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 ログイン後、周囲を確認して店前から移動すると、組合テント付近の空き地に移動する。空き地とはいっても、唯のテントとテントにの間に出来た隙間。態々訪れるプレイヤーは居ないので、視聴者を集めるには丁度良い場所だ。

 配信サイトを開き、予めコメントの設定をすると、配信を開始した。開始すぐに集まる人に手を振りながら、ある程度人数が集まるまで雑談で時間を潰す。その間に配信説明の欄にコメント規制の内容を書いておく。内容は簡潔、“登録後1時間経過でコメント可能”の一文のみ。見逃されると困るので、定型文の上、一番最初の一文に添えておく。

「そろそろ集まってきたかな?配信説明にも書いておいたけど、コメントは登録1時間後から出来るよ。初見さんは……居るか分からないけど、迷惑掛けてごめんね。なんか厄介な人に絡まれちゃってさ」

 ヘラヘラと笑いながら前振りを終えると、早速本題に入る。

「今日は……ってか、今から、視聴者参加型でダンジョン攻略しようと思ってるんだ。さっき、SNSで告知したんだけど……みんな見てくれたかな?」

 参加型企画をする場合、普段からSNSの方で募集を掛け、その中から、配信に載せても大丈夫であろう人に声を掛けている。直近に作られたアカウントや、過激な発言が多いアカウントは、配信事故の要因になるからだ。だが、今回の募集には別の意味がある。その直前の投稿を見てもらう為。その為に、態々配信でSNSの名前を出したのだ。

「今日は5人までね。後、急な参加型って事で、以前参加した人限定の先着順にするね」

 そうは言ったが、既に参加者は決まっている。私は参加予定者にSNSの個人メッセージを送る。参加を許諾する旨と、直接会った時に参加者本人である事を確かめる為の、4つの数字からなる合言葉だ。

 暫く待つと、視聴者らしき人が数人現れる。その中には、先程声を掛けてくれた龍神の男と亜人の女。そして、キョンの姿があった。

「お久しぶりです!」

「おひさ〜。そっちの2人もさっきぶり」

 キョンとその2人に手を振り、念の為2人に合言葉を聞き出す。そして、もう1人の視聴者にも手を振り声を掛けると、合言葉を聞き出した。

「合言葉は合ってるね……。後1人はまだかな?ちょっと待とうか。その間に自己紹介をお願いしようかな。まぁ、普段見てる人なら知ってると思うけど……はい、配信に声載せたよ〜」

 先ずはキョンから。そう彼に声を掛けると、一歩前に出て背筋を伸ばすと、斜め上の遠くを見ながら挨拶を始める。

「ヘキグラ攻略班のキョンです!今日は騎士団を殲滅する為に馳せ参じた次第です!対戦、よろしくお願いします!」

 勢いよく頭を下げるキョンは、挨拶を終えると一歩下がった。

 挨拶というより、宣戦布告だ。周囲に隠れている気配が荒くなったように感じる。いや、実際荒れている。少し離れた場所、視界の隅で武器を構えたプレイヤーが、衛兵に拘束されて声を上げていた。

「クソ!離せ!NPC如きが……!」

「おぉ、お間抜けが釣れてる……流石キョンだね。あの人の声が配信に載ってないのが残念だよ」

 連行されるプレイヤーを見て、周囲の気配が静まる。これで拠点内で襲われる心配は無くなっただろう。

 キョンの発言を聞いて活気立っているのは周囲のプレイヤーだけでは無い。コメント欄の視聴者も、騎士団と相対する事を望んでいるらしく、血の気の多いコメントが散見される。中には、私達とは別でパーティを作り、私達のパーティと同行しようとするコメントも見受けられる。それに賛同するコメントもあるので、募集はSNSでやるように誘導する。

「じゃあ、次は俺で良いか?俺はぶぶ漬け食べたい。他の視聴者に代わって、騎士団を殲滅しに来た1人だ」

 次は竜人の男がその場で挨拶を済ませる。流れるように、隣の亜人の女も挨拶を始めた。

「私はミスミー。右と同じって所」

 なんとも彼女らしい簡潔な挨拶だ。

 ぶぶ漬けにミスミー。彼らは、私の配信で何度か出演している視聴者だ。元々、他のVRMMOで遊んでいたようだが、ヘキグラのリリースに合わせて移行したらしく、腕前は上級者レベル。

 ミスミーのロッドから放たれる土弾で足を奪われた所を、ぶぶ漬けの大斧から放たれる必殺の一撃でトドメを刺す。移行前のゲームから共に組んでいたようで、手馴れた連携にはいつも惚れ惚れする。

 そしてもう1人が挨拶を始めようと口を開いたその時、丁度最後の1人がテントの影から姿を現した。

「お待たせ、待った?」

 綺麗な立ち姿。短めのポニーテールを揺らしながらコチラに歩み寄る、乳白色の剣を携えた女性。その一歩一歩に隙は無く、近くにいるであろう待ち伏せ人も距離を取る。

「丁度良いタイミングだよ。にしても……昨日の敵は何とやら、メッセージが届いた時は目を疑ったよ」

 その人は、自己紹介を止められた男の隣に立つと、私に一礼する。

「今日は視聴者参加型の攻略に招待頂き、感謝する」

「まぁ、面白そうだったし。それより、先に自己紹介だけしよっかな。先に弓の人から。貴女は最後で、配信に声載せるから」

「では自分は自己紹介を。自分はコゴロー、弓使いです。カエル退治以来の参加です。正直、対人は得意では無いのですが……頑張ります」

 彼はそう言うが、そもそも対人戦が得意な人の方が少ないだろう。それ以前に、フルダイブゲーム自体が衰退している今、上手く立ち回れるプレイヤーが少数だ。私がプレイヤー相手に無双しているのも、そういった理由と、アモルファスから手に入れたスキルがあっての事。VRMMO全盛期であれば、私など有象無象の雑魚同然だったろう。

「じゃあ、次。自己紹介お願い」

 私は乳白色の剣を持った女性に声を掛けた。すると、彼女は一歩前に出ると堅苦しく一礼し、挨拶を始めた。

「初めまして、で良いのか?私はポロネーゼ、見ての通り剣士だ。今日は……対人戦が出来ると聞いて参戦を希望した。昨日の戦い以降、手合わせできる相手を探していたから、今回の募集を見つけられたのは僥倖だった」

 挨拶を終えると、再び一礼する。

「それにしても、まさか私とエルフちゃんの戦闘を見てたなんてね。配信?それともあの場所に居たとか?」

「ルナさんの配信を見ていたの。おじ……ゲンキがファンでね、一緒に見ていたの」

「って事は……もしかして騎士?」

 その言葉に、視聴者達が一斉に彼女に向き直る。彼女はその視線に慌てて首を振ると弁明を始めた。

「違う違う!見てただけだ!騎士なら正々堂々、決闘を申し込んでいる」

「まぁ、貴女ならそうだよね。でも見てたなら、私の事を卑怯だ〜って言いそうなものだけど」

 正々堂々を掲げる彼女にとって、無抵抗の相手を倒した私は卑怯者だろう。それなのに何故、私の側についたのかが理解出来なかった。寧ろ、騎士達と同じように卑怯者だと言って襲い掛かってきそうな性格だが……。

「卑怯者だとは思っている。だがそれ以上に、配信を荒らしている者達の方が卑怯だと考えたまでだ」

「あはは……貴女っぽい理由だね。だから、正々堂々潰しに来たって事?」

「そうだ。君達の言動は間違っていると正面から正せば、彼らも間違いに気付くはず」

「それで気付くようなら、お姫様の言う事を聞いてると思うんだけどね。まぁ、そもお姫様も、騎士達に注意してる様子は無いけどさ」

 SNSを確認すると、彼女はまだ配信を開始していないらしい。それどころか、自分の視聴者が配信を荒らしているというのに、その事にも一切触れる様子も無い。

「事務所の方も反応は無しですね。小規模とはいえ、他者を巻き込んだ炎上で、ここまで動かないとは……」

 ぶぶ漬けの言う通り、彼女の所属する事務所のアカウントも今回の件には触れていない。どちらかと言うと、事務所のアカウントの方は事実確認が済んでいないから“動けない”と言った方が正しいかも知れない。

「私含め、ちぃさんの視聴者達で、事務所のホームページに問い合わせは済ませてあります。ですが、事務所が対応したとして、荒らし行為が収まるかどうか……」

「荒らしは時間勝負だからね。って、みんな、私より配信関係に詳しくない?ルナなんとかさんの事務所アカウントとか、問い合わせ先とか知らなかったんだけど」

「皆、それだけ配信を見てるんですよ。俺も含めて」

 私の配信を観るくらいだ。他の有名配信者を見ていても不思議ではない。寧ろ、私の配信だけを観ている人の方が稀だろう。

「みんな物知りだね。じゃあ、そろそろダンジョン攻略行こっか。立ち回りとかは、行きながら要相談って事で」

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