魔科学者、魔導士団長と商談する
こちらも長らくお待たせしました!
なんとなーく先の展開は考えてあるのですが、そこに至るまでの過程は全く考えていないことでおなじみ(?)の夢月紅葉です。
ACESともどもご愛読いただければ幸いです。
「やー、すっかりご馳走になってもうたなぁ」
たらふく食べた割にスレンダーなお腹を擦りながらイリスが言う。
「で?翠華ちゃんは魔科学?を研究しとるんやて?先生が言うてはったけど」
「魔法と科学の融合技術とでもいいましょうか、つまるところ、魔法が使えない人にも魔法のような現象が起こせればなぁと思って日々研究に勤しんでいるのですが……」
「思ったように成果が出ぇへん?」
イリスが尋ねると、翠華はへにょんと項垂れた。
「せやったらそうなぁ……灯りの問題どうにかならんかな」
「灯り?」
カノンがオウム返しに聞くとイリスは神妙に頷く。
「最近、王都に魔族の密偵が紛れ込んどるらしくてな。夜通し警備を出しとるんやけど、結構な数が紛れ込んどるっぽいねん。片っ端から牢にブチ込んどるけど、ランタンじゃ見通し悪ぅてなぁ」
「でしたら、こちらはいかがでしょう」
翠華が雑多に積まれたガラクタの中から円筒形の金属を取り出す。
「後部から雷属性の魔晶石を入れて、ここのスイッチを押すと……」
「うわっ?!」
カノンの目の前は雷でも落ちたかのように閃光が走った。
眩しさに手で目を覆うと翠華が得意げな声で続ける。
「灯りが灯るって魔道具です。魔晶石に雷属性の魔法を入れておけば何度でも使えますよ」
「ランタンや篝火に比べて照らせる範囲が狭いけど、エライ明るいなぁ」
「光源部分にある種の特殊な金属を使ってるので、まだ量産には向かないですけど、夜警の人たちが使う分くらいなら、今ある材料で作れそうです」
話しながら翠華はブンブンと円筒形の金属を振り回す。
目を開いたカノンにも、その明るさが見て取れた。
―――こいつ、わかってて俺の顔目掛けて付けたな。
じとっとした目で翠華を睨みつけるも、完全にスルーされた。
わいわいと二人で相談(商談)を済ませ、とりあえずの個数と納品の日程が決まった。
しばらくは翠華も、また変なものを作らずに忙しくすることだろう。




