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回想〜そして再会〜

誓断輪廻せいだんりんね 転生した異世界で課せられた転生者たちのルール『人殺し、死、自殺』


カニス 正式名称 カニス・アミークス この世界での犬の獣人種の名称

意識を取り戻して三日。

喋れるくらいには回復したきたが、まだベッドの上から動ける状態ではない。


顔面、両腕、右足の骨折。その他擦り傷打撲。

自分なりに頑張って受け身を撮ったつもりだがそんな都合よくいかなかったみたいだ。目が覚めた時は右目も見えないくらい腫れていたが、今はその腫れもある程度引いている。


回復能力は人間よりもカニスの方が高いのかもしれない。

もしそうならそれはとてもありがたい。


俺は早く外に出てこの村がどんな村なのか知りたい。

知りたいのに今いる部屋のこと以外誰かから聞かなきゃ情報が得られないのはもどかしい。


まあこれも全部自分が無茶したせいだから誰にもこんなこと言えないんだけど…


それにしても、よく助かったな…

魔熊を鉄竹まで誘き寄せるまでは良かった。


問題はその後、鉄竹が地面ごと捲れ上がるなんてそんなことは予想していなかったし、その後魔熊がまだ動けることも予想外の出来事だった。


あの時、意識がなくなる瞬間…俺の耳に聞こえた犬の遠吠え…


あれは聞き間違えではなく、本当に遠吠えだった。

ただし犬でも狼でもない…

俺たちと同じカニスの遠吠え。


その正体は俺が意識を失った後現れたそうだ。


〜〜 一週間前 〜〜


マット「シアン…?シアーーーーーン!!!」

トラ「おい!すげえ吹っ飛ばされたけど大丈夫かよ!?」


シアンが飛ばされる瞬間、頭を腕で隠すようにしてるのが見えた。

最低限の受け身はできているかもしれないが、だからと言って大丈夫な保証はない。

急いで駆け寄り安否を確認すると…

マット「……大丈夫。息はしてる…だけど全身を強く打ったせいで骨が何箇所か折れてる…」

意識もまだ完全に失っていないけど、安心はできない。

急いで治療できる場所まで運ばなきゃ…


トラ「マット!!まだ油断すんな!!あいつはまだ動けるぞ!!」


シアンに気を取られて、すっかり頭から抜け落ちていた。

シアンが決死の覚悟でやってのけたこの大事故を受けてもまだ動くか…


この化け物が…


シアンを背負って一刻も早く逃げたいが、シアンは両腕が折れているから背負うことはできても四足で走るのは難しい。

手負いで弱ってはいるもののこいつが走って追いかけてこないとも限らない。


トラ「マット!お前はシアン背負って先にいけ!手負いのこいつなら俺一人でなんとかできるかもしれねえ!」


トラはそういうがいくら手負いでも素手でどうにかできる相手じゃない。

だけど、シアンを一刻も早く安全な場所に…でもそうするとトラが…


どうする…俺はどっちを選べばいい…?


「なんだ、オメーら生きてたのか?」


混乱して視界が狭くなっていたのか、後ろに立たれていることに全く気が付かなかった。

後ろを振り向き、声の人物を見て俺はさらに混乱してしまった。


マット「え?お前…?」


そこに立っていたのは昔からの知人。

プリムスの村が襲われた時、行動を共にしていなかったからもしかしたら死んでしまったのかと思っていた人物。


マット「お前…ロドか…?なんでここに?」


「それはこっちのセリフだ。それよりもまずは…」

俺と魔熊の間に入り、大きく息を吸い空に向かってロドは大きな遠吠えを始めた。


ロドの遠吠えに呼応するように、森の中から遠吠えが一つ二つ三つと増えていき。

そして、いつしか俺の周りには十人以上のカニスが集まっていた。


みんなみんなプリムスの村で一緒に住んでいた仲間。

なぜみんなが無事なのかはわからない。

だけど、この状況なら…シアンを助けることができる。


マット「ロド、頼む。俺の息子が瀕死なんだ。俺は一刻も早く息子を村に連れていきたい。だから…」


「このまま西に真っ直ぐ。そうすりゃ村だ…勝手に行け。おい、トラ。てめーは手伝え」

そう言うとロドはトラの前に予備の武器を投げ渡す。


トラ「チッ!相変わらずお前のそういう言い方は気に入らねえが、武器があるなら別にいいか。今までは手も足も出なかったが、こうなったら容赦しねえぞ熊公…」


この人数に武器もある。なら安心して後ろを任せられる。


マット「シアン、シアン。もうすぐ村に着くから、大丈夫だからね。シアンは俺を、いや俺たちを…」



〜〜 現在 〜〜



そうしてマットに急いで担がれてついたのがこの村。

ドワーフが住む、鍛治と炭鉱の村。エルデ。


俺が聞かされているのはここまで。

気絶する瞬間助けてくれた人の名前は知っている。


その人は俺が生まれた故郷のプリムスの村であったことがある。


ロドルフォさん。

イーストシベリアンライカのカニス。


シベリアンと付くからシベリアンハスキーと同じような犬種だと思われがちだが、ハスキーよりもどちらかというと俺たち日本犬に似ている気がした。


プリムスの村は大きな建築物がある場所ではなかったが、土地はたくさんあったから敷地は広大で北と南で分かれていた。


南は俺たち日本犬が元になっているカニスが多く住み、北はおそらく大陸の犬種が元になっているカニスが多く住んでいたのだろう。

あまり聞いたことがない種族のカニスが多くいた。


俺たちの南のカニスのリーダーがマットなら、北のカニスのリーダーは助けに来てくれたロドルフォさんがリーダーになる。


正直にいうと俺はこのロドルフォさんが少し苦手だった。

シュウと同じ無口ではあるが、シュウのような優しさはあまり感じられず、なんというか…冷徹なイメージを持っていた。


ただすごいカニスだとはグランじいちゃんも言っていた。

狩りも荷運びもなんでもできるオールラウンダーで頼りにはなるって…


そんな人だからこそ、もしかしたら俺たちよりも先にこの村に仲間を引き連れたどり着いたのかもしれない。


どうやってこの村まで辿り着いたのか、俺はまだその理由は知らないけど。

だけど俺たち以外にも生き残りがいたのはいいことだ。


一体どれだけの仲間が犠牲になり、どれだけ助かったのだろうか…?

もしかしたら俺たち以外にも、この村以外に辿り着いた仲間はいるのだろうか…?


考えても答えは出ないし、答えを探すために動くこともできない。


ああ、なんてもどかしいんだろう…

早く動けるようになりたい…

そう思い耽っていると、勢いよく扉がバーンッと開いた。


俺の今の怪我の状態を知っている人でこんな扉の開け方をする人はいない。

だから動けないながら何か襲撃されたのかと警戒していたら…


二人の男女が部屋に入ってきた。


特徴から見るに俺たちと同じカニス。

頭の上に耳があり、お尻にはクルンと巻くような巻尾が見える。

髪は黒が混じった銀髪で、肌は白く男女ともに美しく、

ぱっちり開いて切れ長の目、そしてその目にある綺麗な瞳は男性の方は青く、女性の方は黄色かった。


背も高くスタイルもいい美男美女。

そんなカニスがなぜ俺の部屋に…?


あれ、けどこの二人の特徴…どこかで…


「お前」「シアンか?」

俺と目があった美男美女はクールそうな見た目から一変。

目をキラキラさせながら満面の笑みで俺のベッドに飛び上がってきた。


シアン「え?え?もしかして、ルカとララ?」


青い瞳の男性「そうだよ!!」

黄色い瞳の女性「生きてたんだな!!」


そういうと二人は俺のベッドの上でぐるぐると走り回った。

かと思ったら俺の動かない両脇にスポっと収まり、俺の頬に顔当てて


青い瞳の男性「なんだよシアン。ボロボロじゃんか?何があったんだよ〜?」

黄色い瞳の女性「ていうかかなりデカくなったね?まああたしたちもデカくなったんだけど〜」


というと俺の両頬を二人の顔で挟みぐりぐりとしてくる。


ああ、このテンション…本当にあの二人だ…

俺には全くついていける気がしないほどのパワフル系の陽キャ。


青い瞳の男性がルカ。黄色い瞳の女性がララ。

俺と同じプリムスの村で生まれた、シベリアンハスキーのカニス。

プリムスの村の北の方に住んでいたからそんなに遊んだことはないけど、生きててくれたんだ…よかった…


だけど…怪我人のベッドの上に乗って暴れるのはダメだろ…!

包帯ぐるぐる巻きの両腕に頭を乗せているルカとララ。


絵面だけ見ればなんか両手に美男美女を侍らせている変態みたいだ…

こんなとこ見られたら…


そういうことを考えると、だいたいその考えと同じことが起きる。

扉が開き、入ってきた人物は真っ先に俺の姿を見て


アンナ「シアン…最低…」

と誤解された…

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