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1垢 送ってしまった

この作品は今日中に全て投稿し終わる予定です。

私たちのクラスは当たりだって皆は言う。

私だってそう思う。なぜなら、


「「「キャアァァァ!!!北王子くぅぅぅん」」」


「やぁ。おはよう。皆」


「「「鈴繁君!おはようございます!!」」」


「おはようございます。皆さん今日も元気ですね」


2人の男子。そして、目をハートマークにさせて挨拶をする女子達。男子はどちらもイケメンで、それぞれ普通の子達とは雰囲気が違う。

これこそが運が良いと言われる理由。この学校の三大イケメン全員がこのクラスにいるんだから。

……え?三大イケメンなら3人だろ?もう1人はどうしたって?お前は簡単な引き算もできないのかって?

できるよ!引き算くらい!ちゃんと北王子君と鈴繁君以外のもう1人もいるから!!もう1人は、


「裏垢ちゃん。おっはぁ~」


「お、おはよう。思井君」


私に話しかけてくる、というか、私に後ろからハグしてくる。裏垢というのが私で、本名は裏垢(うらあか)遊美(あそび)。基本的には普通の女子。

そして、私にハグしてきたのが思井(おもい)愛賀(あいが)。軽い雰囲気で、この学校で3番目に人気のある男の子。つまり、三大イケメンの1人で、


「いいなぁ。裏垢さん。思井君と仲よさそうで」

「だよねぇ。うらやまぁ」


中の良さそうな私たちにクラスの女子や、廊下からこちらを見ている女子達は嫉妬の視線を。

……皆には仲が良い程度にしか思われてないけど、実は付き合ってたりするんだよね。なんでこんなことになったのか、私は思い出す。

あれは、私が荒れているとき、


「……あぁ。ムカつく!」


私は苛立った声を上げて、ベットに。そして、スマホを開いてメッセージを送ることにする。


              マジムカつくーー

ーーどうしたのMAHOちゃん


すぐにメッセージが返ってきた。それを嬉しく思うのか、私の頬がにやけるのを感じる。

MAHOというのは私のこと。学校の平凡で地味な私ではなく、どこかの陽キャの裏垢みたいな存在。……を私が演じているわけだけど。

決してそれは私の素ではなく、演じているだけ。でも、だからこそ相手が反応してくれる。


            おじさん返信速いーー

             キモいんだけどーー

ーーキモいってwひどいなぁ


私がやりとりする相手はおじさん。本人は30代後半で年収が1000万あるとか言ってたけど、きっと自宅警備員じゃないかなって思う。

だって、私への返信がこんなに早いんだからね。暇だって事でしょ。


ーーで?何がムカついてるの?

ーーおじさん相談に乗っちゃうよ。ヂュフフッ!

               笑い方キモーー

             滅べば良いのにーー


普通にデュフフとか書かれると気持ち悪い。私の頭の中では、お腹がはみ出たおじさんが脂汗を流しながら気持ち悪く笑っているのがイメージされる。

でも、だからこそ、そんな気持ちの悪い、私の周りにはいない人間だからこそ、相談ができる。


 クラスメイトが私のことブスッて言ってたーー

                ○したいーー

ーーうわぁ。ひどいね

ーーでも、おじさんはMAHOちゃん可愛いと思

 うけどね


どうせ適当に言ってるだけ。おじさんは、裏垢で毒着いている陽キャを可愛いと言ってるだけ。だから、私のことを可愛いとは思わないと思う。

そう思うはずなのに、嬉しく感じてしまう。


          適当なこと言わないでーー

          顔も見たことない癖にーー


ただ、私はそんなことをおじさんには感じさせない。私が嬉しいなんて思ってるってバレたら、なんか負けた気がする。それに、この程度で喜んでたらおじさんから私はあまりモテないとバレてしまうかもしれない。だからこそ噛みついたんだけど、


ーーじゃあ、顔見せてよ


「……え?」


おじさんのメッセージに、思わず私の口から変な声が出る。それと共に、手も止まってしまった。私は送られてきたメッセージをもう1度見て、瞬きする。


            は?何言ってるのーー

ーー何って、分かるでしょ?

ーー顔を見たいから写真送ってほしい


私は思わず唇を噛む。

見せたくない。おじさんに私を、見せたくない。おじさんには、せめておじさんには、綺麗な作り物な偶像の私を見ていて欲しい。

そう思うのに。


ーーMAHOちゃんは絶対可愛いと思う

ーー写真送ってよ

ーーどんな顔でも美少女だっていうよ

ーーだって、MAHOちゃんだから


立て続けにメッセージが送られてくる。私の心の何が動かされるのを感じた。

でも、普段なら絶対に写真なんて送らない。

そのはずなのに。そのはずなのに、このときの私は写真を撮ってしまった。そして、こんな私が可愛いはずがないなんて言葉と共に写真を送ってしまった。……どうしようもない承認欲求が爆発して。


ーーちゃんと可愛いじゃん

ーー凄く綺麗だよ

ーー結婚しよう


おじさんからはそんなメッセージが、

嘘かもしれないけど、可愛いと言って着る得た。綺麗だと言ってくれた。そして、冗談かもしれないけど、結婚なんて言ってきた。

……だから私は、


     30まで私が独身だったら良いよーー


なんて送ってしまった。

それでその日のやりとりは終わり。私は知らない人に自分の写真を送ってしまったと言う後悔を抱えながら、その夜を過ごした。

次の日も、私の不安と後悔は心に残ったまま。いつもなら朝におじさんにメッセージを送るんだけど、強くれ送れなかった。

そしてそんな沈んだ気分で学校に行くと、


ポンッ。

と、方に何かが置かれる。私は振り返るとそこには、


「お、思井、君?」


三大イケメンの1人、思井愛賀君が笑顔で立っていた。

何なんだろう?何か私は悪いことをしたのかな?悪口でも言われるの?

その時の私は気分が沈んでいたから、そんなネガティブなことばかり考えてしまった。でも、思井君はそんな私の不安など意に介さないといった満面の笑みで、


「おはよう。MAHOちゃん……じゃなかった。裏垢さん」


「……へ?」


「今日の朝メッセージが来なかったから、おじさん心配しちゃったよ」


「…………え?」

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