しゅわっとふわっと(旧版)
過去に書いたきり、どこにも出していなかったので供養上げ。
・私と納豆サイダー
「あっ、センちゃん!ふふふ、これ飲んでみない?」
半笑いの友人に紙コップを渡されて、首を傾げる。中にはシュワシュワした透明の液体。炭酸飲料のようだが、何故こんなに友人は笑っているのだろうか。
友人らの視線を一身に集めながら、コップに口をつける。
それが運命的な出会いだった。
****
・悲劇の始まり
(私が出かける前と同じ格好でスマホを弄っている……)
千谷灯が帰ってくると共用部屋にあるソファで、愛川凛翔が寛いでいた。
灯が家を出たのは昼前で今は夕方。時間の経過を微塵も感じさせないように同じ格好でスマホに注視している。
キッチンにもゴミ箱にも飲み食いをした痕跡はなかった。
(さすがに喉渇くんじゃ…?でも、何か飲む物あったかしら)
「りーさん、これ飲む?オススメだよ、美味しいの」
「え、あ、うん?うん。はい」
灯が手渡した飲み物を凛翔はテキトーに頷きながら受け取る。
これが悲劇の始まりである。
「……っ!?オエ、ゲホゲホッ……何これ、え、何でこれ飲ましたの?」
「最近ハマってるので、お裾分け。幸せな気分になるんだよ」
「……は?!(嘘だろこの人、何言ってんだ?頭おかしいのか?掴み所が無いとは思ってはいたが…か、怪物にもほどがある……!!)」
***
・チョコレートはそのままで
「電池式のフォンデュ鍋を頂いたので、チョコレートフォンデュを作ってみました。りーさんもおやつにどうですか?」
「……それ、例のサイダー入れてないよね?」
「レシピには載ってないから入ってないけど、どうして?」
「いや、隠し味にブランデー混ぜたりとかは聞いたことがあるから…」
この人ならやりかねないと思いつつ、凛翔はホッとした。
「うーん、でもチョコレートの味が勝ってしまうと思うから」
「いや、いい勝負になると思う……」
あの超劇的サイダーの味が隠れるか!
むしろ、納豆が勝利を納めるだろう。
「えっ、じゃあやってみ「ちょ!いやいや大丈夫だから!!今絶賛チョコ週間作ってるくらいそのまま食べるチョコにハマってるから、是非そのまま頂きます!」
余計なことを言わなければ良かった。
あの時は近年稀に見るくらいに全力を振り絞った気がすると、のちに凛翔は語った。
最後までご覧いただきありがとうございました!
『納豆サイダー事件簿』と題名迷ったけど、サイダーじゃなくふわっとした灯が主役なので原題になっております。
以下設定当時の書き残し、復元。
・サイダー飲まされて以降、灯から貰う飲食物に警戒する凛翔という今後があったら面白いかも(過去の自分談)
・灯の味音痴は不味いものが分からない方面のバカ舌。甘いとか辛い、苦いは分かる。
人の失敗作でも「今まで食べたことない、新食感で美味しい。新しい味」とか言って平然とモグモグ食べる。
高級店に行っても、美味しいねと食べるが多分味の違いは分かっていないと思われる。