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黒き雷帝は深淵より至れり  作者: がりょあ
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 初日に授業はなく、学校の説明が行われただけだった。教科書の配布だとか委員会の選定だとか寮の使い方だとかプリントにまとめられて色々細々とした説明を受けた。

 とりあえずざっと教科書に目を通してみたが、ほとんど意味不明だった。

 さすが名門校だけあって内容はかなり高度で専門的な話が多い。


 コンツェルン先生の話が一通り終わったのでお手洗いに行こうと席を立つと後ろから不穏な足音がカツカツと近づいてくる。

 振り返るといつも通り不機嫌そうにしているミシェルが僕の方に歩いていているところだった。

 

「ちょっと待ちなさい、レグ」


「悪いが後にしてくれないか? ずっとトイレを我慢していたおかげで膀胱が破裂寸前なんだ」


 実際のところそれほどギリギリと言うわけでもなかったが、面倒臭い話になる予感がしたので先にそう断っておく。

 ここで引いてくれれば楽だったのだが、ミシェルがそんなところで諦めるわけがない。


「そう、ちょうどいいわ。学校探検も兼ねて私も着いて行くから」


 そうして僕たちはトイレを探す旅に立ったのだった。


 トイレは廊下を歩いて突き当たりを曲がったところにすぐに見つかった。

 男女で左右に分かれ、入ると用を足すには少々豪華すぎやしないかというほど煌びやかな便座が僕を待ち受ける。

 ウィイイイと自動的に便器の蓋が開き、クラッシックな音楽が流れ始めた。

 立派な校舎だとは思っていたが、トイレの個室まで立派なのか。

 やはり良い学習や良い仕事をするにはやっぱり良い環境が必要なのかもしれない。

 ダートリユニオももうちょっと改装して綺麗になったらみんな仕事が捗るんじゃないかなと思いながらうんこした。


 感動しながらトイレから出るとミシェルが柱に寄りかかりながらしかめ面で待っていた。


「遅い、何してたのよ」


 唇をとんがらせながらミシェルが文句を垂れる。

 待たされるのが嫌いなタイプのようだ。


「悪い、綺麗なトイレにちょっと心を奪われていてな」


 自動水洗式で僕が便座を立つと自動的に水が流れて次の瞬間には便座の掃除までされ、さらに薔薇の香りのするスプレーで消臭までしてくれた。

 お花畑にいるような爽やかさでトイレを出てきたというわけだ。


「何よそれ、気持ち悪いわね」


 自覚はあったので否定はしない。


「ところで、僕に用事があるんじゃないか?」


 わざわざ用もなしにトイレまでついてくるほどまだ僕たちは仲良くない。

 ミシェルに男子トイレに関わる変な性癖があるのなら話は別だが、イライラしながら僕を出迎えたところを見るとそういうわけでもなさそうだ。


「約束は覚えてるんでしょうね」


 ミシェルは威嚇するように僕を睨みつけながら言う。

 

「そんな怖い顔しなくても、ちゃんと覚えてるよ」


 僕としてはミシェルが忘れたまま有耶無耶になるのがベストだったんだけど、入学式の宣言でその線は完全に消えていた。

 ミシェルの要求が何かは正直想像つかない。

 体とか要求されちゃうんだろうか。いやん僕の貞操が......。


「そう。誤魔化さないところは褒めてあげる」


「誤魔化しようがないだろ。言っとくけどあんまり倫理観から外れたような命令はダメだからな。倫理観のないお前に言っても無駄かもしれないけど」


「そんなこと言ってるけど、あなたこそ私にとんでもないこと命令しようとしてたんじゃないの?」


「とんでもないこと? どんなだよ。具体的に言ってみろよ」


「そ、その......私の.....を.....して......舐めてから......」


 とんだ被害妄想だな。

 ここはしっかり釘を刺しておかなければならない。


「僕みたいな紳士がそんなふしだらことお願いするわけないだろ。ジュース奢ってもらうとか肩揉んでもらうとかそんなことしか考えてないぞ」


 本当だ。ジュース奢ってもらうとか肩揉んでもらうとかおっぱい揉ませてもらうとかそんなことしか考えてない。

 言外にだからお前も大したこと命令すんなよっていう意味を含んだつもりだったが、それがミシェルに通じたかどうかはわからない。

 多分通じてない。


「まあそんなことどうでもいいわ。命令するわよ」


「いいよ、なんでも言いなよ」


 いっそ開き直ってイケメンにスマイルする。

 このイケメンを前にあんまり無茶なお願いはできないだろうという作戦だ。

 僕の顔面偏差値は角度によっては70くらいはあるのだ。


 ミシェルはそんな僕をみて顔を赤らめることも躊躇うこともなく言った。


「私に剣を教えなさい」





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