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第二話 俺のプラモが武器になる!?

「い、生きてる……!」


 なんとかそれだけ言うのがやっとだった。

 怪獣がこっちに向かってきた時は「あ、死んだ」と思った。

 だが巨大化した美少女プラモのおかげで助かった。

 が、今度は彼女がピンチだ。

 怪獣の一本角をナイフ一本で受け止め、めちゃくちゃつらそうにしてる。

 続いてミサイルでも撃ったのか、足元で大量の爆発が起こった。


「もしかして、俺を庇った……⁉」


 そうとしか考えられない。

 だったらいつまでもここにいるわけにはいかない。

 俺は急いで部屋を飛び出そうとする。


『巧! 蔵方巧! 聞こえるか!』


 が、そこに待ったがかけられた。

 さっき聞いたばかりの美少女プラモの声だ。

 部屋のどっかから響いてる気がする。

 だがちょっと待ってくれ。今そこで戦ってるじゃないか美少女プラモ。


「な、なんなんだよマジで⁉」

『反応あり、聞こえたと判断するぞ! まずは深呼吸だ、巧!』


 そうだ深呼吸。

 一旦落ち着いた方がいい。

 俺は大きく息を吸い、そして吐く。



 グォオオオオオオオオッ!!!!



 響く咆哮。

 怪獣が相変わらず美少女プラモに角を叩きつけていた。


「いやこの状況でそれは無理だろ!」

『状況を確認できたならいい! 上出来だ!』


 思わず飛び出たツッコミに対し、謎の賛辞が返ってきた。

 同時に巨大美少女プラモが小口径砲を連射する。

 怪獣の顔面で立て続けに火花が飛び、大きく怯んだ。


『さて本題だ!』


 隙を見たのか、彼女が言葉を続ける。


『さっき私がいた場所を見てくれ! プラモ用の置台みたいな物があるな⁉』

「お、置台……?」


 自分でプラモと言っちまうのか。

 ツッコミを呑みこみ、下を向く。

 あった。フローリングの上に突如現れた六角形の物体だ。巨大化する直前に出てたモニターとかがそのままになってる。


「な、なんかそれっぽいのあると思う」

『ではその上に武器を置いてくれ!』

「武器ぃ⁉」


 いきなり武器と言われても、何を置けばいいのか。


『君のプラモの飾り棚、その脇! 余った武器プラモがたくさんあるだろう!』


 言われて思い出す。

 確かにそこには箱があって、プラモの武器パーツとかがまとめて入っていた。


『それが私の武器になる!』

「嘘だろオイ!」

『なる!』


 鬼気迫る声。

 そんな風に言われたら信じるしかない。

 というか、今が既に「目の前でプラモが巨大化して怪獣と戦う」なんて異常事態だ。


「……わかった! 何を置けばいい!」

『剣をくれ! 片手で持てるヤツ!』


 急いで箱に手を伸ばす。

 指定されたパーツはすぐに見つかった。


「剣、コイツだ!」


 確か、重さで斬るみたいなヤツだったはずだ。

 早速それを六角形の上に置く。


「置いたぞ!」

『では『ウエポン・コンバート』と叫んでくれ!』

「叫んで、って俺が⁉」

『恥ずかしがらずに思いきり叫べ!』


 その瞬間、コンバットナイフが弾かれた。

 再び怪獣の角が迫る。

 咄嗟に上げた左腕で火花が走った。


「っ、あぁもう! 『ウエポン・コンバート』!」


 躊躇してる場合じゃない。やけくそに叫ぶ。


『コンバート実行』


 すると六角形が光り出した。

 美少女プラモが巨大化した時のように武器パーツが輝き、ぱっと消失する。


『インストール、アクティブ!』


 思わず窓の向こうを見た。

 火花の走る左腕が青く発光する。それは指先へ集まって、一本の剣を生み出した。


『こんっ、のぉおおおおおおっ!』


 美少女プラモが雄叫びを上げる。

 一本角を弾き返し、勢いのまま振りかざす。

 怪獣も体勢を立て直し、もう一撃。

 互いの武器が激突し。



 バキンッ!



 一本角がへし折れた。

 怪獣が思いきり痛がる。

 すかさず美少女プラモは剣を横合いに叩きつける。

 首元に食い込んだ一撃が、怪獣を横に吹き飛ばした。


「やった……!」


 思わずガッツポーズ。

 本当だ。

 プラモが武器になった。

 感激しているとまた美少女プラモの声が聞こえてくる。


『追加要求だ! 片手ライフル系、火力重視!』

「お、おう!?」


 慌ててプラモ箱をまさぐる。

 その間にも怪獣の怒りが聞こえてきた。


「や、やっぱビームライフルだろ!」


 選んだのは定番中の定番。

 下手すりゃ量産機だって持ってるテンプレ装備だ。

 さっきの剣と同じく、急いで六角形の上に置く。


「送るぞ! 『ウエポン・コンバート』!」

『コンバート実行』


 また武器プラモが消えた。

 外を見れば、美少女プラモが剣を地面に突き立てる所。


『インストール、アクティブ!』


 空いた左手を横に払った途端、また青い光が宿る。

 今度は集まってから光の線を描き、あっという間に形を作った。

 ガシャン、という音を鳴らしたのはさっき消えたビームライフルだ。

 銃口が怪獣に向けられる。



 ズギュゥウウンッ!!!!



 トリガーのスイッチと着弾はほぼ同時。

 腹に直撃弾を食らい、怪獣が大きく後退する。

 角を折られた時と同じだ。痛がってる。

 形勢逆転だ。


「よし、行け……! 行け……っ!」


 気付けばドキドキしている自分に気付いた。

 だって興奮が押し寄せてくる。

 今、目の前で。

 俺のプラモが、怪獣と戦っている。

 こんなの冷静じゃいられない。

 俺は拳を握り締め、その戦いを応援していた。



―――――――――



 強力なビームに、アナザービーストが腹をかきむしる。

 確かな手応えを感じながら、コンバートされたビームライフルを一瞥。


(剣はともかく、こっちは長くは維持できなさそうだ)


 やはり、「ただ組み上げただけ」だ。しかし不足はない。

 ロングライフル、小口径砲と合わせて銃口を向ける。

 対するアナザービーストは大きく口を開き、火球を連発してきた。

 すかさず撃ち落とす。

 超高熱が四散すると同時にビームライフルを発射。

 今度は肩口に直撃した。

 悲鳴に被せてもう一発。

 首狙いの一撃がクリーンヒット。

 だが、アナザービーストはまだ足掻く。

 へし折れた角を向け、再び巧のいる建物を目指した。


『うぇっ⁉』


 開きっ放しの通信から聞こえる悲鳴。

 もちろん、私の行動は決まっている。

 ビームライフルを捨て、再び剣を掴んだ。


「私に、接近戦をっ!」


 大きく一歩を踏み出す。


「させるなぁっ!」


 フラストレーションを思いっきり乗せて、横から頭を串刺しにする。

 即座にキャタピラを高速回転、その勢いで横倒しにした。

 貫通した剣が地面に突き刺さり、相手を固定する。

 アナザービーストは横向けのまま、立ち上がれずにもがいた。


「ここでっ!」


 投げ捨てたビームライフルを回収。

 全武装を斉射。

 ビームが胴を抉る。

 ミサイルの爆風が表皮を焦がす。

 ロングライフルと小口径砲の弾が首元で弾ける。

 砲火直撃の連続で無事なはずがない。

 響く悲鳴にはっきりと衰えが見えた。

 勝機だ。決して見逃さない。


「オリジナリティ・ウエポンズ、ダウンロード!」


 ビームライフルごと左腕を突き上げて叫ぶ。

 青空の彼方から一筋の光が差し、目の前を照らす。

 それはみるみるうちに範囲を広げ、眩い輝きとなった。

 直後、放電と共に光は消え去り、残ったのは私よりも一回り大きな砲台。

 アナザービーストを抹殺する特殊兵装の到着だ。


「デストロイ・カノン、セットアップ!」


 両手の武器を放り投げ、目の前に具現化した巨大砲身のグリップを掴む。

 保持用のジョイントが展開し、肩にかかった。

 ずしりとした重みを全身で持ち上げる。

 キャタピラ展開、安定姿勢を維持。

 スコープの中心に敵を捉える。

 エネルギーは充填済みだ。


「チャージ……ファイア!」


 トリガーを引く。

 砲身内部でエネルギーが臨界する。

 慌てて立ち上がるアナザービースト目掛け、極大のビームが解き放たれた。



 グァアアアアッ⁉



 断末魔が響き渡る。

 それすら呑み込む勢いで、全てのエネルギーを出し切るまで放出され続け。


「……UTD―001、撃破を確認」


 撃ち尽くすと同時に爆散する巨獣を尻目に、私は任務完了を呟いた。

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