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兜守編 4月12日 その1 VS ルシフェイス 


 ドアド10世とお別れした僕たちは地上を目指して洞窟を登りながら、さっそく第七艦隊に支援物資を頼んでみることにした。


 シーズが自分の家にあるラボから開発器具を取り寄せるついでに、僕たちのための物資も頼んでみてはどうかと提案してくれたのだ。


 しかも、物理的に可能なものであればなんでも運んでくれるという話だ。それもタダで。


 通販で物を頼んだことならあるけど、軍隊に物を頼んだことなんてないからやたらと緊張する。


「戦車とか頼んじゃう?」


 と、シーズが提案。さすがはロケットガール。


「いや、さすがにそれはぶっ飛びすぎてるよ。僕も由梨ちゃんも操縦できないし」


「普通の車なら、どうでしょうか?」


「いいんじゃない? 車の一台や二台」


 由梨ちゃんの案に頷くシーズ。


 確かに、レース実行委員会の公式サイトを見たとき、ポイントで交換可能な品物の中に車があった。ということは、レース実行委員会としても、レース参加者個人が車を手に入れて移動しても特に関与しないという方針なのだろう。反則行為にはならないということだ。


「……それじゃあ、ものは試しで、頼んでみようか?」


「どの車にするかは、おじさんにお任せします。わたしは詳しくないので。――ただし、ちゃんと実用的なものにしてください」


「そんな変なものは頼まないよ。支援物資のリストにも限りがあったし」


 このレースには大手企業も多額の出資をしている。たぶん、その出資額が多いメーカーの品が支援物資のリストに優先的に載ってるんだろう。それを参加者たちが使ってる場面が動画で世界中に配信されれば、それは企業にとっては立派な宣伝になるからな。


 僕は洞窟内でもなぜかよく通る電波を頼りに携帯を操作。


 レース参加者がポイントで支援物資の支給を申請してから、実際に手元に届くまでの時間は遅くとも4時間以内ということになっている。これは日常的に運用されている通販よりも格段に早い。


 注文から配達までの時間が異例とも言えるほどに早いということは、【スラジャンデ】付近を巡回中の第七艦隊を始めとする各国の艦艇にそれぞれ支援物資があらかじめ積み込まれてあって、そこからヘリコプターとかドローンで運搬して届けるシステムだと予測できる。


 それはつまり――。


「僕たちは第七艦隊が持っているものを実質使い放題なわけで、それは要するに、第七艦隊が確実に所持しているであろう品物を注文する必要があるってことだから……」


 僕は携帯画面をスクロールし、目当てのものを探す。


 インプレッサもGTRも、確かに支援物資のリストに載ってはいるけど、ピンポイントで第七艦隊の艦艇に積み込まれてあると断定はできない。両方とも日本の自動車メーカーが開発した車だから、むしろ日本の艦艇に積まれていると考えるべきだ。


「――あった! こいつにしよう!」


 僕はその車をアズロットに見せる。


「おお! そいつはこういう大陸を走破するのに向いてそうだな! 市販車よりはうんと頑丈だろうし、見た目の迫力も俺好みだぜ」


 と、アズロットも賛成してくれた。


 ハンヴィー・M1025。大型乗用車のハマーみたいな形をした、兵員を輸送するための四輪駆動車で、ボディも防弾仕様になっていたりと、市販車より丈夫にできてる。これが僕の選んだ車だ。


「それじゃあ、これを頼んでもらっていいかな?」


 僕はシーズにお願いし、彼女は「オッケー!」とテンポよく弾むように電話を掛けてくれた。


 シーズの頼んだ開発道具は彼女の実家からの取り寄せになるため、納品にしばらく掛かるようだったが、僕たちが頼んだものは、早ければ1時間もしないうちにドワーフの洞窟付近まで運んできてくれるそうだ。


 予想以上に早い! 


 海岸からドワーフの洞窟まで、徒歩で一日以上掛かってるけど、ヘリコプターとかならあっという間ということなのだろう。


「ありがとう、シーズ。これで今日の夕方には獣人の街に着けそうだよ」


「思ってたよりも早く届けてくれるみたいでよかったわね! このまま車を維持できれば、優勝も狙えるかもよ? ガソリンが減ったら、また空輸で頼めばいいわけだし。今ラインで、艦隊の旗艦の番号を送っておいたから、いつでも電話してオッケーよ!」


 携帯を見ると、確かにシーズからラインで番号が送られてきていた。


「今思ったけど、これって最高機密レベルの情報じゃない? 市販品でネットにリンクしたスマホで扱っていいものなの?」


「本当はダメだけど、世界中が仲良くレースをやってる間はいいんじゃない? それは期間限定の番号みたいだし」


 なんかもう適当すぎてどうでもよくなってきたわ。


「……それにしても、車一台分の燃料を補給するためだけにヘリを飛ばすのか? 航空燃料を大量に使うことになるな。なんて贅沢な給油なんだ……」


 話のスケールがいちいち大きくて狼狽えっぱなしの僕。


 別れを惜しむように会話が弾んだ僕たちは50分ほどで、地上の出口が見えるところまで登ってきた。


 洞窟の出口付近で、シーズとココが立ち止まる。


「あたしたちはここまでね。あっという間だったけど、恩は絶対に忘れないから、何かあったらいつでも連絡をちょうだい?」


「何かなくても、面白そうなものを見つけたら連絡するよ。君の開発に役立ちそうなものとか」


 シーズが差し出した手を、僕はしっかりと握り返す。


「た、旅の、無事を、お祈り、しています! ――がんばって!」


「はい。ココさん、少し話すのがスムーズになってきたのではないですか?」


 僕の隣で、ココと由梨ちゃんが両手で握手を交わす。


「あ、あなた方は、とてもいい人間なので、恐怖が紛れるんです。そうしたら、自然と言葉が出るようになってきました」


 なるほど。慣れ親しんだ相手に対して話すのなら、多少マシになるみたいだ。


「立派な進歩じゃないかココ。やったな!」


 と、僕はココの頭を撫でてやる。同じように、僕も進歩していかないと。由梨ちゃんにぐちゃぐちゃにされないためにも。


「――お、お別れは、寂しいですけど、いつかまた、その、会いにきてください」


 ココは恥ずかしいのか、頬を赤く染め、上目で僕を見上げる。まるで女の子みたいな反応だな。


「この旅のゴールまで行ったら、また遊びに来るよ」


「そのときは、もっとたくさんお話しましょう」


 由梨ちゃんの言葉に、うんうんと頷くココの目は、涙ぐんでいるようにも見えた。


「これは、ぼ、ぼくたちからの餞別(せんべつ)です」


 言って、ココは布袋を僕に手渡す。


 中を開けてみると、パンや塩漬けの肉といった、持ちのいい食料がたくさん入ってる!


「これはありがたい! とても助かるよ」


 ちょうど荷物を失ったアズロットもいることだし、これで数日分の食糧には困らずに済みそうだ。


「旅の成功を祈ってるわ」


「ぼ、ぼくたちドワーフは、これからもあなた方の友人です!」


「また会うときまで、二人とも元気でな」


 僕たちは、最後に握手を交わし合った。 


 そうした別れからものの数分後、洞窟の外に出た僕たちはテントの中で白目を剥いて気絶しているアズロットを発見。『ドワーフの国、ごはんが美味しかったな~』という余韻に浸る間もなく、『またかよ』と落胆する。


 そこへ、ハンヴィー・M1025をワイヤーで吊るしたヘリコプターが飛んできて、ハンヴィーをテントのすぐ近くに降ろして去っていった。


「受け取りの印鑑を押してませんけど、いいのでしょうか?」


 と、由梨ちゃんが首を傾げる。


「通販で頼んだわけじゃなくて、米軍にもらっただけだからね。細かな手続きとかは全部向こうがやってくれてるんだよ。……ところで由梨ちゃん、手の甲に赤い染みがついてるけど、どうしたの?」


 ふと気づいて、僕は聞いてみた。まさか、洞窟の岩で切っちゃったか?


「これですか、これはその、おじさんをぐちゃぐちゃに殴った時の返り血が落ちなくて……」


 恥ずかしそうに顔を赤らめ、上目で由梨ちゃんが答えた。聞くんじゃなかった。可愛いのに言ってることが狂気じみてる。


 気を取り直せはしなかったので気にしないふりをした僕は、ボンネットにマスキングテープで張り付けてあったハンヴィーのキーを取り、さっそく中を拝見。

 

 隅々まで清掃がされてあり、とても綺麗で広々としてる。前に二人、後部座席に三人は楽に乗れる。


 後部座席の更に後ろは積載スペースで、そこには僕がシーズにお願いして一緒に頼んでおいた小型ドローンがあった。こいつを飛ばせば、遠方の偵察が容易にできて便利だと考えてのことだ。


 それと、もう一つ。頼んだ覚えのないバックパックが置かれている。


【アズロットへ。カジュアルより♡】


 という手書きのメモが、バックパックのサイドポケットに入っているのを見てしまった。


 あの女だ。ということはこの荷物は、あの女がアズロットにけしかけたなにかだ。


「…………」


「――どうしたんですか?」


 僕の隣に立って、ひょこりと中を覗く由梨ちゃんが件のバックパックに手を触れ、


「カジュアルさんからの差し入れまであるんですね! びっくりです」


「いや、待つんだ由梨ちゃん!」


 僕は純粋に喜びを露にして中身を見ようとした由梨ちゃんを止める。


 そして彼女に下がっているように言い、僕はゴクリと喉を鳴らし、バックパックのジッパータブを摘まむ。


 額から汗が垂れ落ちる。ゆっくりと手を動かし、ジッパーをスライドして封印を解いていく。


 まず目に強制的に飛び込んできたのは、一枚のコピー用紙。


 カジュアルが上目でこちらを見つめ、スカートの上の白いシャツを全開にして、無駄な脂肪が一切無い、肌着姿の引き締まった肉体を披露している画像を拡大したコピーだ。


 くそっ! あの痴女(ちじょ)め!


 これをアズロットに見せたら積載スペースが血の海だぞ!? あの女はアズロットをどうしたいんだ!?


 僕は由梨ちゃんに悟られぬよう、そのコピーを折りたたんでポケットに突っ込む。焚火のときに燃やしてくれるわ!


 純粋な由梨ちゃんがこんなものを見たら、僕やアズロットが変な目で見られてしまうからな。すでに僕は変に見られてるけど。


 他にカジュアルの罠が無いか入念にチェックした僕は由梨ちゃんと一緒にアズロットを起こし、彼に運転を任せて東へと向かう。


 次の目的地は、このレース最初のチェックポイント。その街の名は【レフモケ】。


 レース実行委員会の公式サイトの情報によると、【レフモケ】は貴族=ロブ・スタローン辺境伯(へんきょうはく)が統治する商都(しょうと)で、衣服や織物、食物、武器に防具など、様々な物資が取引されているらしい。先の長い旅をする身としては、是非とも装備を整えておきたいところだ。


 レフモケに着いたらまず何をするかを三人で話し合う内に、車は昨日僕たちがシーズと出会った川を強引に駆け抜け、背の高い草が生い茂る平原をぐんぐん進む。


「街に着いたら、まずは宿探しと相場が決まってる」


「わたしもお師匠からそう教わりました」


 なるほど。先に休める場所を確保しておいて、そこで荷物や装備品を整理してから、街に繰り出して情報を収集したり、必要なものを買いそろえたりするわけだな。


「あとは美味い酒があれば、一杯やりたいところだ。兜守が試練をクリアした祝いにな」


 アズロットはかなりの酒好きらしく、昼間から水代わりに飲むことも少なくないらしい。


 僕もこのデブ体型だ。飲み食いはかなり好きなので、だんだん楽しみになってきた。


 ココが持たせてくれた袋の中にはこの世界で使えるお金も入っていて、調べたところ、日本円にして50万円相当とのことだったから、一泊食事付きの宿に泊まれるだろう。


 そうした高揚感と同時に、制限時間内に辿り着けなかった場合の恐怖が沸き起こる。


 ドワーフの洞窟を出発して早一時間。時刻は14時半を回っている。


 ここから【レフモケ】までの直線距離は約100キロ。この車の走破力なら2時間てところ。


 もし何らかのトラブルに見舞われたら、望みが一気に薄くなる。


「制限時間内にゴールできなかったら、レース失格になるんだよな? もしそうなったら、旅は続けるにしても、ポイントで得られるサポートとかは一切なしで、本当に自分たちだけの力で進まなくちゃならなくなるね……」


「そのときはそのときです。間に合わせるつもりでいましょう」


「嬢ちゃんの言う通りだぜ兜守。今から負けたときのことを考えても、頭がその分回らなくなるだけだ。お前は不安性なのか?」


 と、根がポジティブな二人。


「ああ。昔から劣等感を抱いてばかりの人生だったから、常に自信が持てなくて不安で、それが性分みたいになっちゃったんだ」


 いいなぁ、僕もポジティブな性格に生まれてさえいれば、いろいろとくよくよ悩まずに済んだかもしれないのに。最近の科学では、人の性格は親の遺伝が50%、子供の頃に育った環境が50%影響して形成されると言われている。容姿的な問題でいじめられていた僕は環境面で劣悪。つまり、この時点ですでに性格に与える影響の50%が不利だったわけだ。


 自分の努力ではどうしようもない部分で不幸への道が開拓されていく辛み。


「……そうか。詳しいことを今度聞かせてもらいたいが、とにかく災難だったんだな。けど、それでお前の人生の全部が終わっちまうなんてことはないだろう? これからのお前の人生は違う。お前が変えていくんだ。あまり気にしすぎない、良い方向にな」


 言って、シフトノブを操作してギアを一段階上げるアズロット。


 僕は【試練の間】での自問自答を思い出す。


 僕は、変わりたくて、変えたくて、ここに来たんだ。


「……そう、だな」


 寄せては返す波のように、僕は頻繁に、幾度となくネガティブになる。


 まるっと100%変わるのは無理かもしれない。それでも、せめて少しくらい、前向きになれたっていいはずじゃないか。


 このまま進み続けて、窓の外を流れる景色みたいに、少しずつ変わっていければ……。


 ハンヴィーは稲のような植物が広がるエリアを抜け、今度は短くて鮮やかな緑色をした草が広がる草原に出た。


 そうして景色を見る僕は、進行方向右側の、とあるものに驚愕する。


 何たる偶然か、車と並走する動物がいたのだ。


 全身を灰色の毛で覆った、ライオン並みに大きな四足獣。それだけならまだ驚愕ではなかったが、問題はその獣の背に跨っている人物。


「――ルシフェイス!?」


 由梨ちゃんも気付いたらしく、その人物の名を口にした。


 海岸で会ったときは馬に乗っていたはずのルシフェイスは、しかし行方不明になっている間に別の動物に乗り換えたらしい。それもかなり獰猛そうなやつに。


 灰色の獣はオオカミのように鋭い顔つきをしていて、嚙み締めた口からは尖った牙がズラリ。どう見ても草食動物って感じじゃない。


 ルシフェイスの方も、驚いた表情でこっちを凝視してる。僕と目が合う。


 異世界でいきなり車が出てきたら、それはそれで逆に驚くよな。


「あいつは確か馬に乗ってて、恐竜に尻尾で吹っ飛ばされてた野郎だ。あれでほぼ無傷とは、かなりの強運の持ち主だな!」


 よかったよかった、と笑うアズロット。でも僕にとってはあまりよいものじゃない。


 ルシフェイスはレース開始早々、僕を劣等遺伝子扱いして、敵意に近いものを向けてきた人物だからな。


「おい! 負け組家内(いえのうち)! お前が乗ってるそれはなんだぁあああッ!」


 ルシフェイスは、助手席に乗っている人物が僕だと認めるや否や、爽やかでハンサムな見た目にそぐわない野次を飛ばしてきた。


「あいつ今、何か叫んだか?」


「いや、気のせいだよ」


 アズロットがハンドルを握りつつチラリと右方向を見たので、僕はスルーを促す。


「――それより、あの獣がなんだかヤバそうだから、スピード上げられないか?」


 更に適当な理由を告げて速度を上げてもらい、ルシフェイスと獣を引き離しにかかる。


「劣等遺伝子のくせに、いいものを使いやがってぇええ!」


 換気目的なのか空気が美味しいからなのか、アズロットが全部の窓を半分ほど開けているせいで、ルシフェイスの声が僅かだが車内に届く。


「どうやら、わたしたちが車を使っていることへの不満を叫んでいるようです」


 手甲に指を触れつつの由梨ちゃんが、警戒の眼差しで言った。


 やっぱり、人によってはヘイトを買うみたいだ。シーズのロケットブースターよりマシだと思うけど、ルシフェイスにとっては関係なくて、この僕がチートしていることそのものが許せないらしい。


 速度が上がるにつれて獣との距離が開くかと思われたが、意外にも獣は咆哮と共に加速。ハンヴィーの速度に追随してきた。

 灰色の獣はもの凄い走力を持っているっぽい!


 こっちは時速100キロ近いっていうのに!


「だだっ広い草原だから飛ばしてるが、いつ障害物が出るとも限らねぇ。急ハンドル、急ブレーキ、いずれにも対応できるように、何かにつかまって踏ん張っとけ!」


 と、額に汗を光らせるアズロット。


 僕は念じてキュア・ソードを出現させ、それを由梨ちゃんに渡す。


「由梨ちゃん、あぶないからこれ持ってて!」


「ええ!? これはおじさんが持つべきものです! 万が一何かあったら、あなたが危ないんですよ!?」


「エアバッグがあるから平気だよ! むしろ君の方が危険! いいから持ってて!」


 と、僕は強引に由梨ちゃんに手渡す。この車にエアバッグがあるかどうか知らんけど。


「――あ、ありがとう、ございます」


 何故か由梨ちゃんは顔を赤らめて、素直に僕から剣を受け取った。強引なおっさんだと思ってお怒りになられましたか!?


 けど、僕の判断は間違ってはいないはず。由梨ちゃんの制服は、破けることで物理ダメージを軽減する特殊素材で作られているけど、その機能でダメージを防いだら防いだで、アズロットがヤバイ。だったら由梨ちゃんを僕の剣で守って、僕は一か八か神に祈る方が合理的だ。


「勝つのはボクだぁあああああ!!」


 度々そんなルシフェイスの声が届き、熾烈な競争が50分ほど続いたときだった。


【レフモケ】まであと十分少々というところで、ゴグンッ!! という重苦しい衝撃と共に、車の前進がストップした。


 僕らは揃って身体が前に持っていかれそうになる。シートベルトを締めていなかったらヤバかったぞ。


「なんだ!? 正面にはなにも障害は無かったぞ!?」


 と、アズロットはアクセルを踏むが、四本のタイヤが土を抉る音がするだけで、前へ進まない。


 妙だ。いったい何が起きてるんだ!?


「――二人とも、車から出てください!」


 と、窓の外を見る由梨ちゃんが叫んだ。


 次の瞬間、何かが車の窓ガラスを突き破り、中へ侵入してきた!




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