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誤字、脱字、その他文章が破綻している箇所がございましたら、ご報告お願いいたします。


 周囲が白一色になって数秒後。マップの読み込みが終了したのか、白い幕が落ちる様に周囲には新たな景色が広がった。

 雰囲気的には森の中の一角。ダンジョン探索ゲームなので、ダンジョン全てが洞窟内だと勝手に想像していたが、そうでは無い様だ。


「森の空き地か。マップは左上……と。あ、これ、自分の視界に地形を表示させないと、マップ更新されないやつか」


 視界の左上には円形の地図が表示されており、私が左右に顔を動かすと、それに連動して中央の矢印が動き、焦茶色の場所に地形が更新されてゆく。


「徒歩ゲーね、まぁそれはいいけど……。私を囲ってる水色のドームは何?」


 周囲を見回す前から気になっていたが、私の周囲には、私を中心として10m程だろうか、水色で向こう側が透けたドームが張られていた。


「そちらはセーフティゾーンの結界でございます」


 私がドームに近付くと、サポちゃんの声が何処からか聞こえてきた。


「セーフティゾーン?」


 首を傾げて聞き返すと、サポちゃんは説明を始めてくれる。


「はい。セーフティゾーンとは、モンスターが現れず、侵入することの出来ない非戦闘エリアで、ダンジョンからの干渉も受ける事が無い安全地帯となっております。但し、セーフティエリアだからと言っても内側で争いが起これば、内外関係無く負傷しますのでお気をつけを」


「へぇ……。セーフティエリア外から、内側に向かって攻撃したらどうなるの?」


「モンスターの攻撃であれば、爪であれ息吹であれ全て防ぎますが、それ以外は全て通します。悪意ある攻撃であったとしても、全て」


「それって、セーフティエリアって呼べるの?」


「あくまで、ダンジョンの干渉を受けないだけなので。因みに、ちぃちゃんは何か武器をお持ちですか?」


「武器?……この美貌とか?」


 突然の話の切り替わりに質問の意図が汲み取れず、取り敢えず今持っている最大の武器を口に出した。


「冗談がお上手ですね」


 別に冗談を言ったつもりはないのだが、今の返しで質問の意図が理解出来た。


「……武器は持ってないよ」


「承知しました。でしたら、この中から好きな武器をお一つお選び下さい。そちらを、餞別として差し上げます」


 すると、セーフティエリアの中央に突然武器が召喚された。つまり、最初の武器を選ぶ時間という事だ。


「へぇ、いっぱい武器の種類があるね。ええと……何がどれだ?」


「武器を手に取っていただければ、詳細を表示いたします」


「分かった。じゃあ、取り敢えずデカい剣から」


 サポちゃんの言葉に従い、一番端に置かれていた幅広の長剣の柄を握って持ち上げてみる……が


「うわおっも!何これ、イッヌ位の重さあんじゃん!」


 その木で出来た大剣は、到底片手で持ち上がるような物では無く、両手を使ってやっとバランス良く持ち上げられる代物だった。


「しかも……なんか動き遅くなった感じするし。まともに振れるの?これ」


 木の大剣を振り上げ、そのまま下に振り下ろすが、先程の身体の動きと比べると、明らかに速度が落ちている。これは使えないと思い一旦大剣を地面に突き立てて、詳細を表示したディスプレイに目を通す。


「なになに……名前は木彫りの大剣で、武器種は大剣……。一撃は大きいが、重さ故に取り扱いが難しい……と。装備すると移動速度と装備部位速度が低下するが、str1毎に3、ag2毎に2、atkが増加する……vitで硬直軽減?」


 ざっと説明を見た限り、振りは遅いが威力は高い。という事なのだろう。だが、それが分かったところで、それ以外の書いてある情報が理解出来ない。と言うより、知らない単語が多過ぎる。


「サポちゃん、知らない単語が多いんだけど、説明してもらえる?」


 私は一度説明画面から目を離し、何処にいるか未だに分からないサポちゃんに向かって呼び掛ける。


「分からない単語がございましたら、その単語をタッチ、若しくは数秒間見つめてください。そういたしましたら、単語の説明が表示されますので」


 どうやら、細かな説明は自分で見ないといけない様だ。まぁ、サポちゃんに聞いてばかりで、自分での調べ方が分からなければ、チュートリアル後にプレイヤー自身が困ってしまうから当たり前と言えば当たり前だが。


「ええと、タッチ操作と視点操作が可能なのね。……早いしタップでいいや」


 画面中央にある水色の十字マークが少し邪魔だが、気にせずに説明画面の分からない単語をタップする。


「ええと、部位速度は……身体の部位の振り速度ね。装備部位速度低下って事は、大剣を持った場所の速度が遅くなるのか。えっと、部位は頭と胴と両手足で……種族毎の付属部位は……連結した部位によって異なるか。じゃあ、この尻尾は胴か足として扱われるのかな?」


 自分の意識とは無関係に、ユラユラと揺れ動く尻尾を見ながらそう呟く。


「硬直軽減……って、硬直があれなのね。状態異常の一つで……付与された数値分/s?付与された数値と同じ秒数って事かな、停止と行動不可……動けなくなるのね。で、大剣はその状態異常が軽減されると……知らなかったら事故りそうだなこれ」


 止まると思っていた相手が止まらず、不意を突かれて攻撃でもされたら……大剣の大威力と合わせてかなり危険だ。これは、全ての武器の詳細を見た方が良いかもしれない。


「あれ?大剣の文字も詳細が見れるのか……えっと?携帯時、装備部位速度-20%と移動速度-10%と、dex、agi-20%……硬直軽減vit/10……付与数値11以上は軽減不可……はぇ〜。で、装備時、str1毎にatk+3。agi1毎にatk+2があると……すごい細かいな。ダル」


 ここまで細かな情報が見れる事に驚いたが、それ以上に、知らない単語が再び出てきた事に対し、倦怠感を覚える。


「まぁいいや。順番に見ていくか」


 大剣を置いてあった場所に戻し、順に武器を手に取ってゆく。そして一通り確認し終えた結果、目の前にある武器の種類は19種類あり、盾と大盾という何方かと言えば防具であろう物も武器として存在している事が分かった。殆どの武器が移動速度や部位速度が低下するらしく、速度が低下しない装備は短剣に弓、棍や拳や爪、最後にステッキと、種類は少ない。短剣はステッキに至っては、サブ武器と呼んだ方がいい代物だった。だが、私は最初から武器は決めている。


「やっぱり短剣が一番使い易いんだよねー。振りも小さいし、身軽に動けるし。しかも、このゲームだと片手斧と短剣だけが投擲攻撃が可能らしいし……私のプレイスタイル的にはめっちゃ相性良いわ。ステッキとも悩んだけど……」


 VRMMOと言えば魔法。魔法が無いVRMMOには価値が無いと断言出来る程、魔法という力は皆が欲する物だ。このゲームの魔法は“ディスク”と呼ばれてるアイテムで管理されており、通常、装備出来るディスクの数が3個まで……つまり、3種類しか魔法を使用出来ないのだ。だが、ロッドとステッキは装備出来るディスクがスキルによって増えると説明に書いてあった。まだここら辺の単語の詳細を見ていないので細かくは分からないが、多分チュートリアル中に説明があるだろう。


「序盤の魔法系はMPが切れた時がキツイし。しかもこのゲーム、ダンジョン探索型だから基本長期戦だし……。杖系は後回しかな」


「武器は決まりましたか?」


「うん。この短剣をいただくよ。ええと……重量とかもあるんだもんね。この木彫りの短剣は0.5kgか……。数字より軽く感じるけど」


 掌からすっぽ抜けない様に柄を握り、何度か乱雑に上下に振ってみせる。


「獣人族は筋力が多いと聞き及びますが……木材では軽すぎましたか?」


 種族によって初期パラメータが違うのか。口振りからして、獣人はstrが高いらしい。そのお陰で、500gの木の短剣が現実より軽く感じる様だ。


「ううん、寧ろ丁度いいくらいだよ。ありがと」


「それは良かった。では、腕前を披露していただこうかと思うのですが……一応、固定ポケットの説明をさせていただきます」


「固定ポケット?」


「はい。ちぃちゃんはバッグをお持ちでは無いようなので、ポケットにアイテムを仕舞われる事になると思います。ダンジョン内で死亡してしまうと、何者かの恩寵によりダンジョンの外へ転移させられ、生き返る事はご存知かと存じますが、その際、バッグ内のアイテムや所持金を失ってしまうのです。ですが、固定ポケットに入れたアイテムは失わず、持ち帰ることが出来るのです」


「へぇ。じゃあ、貴重な物とかは固定ポケットに入れた方が良いのか」


「ご明察。ただ、固定ポケットにはご自身の手よりも大きな物は入りませんし、数もそれ程多く入れることは出来ないのです。更に、軽い物しか入れられません」


「手よりも小さくて、軽い物だけか……結構制限がキツそうだね」


「ポケットですので、大量に物が入る方がおかしいのですが。固定ポケットはご自身の腰を2度、素早く叩くとディスプレイが表示されます。固定ポケットにアイテムを収納したい場合は、収納したいアイテムをディスプレイに翳していただければ」


 その言葉を聞いて、私は自分の腰を左手で2度叩く。すると目の前に、上部に固定ポケットと書かれた、5つの枠があるディスプレイが表示された。


「これが固定ポケットね。閉じるには……左上のバツをタッチと」


「確認は済んだ様ですので、セーフティエリアを解除いたします」


 その言葉と同時に、水色のドームが上部から溶ける様に消えていった。


「では、開拓者としての腕前、拝見させていただきます」


 それを聞いた私は、右手に持った短剣を腰の鞘にそっと収めた。


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