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第六話 戦場跡を巡り、そして初作業

 で、結局武器プラモを一個追加。

 買い物済ませて最寄駅まで帰ってきたまではよかったんだけど。


「すまない、巧。少し寄ってほしい所がある」


 改札を出た所でまたエレナが声を上げた。

 道の端っこに寄り、鞄をまさぐるフリしてエレナを見下ろす。


「なんだよ急に」

「アナザービースト出現の兆候を掴めた」

「っ!」


 思わず周りをきょろきょろ。

 どう見ても不審者ムーブだが、幸いにも俺を気にかける連中はいない。

 というか人の気配はほとんどない。

 元々、この地区は怪獣もといアナザービーストが来るってことで避難指示が出てた。

 ほとんどの人が逃げ出した後だ。

 残ってるのは事情があって残ってるか、生きるのを諦めたかのどっちかだろう。

 それはさておき。


「ちょっと待ってくれよ、昨日倒したばっかだよな? こんな早く来るもんなのかよ」

「それをはっきりさせたい。ガイドはする、指示通りに進んでくれるか?」

「……わ、わかった」


 プラモを買いに行った時とは正反対の緊張感。

 深呼吸で気持ちをごまかして歩き出す。

 向かう先は昨日の戦場跡だ。

 平和な頃ならすぐに封鎖されるけど、今はこんな状況なんてそこかしこにある。

 おかげで立ち入り自由、ケガは自己責任だ。


「まっすぐ……直通路は塞がれてるか。ならそこで右折、すぐに左。そのまま……突き当たりで左折。すぐに右折したら、またまっすぐ」


 鞄からのガイドはやたらはっきりしている。

 おかげであちこち崩れた道も迷いなく進める。

 けど、そのせいで余計なことを考えてしまう。


(……ひっどい有様)


 崩れた屋根。

 へし折れた電柱。

 ビルは根元からばっきりだ。

 道路も例外じゃない。

 アスファルトはぼろぼろ。

 ガードレールはひん曲がってめちゃくちゃ。

 車どころか自転車だって通れやしない。

 アナザービーストは倒されたけど、奴が刻んだ爪痕はこれでもかとばかりに自己主張していた。


(ホント、何もかも終わろうとしてる感じ)


 頭じゃなくて肌で理解する。

 これが世界の終わりなんだ。

 何もかも壊れて、直さないと役に立たない形でしか残らなくて。


「巧」


 そんなことを考えてたら、急に名前を呼ばれた。

 立ち止まり、鞄に目を落とす。


「安心してくれ。今は私がいる。これ以上こんな場所を増やさないために、私がいる」


 いつの間にか首を出したエレナが、自信たっぷりに言ってきた。

 でも、確かに彼女の言う通りだ。


「……そうだったな」


 この元凶を倒したのは、間違いなく彼女だ。

 しかも一日だけの幻じゃない。

 そこまで悲観するようなものじゃないかも、と思えた。

 再び歩き出す。ちょっとだけ、足が軽くなった気がした。


「もう少しだ」


 割れた信号を無視し、誰もいない十字路を斜めに渡る。

 脇道にそれて直進して数分後。


「見つけた。ビーコンだ」

「うっへぇ……」


 思わず変な声が出る。

 路地の片隅の植え込みに、楕円状の何かがぶっ刺さってた。

 遠目には丸っこい石に見えたけど、じっくり見ると明らかに違う。

 というかそれなりにグロテスクな模様をしてる。色合いが地味なせいで目立たないけど。


「昨日の奴の消滅に気付いた二番手が送り込んだものだ。消滅ポイントを軸に、出現位置を決めた段階だろうな」

「出現位置? なんでそんなことを」

「狙った場所に跳ぶためだよ。連中は普段、世界の狭間にいる。安全確保のためだが、そのせいで世界跳躍が簡単にはできなくなってるらしい。で、確実に跳躍するためにこれを送ってくるのさ」

「じゃ、じゃあこれを破壊すれば――」

「どっこい、コイツは硬すぎて破壊できない。それに信号発生のトリガーがビーコン自身の崩壊だ。壊れた瞬間に次のアナザービーストが来るから、壊すだけ時間の無駄、というわけだ」

「マジかよ、だったらなんでわざわざ探しに来たんだよ」

「調べるためさ」


 言うが早いかエレナが鞄から飛び出す。

 しかもいつの間に忍ばせていたのか、コンバートベースを抱えてる。

 グロテスク物体の前に着地すると彼女は六角形の置台をかざした。


「解析開始。信号発信サイクルの特定を開始」


 するとコンバートベースが例のごとく輝き始める。

 ただ、今回はベースそのものがぼんやり光ってる感じだ。

 邪魔になるといけないから、周囲をうかがいつつ黙っている。


「発信サイクル特定、現地時間にて換算……完了。続いて出現分類の照合……合致一件、マッシブ・アーム型」


 しかしこうして見るうち、世界を救う現場に立ち会ってるという実感が湧いてくる。

 その方法が「プラモを作る」ってトコがまだしっくり来ないけど、少なくとも彼女は真剣そのものだ。


「通常任務プロセスに従い、UTR―002として現地ラベリング……その他、イレギュラー要素の検知なし。以上、調査完了とする」

 

 だったら自分なりにしっかり取り組もう、と思った所でエレナが振り返った。

 にっこり微笑みながらこちらに戻ってくる。


「待たせたな。説明は歩きながらで済むから、まずは戻ろう」

「あいよ。……そら、入った入った」


 膝をつき、鞄の口を広げてやる。

 エレナはぴょんと飛び跳ね、コンバートベースごとすっぽりと収まった。

 よくそんな引っかからずにできるもんだ。

 膝についた埃を払い、来た道を戻り始める。


「調べたかったのは二つ。発信開始タイミングと、呼び出されるアナザービーストの種類だ。事前準備の手掛かりになる」

「で、相手はいつ来るんだ?」

「ざっと三日。長くはないが短くもない、微妙な時間だ。だが心配ない。敵は下級、相性もいい。今日買った武器プラモを仕上げればなおよし、といった所だ」

「なおよし……つまり、あった方がいいんだよな?」

「あるに越したことはない。ただ最初はレクチャーだから、急ぐ必要はない。今の巧は三日間、丸ごと使えるだろうしな」

「それはまぁ……そうだな」


 現在無職、やることなし。

 時間だけは有り余ってる。

 でもそれはそれ、これはこれだ。


「でも、一個くらいは間に合うようにする」


 まずは一個。

 初心者なりの目標として宣言する。

 するとエレナは嬉しそうに俺を見上げた。


「心強いな。でも最初からそんなに身構えなくていい。相手はデフォルト兵装でも対応可能だ。まずは丁寧かつしっかりとしたクオリティアップを心掛けてくれ。これから作るものだって君のプラモだ。できるだけ大切にしたい」

「……俺のプラモ、か」


 なんだかちょっとむずがゆい。

 俺は口元を手で隠した。



―――――――――



 家に帰った俺は早速、買ってきたプラモ工具をローテーブルに広げた。


「で、こっからどうすればいいんだよ」

「まぁ慌てるな。まずは作業準備だ。プラモの箱は残ってるな? できれば内箱を取ってくれ」


 それなら『ガンナー・ガール』の箱が残っている。


(単に潰すの忘れただけだけど……)


 早速手を伸ばすけど、あぐら姿勢のままやったせいで一瞬体がつりそうになった。

 ちくしょう、横着するんじゃなかった。


「箱は後で使うから一旦そのまま。で、作業するプラモの選定だが……新品だと組み立ててからだから、レクチャーまでに時間がかかる。これを使おう」


 痛みを堪える俺をエレナはスルー。軽やかにプラモ棚に飛び乗り、置きっぱなしだった武器プラモを取る。

 俺に「モデラーになってほしい」と言った時に渡してきた銃だ。

 確か量産機用の実弾型ショートライフルだったか。

 どのプラモの武器だったかは忘れてしまったけど。


「記念すべき一作目で練習台だ。失敗上等、とにかく実践することを第一に取り組んでいこう」

「それはいいんだけど……本当にそういう感じで大丈夫なのか?」

「急がば回れ、千里の道も一歩から。焦りは禁物だよ、巧」

(変な言葉知ってるんだな……)


 全くもって無関係な感想が出てきたけど、まぁ彼女の言うことは正しい。

 あくまで俺は教えられる側の人間だ。素直に話を聞こう。そう思って姿勢を正す。

 その間、彼女はショートライフルをいろんな角度から観察。

 しばらくしてうんうんと頷いた。


「まずはズボラにやっていこう。接着剤で合わせ目を消した後、はみ出した所と一緒くたに切り跡を削り、そして整える」

「まとめ作業っぽい感じだけど、いいのか?」

「最初から削ってくっつけたらまた削って、なんてやっていても手間ばかりで面白くないだろう?」

「確かに……」

「では早速だが接着だ。買ってきた接着剤を開けてくれ」


 「流し込みタイプ」と書かれた接着剤の小瓶を取る。

 蓋を開けると何やら棒のような物が一緒についてきた。


「ん、これ、ブラシか……?」


 よく見ると毛先が見える。もしかして、これで塗るんだろうか。


「正解。蓋はブラシ付きだ。それでパーツの合わせ目をひと通りなぞるだけ。サクサクやっていこう」


 実際それ以外にやりようがない。パーツの合わせ目をブラシでなぞっていく。

 もちろん一回で全部塗れるはずもない。こまめに蓋を瓶に戻し、接着剤を補充。

 ぱっと見は上っ面だけコーティングしているようにも見えたが、ちょうどそこでエレナの解説タイムが始まった。


「流し込みタイプの特徴は、合わせ目に塗れば自然と全体に行き渡る点だ。毛細管現象、と言えば通じるだろうか」

「なんかこう、隙間を伝ってくみたいなヤツだっけ」

「あぁ。だから今回のように組み立てた後の接着にはもってこいだな。しかし裏を返せば、組み立てながらの接着には不向きだ。パーツ不足でくっつけた日には目も当てられない」

「そんぐらい早くくっついちまうってわけか」

「少量だから余計にな。他にもパーツ構成によっては可動部分にまで流れ込む可能性がある。大半の武器はそんな心配は無用だがね」

「動くトコ、ほぼないもんな」

「だから今回の説明からは除外。ただ、本体やユニットパーツなどは可動部位ありきだ。そのうち教えるから、頭の片隅に入れておいてくれ」


 そんな話を聴いてるうちに、合わせ目をなぞり終わった。

 武器プラモを置いて接着剤の蓋を閉めていると、エレナは再び武器プラモを手に取る。


「……ん、問題なさそうだな。では乾き次第削りの作業に入るが……その前にこいつの出番だ」


 とてとてと向かった先はプラモの内箱。

 そいつを引っ張ってくると武器プラモを置き、今度はデザインナイフを取ってくる。

 流石に重かろうと持ってやる。


「助かるよ、巧」

「いや言ってくれれば取るって」

「そういえばそうだったな。……さて、削り作業だが、最初に注意事項。この作業は箱の上でやること。削りカスがかなり出るから、こうしないと後始末が大変になる」

「その上でやるのか? やりづらそうだな……」


 内箱はそれなりに大きい。

 その上で作業となれば、おのずと肘をついて前のめりか、腕全体を浮かせるか。

 どっちにしろ長続きしなさそうな姿勢になりそうだ。

 エレナもそれは理解しているのか苦笑い。


「こればっかりは慣れてくれとしか言いようがない。こまめに削り具合を見なきゃいけないから休憩は挟むし、作業の度に掃除機かけたりするのも面倒だろう?」


 これまたそのとおりである。

 しかし掃除機と来たか。一体どれだけのゴミが出るのやら。


「さておき最初の削りは、切り跡や接着剤のはみ出しといった出っ張りを取る作業だ。デザインナイフの使い方だが……カンナがけをしてほしい、と言って伝わるだろうか?」

「カンナがけ……」


 つまり削ると言っても表面だけ削れるようにしていく感じだろうか。

 デザインナイフを開封、キャップを抜いて刃を立てて、刃の逆方向に引く振りをする。

 それを見たエレナはこくんと頷いた。


「その通り。では早速やってもらいたい所だが……ちょっと待ってほしい。接着剤が乾いてからやらないと、跡が残ってしまうからな」


 そう言いながら武器プラモを手に取って、さっき接着剤を塗った所をチェック。

 しばらくして、驚いたような息を漏らした。


「……へぇ。この世界の接着剤は乾くのが早いな。もう削り作業を始められそうだ」

「ん、そうなのか?」


 武器プラモを受け取りながら問いかける。

 対するエレナは苦笑まじりに返してくる。


「接着剤を使った時は、速乾タイプでも数時間は待たないといけない。物によっては一日置かないとダメ、なんてケースもある」


 それを聞いて目が点になりそうだった。

 速乾タイプでも数時間、ってどういうことだ。

 遅くても十数分とかで乾くもんじゃないのか。

 そんな俺の心の中を読んだのか、エレナはすっと続きを答えた。


「接着剤が乾く中で引っ込んで、凹みになってしまうからだよ。それじゃ合わせ目消しをした意味がない」

「なるほど。……でも、コイツについてはそうじゃないと?」

「あぁ。素材の都合か、あるいは別の要因か……とにかく接着剤がもう乾いてる。だから安心してくれ。待たずに削り作業ができる」

「そ、そうか」


 とりあえずひと安心。

 待機時間なしで作業を続けられるに越したことはない。

 俺はデザインナイフを握り直し、武器プラモと向き合う。


「では削り作業だが、まずは切り跡付近から削って、感覚を掴んでいこう」

「えぇと……ここだな」


 切り跡はすぐに見つけられた。

 いいニッパーを使ってたから遠目には目立たないけど、四角形の模様みたいになってるトコがある。どうしても残ってしまう切り残し部分だ。

 そのうちの一つ、周りが平らなトコを指さす。


「で、どう削るんだ?」

「さっき言ったようにカンナがけのような感じで頼む。ただし、こまめに削り具合を見て欲しい」

「あいよ」

「目安は切り残しが見えなくなるまで。今回は処理前後の状態を見て欲しいから、まずはそこだけ削ってくれ」


 早速作業開始だ。

 まずはお試し、一回シュッとやってみる。

 木くずのプラスチック版みたいな削りカスが出てきた。

 作ったプラモをわざと台無しにしてる感じがして、ちょっと緊張する。


「緊張しなくていい。最後は仕上げて目立たなくするんだ。今は思いきりやってしまえ」

「わかった」


 続いて二回、三回と繰り返しカンナがけ。

 数を重ねるとだんだん細かいゴミが出てくる。

 プラモの削りカスだ。

 削ったプラモはもちろん、ナイフにも、指先にもどんどんくっついてくる。

 しかも目を凝らせば箱の中にもたっぷりだ。

 まだちょっとしか削ってないのにこれだから、終わる頃には相当な量が溜まってることだろう。


(確かにこれ掃除するの大変だな……)


 もし箱なしでやってたら大変なことになっていた。

 やっぱり指示には従うもんだと思いつつ、指をこすって削りカスを落とす。

 と、そこへガサガサとビニールの音。

 見るとエレナが未開封のブラシを取り出す所だった。


「すまん、忘れてた。削りカスをはたくならこっちも使ってくれ」


 そういえばそうだ。

 確か買い物する時、削りカスと埃で使うブラシを分けるみたいな話をしてたはずだ。

 エレナが開封してくれたので俺は受け取るだけ。

 ひらひらしたデカいブラシが目立つけど、今回使うのは反対側だ。


「へぇ……これキャップなんだな」


 感心しながら反対側を回す。

 外れると小さな毛先が出てきた。

 残った削りカスをそれではたき落とし、再チェック。

 まだまだ削らないとダメみたいだ。

 ブラシをナイフに持ち替え、削りを再開。

 しばらく続け、そろそろ頃合いかな、と削り面の様子を見る。

 傷だらけにこそなったが切り残しはほとんど見えなくなっていた。


「ん、大丈夫そうだな」


 そこへエレナが横から覗き込み、満足そうに頷く。


「大体こういう感じになるまで削ればいい。ほら、ほかの切り跡と比べてみてくれ。見えなくなってるだろう?」


 言いながら削った所と切り跡そのままな箇所を交互に指さす。

 見比べてみても明らかに消えているのがよくわかった。


「確かに……あー、でも結構削っちまったかな」

「そこは最初のうちだから仕方ないさ。後は削りすぎるのが嫌なら、チェック回数を増やすこと。そしてどの程度で切り跡がなくなるかを感覚で掴むことだ」

「やっぱ感覚なんだな。ちょっと職人っぽい感じ―――」


 と、素直な感想を漏らした時。



『ビースト・スレイヴの出現予兆を確認』



 電子音声が響く。

 俺は思わず振り返った。


『エレナ・グノーシアに臨時出撃要請。繰り返します、ビースト・スレイヴの出現予兆を確認』


 部屋の隅に転がっていたコンバートベースから、物騒極まりない通知が聞こえてくる。

 一体何なんだと思った頃には、エレナが軽やかに飾り棚へ跳んでいた。


「すまない、巧。レクチャーは中断だ。ちょっと行ってくる」

「どこに⁉」

「出撃だよ。ビースト・スレイヴが来る」


 そう言いながら右腕にロングライフルをセットし、今度はコンバートベースに着地。

 昨日と同じように出現したたくさんの画面を相手に、左手だけで器用に操作を開始する。


「ビースト・スレイヴって何だよ!? アナザービーストじゃなくて⁉」

「一応、近しいものではある。何と言えばわかりやすいかな……」


 コンバートベースが光り出す。

 とりあえず昨日と同じく、巨大化するのは確定らしい。


「あぁそうだ。特撮で言えば雑魚怪人。SFなら量産型のやられメカと言った立ち位置の存在だ」

「この状況が既にSFだな⁉」

「違いない」


 いやそんなスマートに返されても。


「要はお邪魔虫だ」

「お、お邪魔虫……」

「だが放置はできない。アナザービーストほどではないにしろ、奴らも文明を破壊する脅威だ。到底見過ごせない」

「でも大丈夫かよ、まだ全然武器の用意なんて」

「心配するな、雑魚怪人、やられメカと言ったろう? デフォルト兵装だけで充分倒せる相手だ」


 そうこうするうちにエレナの左手が止まった。


「コンバートシーケンス、起動」


 昨日も言ったあのセリフ。

 エレナという美少女プラモが巨大化する時のヤツだ。


「ベースボディのフォーマット完了、オプション兵装フォーマット。戦闘躯体のアウトプットに移行」


 輝き出すエレナの体。

 大小さまざまなモニターが展開しては閉じていく。


「通信回線は開いておく。詳しいことは戦いながら説明するから、一旦手を止めて観戦でもしててくれ」


 そして彼女は自信たっぷりの顔でそう言った。

 とてもじゃないけど戦いに行くような感じには見えないけど、続く言葉がそれを否定する。


起動(アクセス)ッ!」


 エレナの姿がコンバートベースから消えてしまう。

 当然、彼女の行き先なんてわかってる。


「いや、観戦って……」


 俺は窓の向こうを振り返る。

 ちょうど、昨日と同じように巨大化したエレナが立ち上がる所だった。

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