし、意味がないことをしているのであれば改善しなくてはならない。
子供である俺がまるで現場調査の真似事をするなんて生意気な話だが、解決するためには現場を知ることは必要不可欠。
だからここはちゃんと話を聞きに行くしかない。
そう意気込み、穴に続く崖道を降りようとした時
「何しに下に降りる」
とある人物に止められた。
あまり話したことがないが苦手な人物。
俺たちと同じプリムスの村出身、北のリーダー的存在。
イーストシベリアンライカのカニス…ロドルフォさん。
ロドルフォ「なんでガキのお前が下に降りようとしている?」
前に一度だけ会ったことがあるが、相変わらず威圧感がすごくてかなり怖い。
シアン「えっと…ドワーフが何か困り事があるようなので、何か手伝えることがないか「ねえよ」」
ロドルフォ「ガキが首突っ込んで解決できることなんてねえよ。それにお前、大怪我してたよな?ようやく最近治ったばっかりだろ?また怪我するぞ?大人しく家に帰れ」
淡々とただ正論を投げかけてくるから冷徹に感じるけど、俺の体のことも一応労ってくれているのを感じる。
だから歯向かうことなんてとてもできないが…
俺はできればマットたちにはもう少しゆっくりできる時間を得て欲しいと本気で思っている。
怖くてもここで引くわけにはいかない。
シュウ「シアンは余計なことをしたりしないから大丈夫です」
え……?
ええ…!?
俺の前にスッと入り、今まで聞いたことのないような低い声で、シュウは堂々とロドルフォさんに言い放つ。
ちょっとまってよシュウ。
シュウは大人しくていい子で、優しい男の子だとばかり思っていた。
だからこんな怖い人相手に睨みつけながら喧嘩を売るなんてイメージと違いすぎてギョッとしてしまった。
シアン「え?あの…シュウ?そんなに睨まないでも…」
ロドルフォ「相変わらず、南の奴らは自分が認めたやつ以外には生意気だな」
シュウ「そっちもそうだって父さんが言ってましたよ?」
和犬は飼い主以外には懐かないとは聞いたことがあるけど、まさかシュウもそうなのか!?
というか俺は飼い主ではなく友達なんだけど!
けどちょっと嬉しい気持ちになるのなんでだろう…!
シアン「ごめんなさい!ロドルフォさん!お父さんとお母さんからは下に降りてもいいと許可は得ています!それにあくまで俺たちで手伝えることがないか、聞きにいきたかっただけです。余計なことに首を突っ込むつもりはないです!」
ロドルフォ「さっきも言ったよな?聞きに行ったって意味ねえんだ「なんじゃあ?子供相手に…ゼェ…威圧しとんのかお前さん…ハァ」ああ?」
ロドルフォさんの背後にある崖道から人の声が聞こえる。
……すぐには姿を現さなかったが、その声の人物は…
ドルゴ「相変わらず…フーフー…余裕のない怖い顔しとるのぉお前はハァ」
昨日下で会って自己紹介したドルゴさんだった。
ロドルフォ「なんだ爺。上には登らねえんじゃねえのかよ」
ドルゴ「うるさいわ…確かに登らなきゃよかったと後悔しとるわいハァ…」
シアン「だ、大丈夫ですか?」
息切れがかなり激しいから心配して近づくと…
ドルゴ「ダメじゃあ…あそこの岩までおぶれ」
なんて言って寄りかかってきた。
いきなり体重をかけてきたからバランスを崩しそうになったが、すぐにその重さを感じなくなった。
シュウ「……」ドルゴ「…儂は樽か」
横を見るとシュウがドルゴさんを俵担ぎしている。
青年がおっさんを俵担ぎしているのは中々シュールな絵面をしているがそんな運び方失礼で怒られないかと少し心配になる。
ドルゴ「よっこいしょ」
岩の付近で降ろしてもらったドルゴさんは岩に腰掛け息を整える。
整え終えると、空を眺めながら
ドルゴ「なんじゃったけな〜?何しに上まで登ったのか…疲れて忘れてもうたわ〜。ええっと…ああそうじゃ。シアンと言ったな?昨日は話が途中で終わってしまったがここなら安全じゃろう昨日の話の続きをしよう」
昨日の話の続き?
あれ?なんの話してたんだっけ?
ネズミが出て大騒ぎになったから忘れてしまった。
グレーターさんの…?
シアン「あ!テリアのカニスのことか!」
ドルゴ「なんじゃ?お前も忘れとったんか?若いくせに」
頭の中にはネズミ対策のことでいっぱいだったためすっかり忘れていた。
ドルゴ「下にこられてまたネズミが出たらどうしょうもないからの。それとも迷惑だったか?」
シアン「い、いえ!とんでもない。わざわざ上にまで上がっていただいて申し訳ないです」
そうだ。問題を解決することも大切だけどこの世界のカニスのことをもっと知る必要がある。
昨日はテリア以外のことは知らないとバッサリ切られてしまったが、一緒に暮らしているテリアのことは結構詳しいはずだ。だからもっと話を聞かなきゃ…
シアン「教えてください。グレーターさんやその種族のこと」
そう俺が答えると、ドルゴさんは頬をポリポリ掻きながら
ドルゴ「昨日も言ったがお前らカニスについて本当に詳しいのはエルフで、儂等が知っているのはごく一部じゃ、それに正確かもわからんぞ?」
といい、テリアのことを教えてくれた。
『テリア』
名前の意味は土。
誰が彼らをそう呼び始めたのかはわからないが、彼らは自分たちがテリアの一族だという自覚はある。
ドワーフたちと共生している理由は、土を掘ることが得意なことと、土を掘りたいという欲求が強いこと。
その特性が採掘と鍛治を得意とするドワーフとの間に相互利益が生まれ、共生するに至った。
村にいるテリアのカニスは全部で五種。
先日会ったグレーターさんの種族、マンチェスター・テリア。
日本でも有名な犬種、ジャックラッセル・テリア。
漆黒の髪の毛と髭が特徴のスコティッシュ・テリア。
こちらは逆に白い髪と白い髭のウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア。
最後にワイヤーフォックステリア…
ジャックラッセルは映画やCMによく出ていたので人の名前が由来だって聞いたことがある。
ウェストハイランドっていうのは多分どこかの島の名前だろう。
スコティッシュはなんだろう?猫に同じような名前の品種がいた気がする。
そんな中で一番気になったのがワイヤーフォックス・テリアというカニス。
このワイヤーフォックスって名前はなんだ?フォックスはキツネって意味のフォックスだよな?
名前にキツネが入るということは何かキツネに関係するんじゃないのか?
狐のような見た目なのか?キツネって確か犬に近いんだよな?
いや、でもそうなったら前についてるワイヤーってなんだ?
ワイヤーの意味は針金だっけ…?針金、キツネ、土…?
針金で土の中からキツネを釣り上げる犬…?
いや、そんな犬聞いたことないぞ…
シアン「ごめんなさい。ワイヤーフォックス・テリアのカニスの方ってどんな方なんですか?」
ロドルフォ「ウェーブかかった髪を持ったうるせえやつだ」
……俺はドルゴさんに聞いたのに…
それにその答えじゃどういうカニスなのかよくわかんない…
ドルゴ「まあそうじゃな」
ええ…?
それって種族というより、個人への評価では…?
それじゃあ何もわからない。やっぱり会ってみたいな。
けどロドルフォさんもいるし、どうせ反対される…
……
…………
だけどここで人の顔色伺いながら、決断を渋っていたら今までと何も変わらない。
俺は家族みんなでゆっくりする時間を作りたいから、下に降りようと決意したんだ。
ここで引いてたらずっと同じことの繰り返しだ。
シアン「あの…やっぱり下に降りて色々教えてくれませんか?」
ロドルフォ「おいっ」
怒られるのは苦手だ。
ロドルフォ「余計なことに首突っ込むなって言ったよな?」
人に怒られるのはとても怖い。
シアン「余計なことじゃありません」
だけどもっと怖いのは。
シアン「この件が解決すれば、ドワーフやテリアのカニスだけじゃなく俺たち上に住むカニスにも有益になるはずですから」
何もせず、ただ傍観し、あとで「あの時、ああしておけばよかった」と後悔する方が…
…もっと怖い。
ごめんなさいいいいい
また一話しか書けなかったです!!
精進します!!




